第6話





「ではまず、どこから話しましょうか……」

広間から少し離れた休憩室。

シイアナがそう言いかけた時、コンコン、とノックの音がなった。

「「どうぞ。」」

シイアナとカラメルの声が重なる。

その声が発された途端、扉がバタンと勢いよく開く。

「キャラメル!!」

「シーナ?」

その開いた扉から見えたのは、二人の青年。

片方の青年はシーナに、もう片方の青年はカラメルに向かってそういった。

「ツェニメッツァお兄様………。」

「レオ様っ!」

カラメルはツェニメッツァという、カラメルのことをキャラメルと呼んだ青年に、

シーナは先程己の婚約者となったレオノールに。

片方は少し引き気味に、

もう片方は嬉しそうに、名前を呼んだ。


「我が愛しの妹よ!!」

そう言ってツェニメッツァがカラメルに抱きつこうとする。

「隣国の……?」

すっかり蚊帳の外だったアシュラが言った。

その言葉にツェニメッツァがたった思い出したかのように、カラメルに抱きつこうとしていた手を止め、アシュラの方を向いた。

「…ああ、そういえばいたな。

……そうだよ。私は隣国、カラット王国の王太子、ツェニメッツァ・カラットだ。」

「やはりそうか!! だとすると…」

アシュラは、驚きながらカラメルの方に顔を向ける。

「では、改めて自己紹介させていただきますわ。

……カラット王国、第一王女、キャラメル・カラットと申します。」

カラメル――いや、キャラメルは、少しツェニメッツァから体を引き、アシュラに向かって改めて挨拶をする。

「では、私も。

辺境伯爵家幼女、シイアナ・アセロラ改め、チッカ王国の守護を妹とともに担当しております、シーナ=チッカ・アロセラと申しますわ。」

キャラメルにならい、シーナも改めて挨拶をする。

「……アルフェンス公爵家三男、レオノール・アルフェンスです。

アシュラ殿下、お久しぶりでございます。」

そして、今部屋に入ってきたレオノールも、挨拶をする。

キャラメルが、少し近い二人の距離を見て、瞳をキラキラと輝かせる。

「お姉様、もしかして……」

キャラメルのその問いに嬉しそうにシーナは笑って、頷く。

「やっとここも婚約か。」

「やっと、だな。もどかしかったものだ。

……ちなみにツェニメッツァ殿、我とメルも、今日で婚約成立なのだが……」

ジェルドも、少し苦笑気味にそういった。

「………申し訳ないのだが、状況が把握できておらんがゆえ、教えてはくれぬだろうか!」

先ほどとは違い、ハキハキとそう言うアシュラ。

「……暑苦しいのが戻ってきたよ……

はぁぁ。めんどくさ…」

「んっ? ツェニメッツァ殿、何か言ったか?」

アシュラの変化に、ため息をつくツェニメッツァ。

そんな会話を無視し、シーナは言う。

「そうですね…

では、アシュラ殿下の記憶がないであろうところから話しましょうか。」

「ああ、頼む!」

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