第6話
♢
「ではまず、どこから話しましょうか……」
広間から少し離れた休憩室。
シイアナがそう言いかけた時、コンコン、とノックの音がなった。
「「どうぞ。」」
シイアナとカラメルの声が重なる。
その声が発された途端、扉がバタンと勢いよく開く。
「キャラメル!!」
「シーナ?」
その開いた扉から見えたのは、二人の青年。
片方の青年はシーナに、もう片方の青年はカラメルに向かってそういった。
「ツェニメッツァお兄様………。」
「レオ様っ!」
カラメルはツェニメッツァという、カラメルのことをキャラメルと呼んだ青年に、
シーナは先程己の婚約者となったレオノールに。
片方は少し引き気味に、
もう片方は嬉しそうに、名前を呼んだ。
「我が愛しの妹よ!!」
そう言ってツェニメッツァがカラメルに抱きつこうとする。
「隣国の……?」
すっかり蚊帳の外だったアシュラが言った。
その言葉にツェニメッツァがたった思い出したかのように、カラメルに抱きつこうとしていた手を止め、アシュラの方を向いた。
「…ああ、そういえばいたな。
……そうだよ。私は隣国、カラット王国の王太子、ツェニメッツァ・カラットだ。」
「やはりそうか!! だとすると…」
アシュラは、驚きながらカラメルの方に顔を向ける。
「では、改めて自己紹介させていただきますわ。
……カラット王国、第一王女、キャラメル・カラットと申します。」
カラメル――いや、キャラメルは、少しツェニメッツァから体を引き、アシュラに向かって改めて挨拶をする。
「では、私も。
辺境伯爵家幼女、シイアナ・アセロラ改め、チッカ王国の守護を妹とともに担当しております、シーナ=チッカ・アロセラと申しますわ。」
キャラメルにならい、シーナも改めて挨拶をする。
「……アルフェンス公爵家三男、レオノール・アルフェンスです。
アシュラ殿下、お久しぶりでございます。」
そして、今部屋に入ってきたレオノールも、挨拶をする。
キャラメルが、少し近い二人の距離を見て、瞳をキラキラと輝かせる。
「お姉様、もしかして……」
キャラメルのその問いに嬉しそうにシーナは笑って、頷く。
「やっとここも婚約か。」
「やっと、だな。もどかしかったものだ。
……ちなみにツェニメッツァ殿、我とメルも、今日で婚約成立なのだが……」
ジェルドも、少し苦笑気味にそういった。
「………申し訳ないのだが、状況が把握できておらんがゆえ、教えてはくれぬだろうか!」
先ほどとは違い、ハキハキとそう言うアシュラ。
「……暑苦しいのが戻ってきたよ……
はぁぁ。めんどくさ…」
「んっ? ツェニメッツァ殿、何か言ったか?」
アシュラの変化に、ため息をつくツェニメッツァ。
そんな会話を無視し、シーナは言う。
「そうですね…
では、アシュラ殿下の記憶がないであろうところから話しましょうか。」
「ああ、頼む!」
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