第17話 因縁との再開
「ブレンさん今です!」
「うぉぉぉ!」
ブレンとカエデは大金を稼ぎに異物退治にやってきていた。今回はいつものブレンの狩場ではなく、町から近くて効率よく異物がいる場所にやってきていた。
いつも通り、カエデが空からけん制、致命傷をいれブレンがとどめを刺す。この方法は、数人で囲い込むように異物と戦う方法よりもはるかに安全で確実性があるものであった。
異物を倒して生計を立てているような人物で高等魔法を使えるものは数少ない。それに空を飛べるのもカエデくらいしかブレンは知らない。それゆえにこの戦法を他のパーティーが真似ることはできなかったのだ。
それにブレンの高火力があってこそ成り立つものである。
「あったぞ!」
とどめを刺した異物からコアが出てきて、それを拾い腰につけた麻袋の中に入れる。
カエデもいったん空中から周囲を伺い、周りに他の異物がいないかを確認したのちにブレンの元に降りる。
「今日もだいぶ集まりましたね!」
連戦であったが、カエデの息が切れることは無くいたって普通だ。
(ここに来てから、異物と戦う回数も格段増えたからか魔法を使っても疲れを感じることがへったなぁ。体力とかと一緒で使えば使うだけ強くなるのかな? そういえば威力も少し強くなったような気がするし)
カエデと同じくブレンもここ最近で力が増したような感覚を持っていた。数値化できるものではないため、自身の感覚一つで判断しなければならないが、それは慢心ではなく事実のようだ。
「今日はこのくらいにするか」
「はい」
今日もまた、日銭以上の貯えを得ることができ、大満足なブレンであった。しかしながら、カエデの心は喜び一辺倒ではない様子だ。
それもそのはずで、ブレンの目的は生きること。しかしながら、カエデの当面の目標は元の世界に帰ることである。その先に、自身の願いがある。それにも関わらず、ここでやっていることは日々同じ日常の繰り返し。なにをすることが正しいことかも分からないままである。
慣れ親しんだ二人は、会話のないままギルドに向かう。
ブレンもカエデが醸し出す雰囲気になんとなく気が付いてはいた。しかしながら、その悩みに対してブレンは一切手助けをすることはできなかった。カエデですらなぜここに来た分からないのに、ブレンにその理由が解決できるはずがないのだから。
なんとなく、あてがあるにはあった。それは城に行くことであった。むしろそれしか思いつく先はない。しかし、それをカエデに話すことは無い。それはブレンにとってカエデは居なくてはならない存在であるのと同時に、この少女の身を心配だったのだ。この国も決して裕福ではない。だからまとまった戦力や機会があれば、他国に戦争を仕掛けることを考えているのは、この国の人間であれば皆がしっていることだ。
それは国民は理解できているし、覚悟も決めている。ブレンも戦争が起きれば武勲を上げ、勲章をもらい城の兵士になりもっといい暮らしをすることをの望んでいる。異物を狩り続けても到底追いつけない生活を手にすることができる。しかし、この少女にはそんなことは一切関係ない。だが、戦力としては申し分ない実力だ。
だからこそ、彼女が次の行動を自ら口に出し望まない限りをブレンもそれは口にしないことにしている。
「あれ、ブレンじゃん?」
もうすぐ、町への入り口に着く。
そんな時であった偶然同じタイミングで帰ってきたパーティーの一人がカエデ達の方をみて指をさして声をかけてきた。
今までも何度かこのようなことはあったが、ブレンを見てか、それとも目の前の換金を急いでか話すようなことは一度もなかった。ブレンも飯屋の店主以外で中良さげに話す人はいなかったため、それを特段不思議に思うこともなかったカエデであった。
「ゲ!?」
その声がする方向を見るやいなやブレンが今まで聞いたこともない声を上げる。いつも強気なブレンが明らかに普段の態度をとれないことを表す。
「久しぶりだなぁ」
そういって近づいてくるのは、2人よりもはるかにいい身なりをしている剣を携えた男。その後ろには他に4人の男女がいた。それぞれ、槍、剣、杖と各々の武器を持つ。
異物と戦うにはこれくらいの人数が本来必要なのだろうか
「誰だお前ら」
知り合いとばったり会ったのかと思いきや、どうやらそうではないらしい。ブレンは目に見えるほどの嫌悪感を醸し出す。カエデもその雰囲気を感じ取り、どうすればいいか分からなくて、おろおろし始める。
「ひどいな~、一緒に命を預けあった仲だろ」
見た目以上に言動の軽さが際立つこの男がブレンの元パーティーメンバーのようだ。見るからにタイプが合わなそうだが、戦闘においてはそんなこと関係ない、というわけにもいかなかったようだ。
「ふざけるな!」
その言葉に反射的に反応して大声を上げる。ブレンの大声は何度も聞いたことがあったが、そこには優しさのようなものは一切含まれておらず、怒りだけの鋭いものであった。
「お前らが俺を劣りにして逃げたことを忘れるわけ無いだろ! それにも関わらず命を預けあった仲だぁ? ふざけるな!」
その言葉を聞いて一番驚いていたのはカエデであった。異物と何度も戦ってきた少女であったが、その恐ろしさも勿論知っている。そんな中、悪意あるその行動に珍しく腹を立てている。
死んでしまったらどうにもならない。カエデはそれを痛いほど理解している。
「なんだよ、さっきは誰だお前らぁ?とか言ってた癖に」
揚げ足を取るように茶化すその男は、とてもではないが強そうには見えない。しかし今のところ蚊帳の外であるカエデも同じだろう。
「クソが」
怒りの感情が出過ぎて、言葉が上手く出てこないようだ。
「どうだい? 元気にやってるか?」
「ていうかまだ生きてたんだ!」
男の他に、後ろに立っていた杖を持つ女が口をひらく。魔法師なのだろう。カエデ達が身につけているマントとは違い、綺麗なローブのようなものを身につけている。
魔法師でありほとんどの戦闘を空中で行うカエデですら汚れるというのに、その女の身なりは汚れ一つない。どれほど丁重に扱われているかがよく分かる。
「ブレンさん、もういきましょう。早く換金しないと」
そんなブレンを見ていられなくなったカエデがブレンの袖を引っ張りながら声をかける。
いつも控えめなカエデにしては珍しく、大きな声とともに力強く引っ張る。そうでもしなければ気づいて貰えないと思ったからだ。
それ反応したブレンも少しだけ冷静さを取り戻す。今回ばかりは少女に助けられたことに情けなさを感じるのではなく、ありがたみを感じていることだろう。
「あれぇ、そう言えば君は」
今までカエデなど眼中にないという感じだったのにも関わらず、ターゲットをチェンジしたのか視線はカエデに向けられる。
それに気づいたブレンはとっさにカエデを自身の後ろに隠すよ引っ張る。
「君が祝福の少女だね」
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