第2話 恋人になっても愛してるゲーム
愛してるゲームとは、都市伝説ともなっている暇つぶしの娯楽。
相手に「好き」や「愛してる」と言い、反応したら負けというゲームだ。
ちなみに、都市伝説にはこうある。
反応して負けると、そのペアは幸せに。
逆に勝つと、そのペアは不幸に。
先生たちに何でか問いかけたところ、答えは……。
いや、彼氏彼女ができた俺たちになら、もう流石に分かる。
反応するということは、その人のことを少なからず異性として意識しているということ。
逆に反応しなければ、友人としてしか見ていないということだ。
だから、負ければ幸せに。
勝てば、不幸に。
俺たちは負けたのだ。
言葉にできないこの感情と想いに、負けたのだ。
都市伝説に綴られていることだから、必ずしも勝ち負けによって幸か不幸になるかは定かではない。
結果的に、今は凄く幸せだ。
まだ人生の序盤しか生きていないにも関わらず、一生分の幸せを手に入れた気分になる。
きっと、好きな人が……恋人ができるとはそういうことなのだろう。
ただ、恋人とになったらその後は?
お互いに分からなかった。
付き合うのが最初はゴールだと考えていたが、この一週間は考えるだけで時間が過ぎていくだけだった。
告白して、実際に付き合っている人に話を聞いたが、「そのうち分かる。楽しめ」と言われるだけだった。
答えになってない。
最初はそう思っていたのだが、答えるまでもないという事なのだろうか。
それはそれでなんか悔しい。
とりあえず、彼女になってくれた灯の願いを叶えるべく、告白した翌日から一緒に登下校している。
『ずっとマジで……この手を離さなしたら許さないから』
灯のこの言葉が頭から離れず、脳裏に焼き付いている。
きっと嬉しかったからだろう。
それと同時に、その想いに応えたいという気持ちがある。
だから今日も、人が見ていない所では手を繋いで登校している。
ずっと一緒にいたいと、行動で示すのだ。
クラスメイトに見られそうになり、今日は遠回りで道を行く。
一緒にいる時間の流れは、不思議と遅く感じる。
クラスが一緒だからずっと一緒にいられるが、そういう事ではない。
今という時間を大切にしているから、時間の流れが遅く感じるのだろう。
「今日も、放課後に部活動あるけど待つ? ずっと一緒じゃなくてもいいんだよ? いやマジ。流石にずっとはきついでしょ?」
「う~ん、そうだな~。じゃあ、その代わりといっちゃあなんだけど、空いてる日にで、デートしないか?」
「え、ほんとに? いいの?」
「いつでも連絡待ってるからさ」
「行く行く! マジ楽しみにしてる!」
喜ぶ顔が見れただけで幸せを感じる。
本当は待っても良かったのだが、待たせていることを気にしているようだった。
部活動を頑張ってる灯を見ながら待つのも悪くなかったのだが、まぁしょうがない。
時は流れて、昼休みの時間。
灯と一緒にご飯を食べることに。
お互いに持ってきた弁当を机の上に出す。
「げっ! う〜ん」
「どうしたんだ?」
「実は、シイタケが苦手で……」
「野菜は食べたほうがいいんじゃないか?」
どうやら彼女の弁当の中にある、シイタケとピーマンの炒めものに苦手な食べ物があったらしい。
「ごめん。やっぱ無理。手伝ってくれない? 半分は頑張って食べるからさ」
「分かった。その代わりさ、後で愛してるゲームやらないか?」
「え? いいけど、あれそんなに気に入ったの?」
「俺が考えた、改良版愛してるゲームなんだが」
「いいよ。食べたらやろ」
嫌いな食べ物があった灯は、約束通り頑張ってシイタケを食べた。
俺も食べ終え、少し時間を空けてから愛してるゲームを行う。
改良版愛してるゲームとは?
灯はそう思っているだろうが、ほとんどルールは変わらない。
俺の横に来てもらい、耳元で好きと十回言ってもらう。
顔の近さでドキドキしつつ、好きと言ってもらえる一石二鳥のおいしいゲームだ。
「じゃあ、先に灯が耳元で言ってくれ。俺は後で」
「は〜い」
(正直、何でまた愛してるゲームをやろうと思ったのか、気になる人が……チラホラといますね〜。ていうか、あいつらこっち見すぎな。怖いって)
教室内で食べてる人が多く、こちらを見てくるやつが多い。
(まぁいい。何で愛してるゲームをやろうと思ったのか! そんなの決まってる、好きと言ってもらえるからだ!)
好きな人に好きと言ってもらえる回数は何回あると思う?
回数は確かに重要じゃないかもしれない。
ないかもしれないが、女子のいう『言葉にしなきゃ伝わらない』という常套句があるように、男子も言葉にしてほしいと思うやつがいてもおかしくないはずだ。
「いくよ?」
「ああ」
目をつむり、じっと大人しくする。
「やらないか☆ やらないか☆ やらないか☆ やらないか☆ やらないか☆ やらないか☆ やらないか☆ やらないか☆ やらないか☆ やらないか☆」
明らかに男性の声が、耳元で囁かれて目を勢いよく開けて確認する。
すると、また野次馬に囲まれていた。
灯は後ろに控えている。
男心を汚された俺は、恥ずかしくて両手で顔を隠すしかなかったのだった。
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