愛してるゲーム
歩く屍
第1話 愛してるゲーム
「ねぇ、愛してるゲームって知ってる?」
「ああ、あれね。愛情を示しても何も起こらず、話のネタにされてからかわれるだけの悲しき余興ね」
「いや、言い方〜マジ」
「実際そうだろ?」
「そうだけど〜」
彼女は同じ中学2年の女子、名前は
短髪であるからか、明るく元気な部分を見ると男勝りに見える。
笑顔になれば、見え隠れする八重歯が見えるのが特徴。
クラス内でも可愛いと思う、小学生の頃からの友達だ。
どうやら灯は、愛してるゲームに興味があるようだ。
というのも、最近話題のある都市伝説がきっかけらしい。
「愛してる」と囁かれ、動揺して負けたペアは幸せになれる。
逆に、動揺せず勝ったペアは不幸なるらしい。
なんで負けたら、幸せになるのか。
先生たちに聞くと、納得顔になり微笑んだという。
大人には理由まで分かる都市伝説らしい。
「ねぇ、私達もさ……やってみない? 愛してるゲーム」
「まぁ、暇だしな。別にいいよ」
傍から見たら幼馴染と言われる関係なのだろう俺、
暇つぶしにもなるが、本当に起こったらというロマンとかスリルにあたるものが大好物だ。
ただ今回の場合、ちょっとドキドキすることは認めよう。
(だってさ、これでお互い気まずくなる可能性ありますからね。他の人がやってるの見たけど、顔赤らめて会話無くなりますからね。何なら、仲が悪くなるケースも見ましたからねこの目で)
興味がある半分、その後を心配する俺は覚悟を決めて行う。
「じゃあ、いくから……ね」
沈黙が続く。
灯の深呼吸により、始まることが伝わる。
灯は、恥ずかしがりながらも話す。
「あのね……。私、外から来た村人の友人のことが」
「待ちなさい」
そこで容赦なく待ったをかける。
「ちょっと良い雰囲気出しておいてさ、何で恥ずかしいからって俺の小学生の時のあだ名使ってるの?」
「だってさ~! 恥ずかしいのマジ!」
「俺も恥ずかしいけどさ、過去のあだ名を抉るのは流石にちょっと……」
「ご、ごめん。分かった」
気を取り直してもう一度。
(今度は大丈夫か?)
「あのね……。私、ユウのことが……マジ好き……だよ」
気配を殺し、両手で顔を隠す灯を見たクラス内の男子たちは、号泣しながら平然を装う努力をしていた。
チラホラと他のクラス内の女子までも、なぜか泣いている。
「あの子……ついに……。あれ? 目から尊いが」
「あいつ、羨ましいぜ。幸せになれよな……。あ、お前ら藁人形と釘持ってたよな、使っていいか?」
などと、意味わからん言葉が聞こえてくる。
俺は、両手で顔を隠してはチラ見してくる灯から、後ろを向いて顔を隠す。
後から近づいてくる、灯からもはや逃げることはできないが、後ろを向いたまま本人の顔をまともに見ることができない。
灯が、俺の横に顔を近づける。
「もし、本当に……」
耳元で囁く声は、とてもとても小さく、聞き取りづらい。
「どうだった!」
「へ?」
「ドキドキした? マジで!」
まだ顔から熱が引いてない灯だったが、やっぱり笑顔の灯は可愛かった。
「ドキドキするよ、俺だって」
「え?」
「さぁなって言ったんだよ」
「も〜う」
わざとらしく残念そうな顔をする彼女は、笑顔でまた笑う。
どこまで聞こえていただろうか。
それは、確認することができなかった。
「次は、ユウの番だね」
「え、あ、俺もやるの?」
「おやおや〜、もしかして意識してくれたり?」
「ば〜か」
(意識してるに決まってるだろ)
すると、それをずっと静かに聞いていた男子と女子が野次馬とかす。
「おいおい、恥をかかせたままにする気か? 男見せろって友人」
「友人、やらないか☆」
「ねぇ、あたしの下着知らない?」
「この藁人形、丹精に(呪い)込めて作ったんだ……。受け取ってくれる?」
野次馬共の中でまともなやつが一人しかいないことを確認する。
「分かった! 分かったから! あと、二人にはいろいろ言いたいことがあるから後でな。あと若菜さん、彼女はいろいろ失ってるから、一緒に探してあげて」
野次馬共の対処をしたあと、灯を見る。
「灯、灯……俺、お前のことが……」
最後の言葉を伝えようとすると、まだ伝えてないのにも関わらず、彼女の顔は笑顔になる。
「お前……。どうした?」
「え?」
「気づいてないのか?」
「何を?」
「伝える前に笑顔になってるぞ」
「嘘だよ〜、そんなのなってないってマジ」
どうやら本当にニヤついてるのに気づいてないようだ。
「……マジ?」
「マジマジ。なんか、幸せそうな顔してるけどずっと。俺まだ何も言ってないぞ」
めちゃくちゃ恥ずかしそうにする。
「ご、ごめんね! つ、続けて!」
なかなかニヤニヤが止まらないようだが、本人の希望により続ける。
「灯、俺……お前のことが、小学生の頃から好きだ」
ここで止めようと思ったが、ゲームという名目で皆にも見られている。
後で誤魔化しが効く今、想いを……この際やけくそにぶちまけようと思った。
ニヤケがなぜか止まってない灯は終わる素振りを見せるが、そのまま続けた。
「小学生の頃、一年生の時からいつも一緒だった。いつも、無邪気に楽しそうに笑うお前を見てきた」
「え、ちょま、まだあるの!?」
俺は、続ける。
「俺が悲しんでいるとき、笑顔で慰めてくれた。遊びに行くとき、俺の何倍も楽しそうに笑ってくれた。飽き性で、興味が持てるものが無かった俺に、趣味ができたのは灯のおかげなんだ」
あの時も、灯は面白そうな話を聞いて聞かせていた。
学校に幽霊がでるとかでないとか、曖昧な話だったことを覚えている。
夜の学校に、こっそり入りに行って、親と先生にすごく怒られたことは覚えてる。
けど、灯が手を引っ張ってくれたおかげで、心が踊ったんだ。
(あの時のドキドキ、スリルはきっと……)
「き、急にどうしたの? なんで今……あれ……」
灯の目から雫が溢れる。
「灯、俺が都市伝説とか好きなの知ってるから、今日話を持ってきてくれたんだよな?」
「え? う、うん」
「でもな、初めて興味を持ったのは、都市伝説じゃないんだ」
「で、でも……」
「初めて興味を持ったのは、灯なんだよ」
灯は両手で口を隠し、涙が止まらない。
「何でいつも笑顔でいられるんだろう、何で手を差し伸べてくれるんだろうって」
自分でも何が言いたいのか分からなくなってくるが、言いたい言葉は一つだ。
「つまり、何が言いたいかっていうと……」
灯の瞳を見る。
「灯」
「は……はい!」
「灯……好きだ。付き合ってくれ。俺の恋人になってください」
灯からの返事を待つ。
ゲーム中のため、本音だと気づいてないかもしれない。
言葉が届いていないのかもしれない。
不安が募るがそれでも、想いを言葉にした。
それが大事だ。
(返事がないっていうことは、そういうこと……か)
嘘だ。
想いを届ければいいだけなんて。
俺は……。
そこへ、葵の顔が自分の顔に近づく。
唇と唇が触れ、灯に抱きつかれる。
「ずっとマジで……この手を離さなしたら許さないから」
耳元で囁かれた言葉は、ずっと聞きたかった言葉だった。
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