第4話




「ぁ………に…うえ……」

「……久しいな、アシュラ。」

次代の王と噂されるほどの威厳を持つ、ホッドウ王国第二王子、ジェルド・ホッドウ。

その美しい色の髪は、アシュラと同じ赤色をしており、彼らの母、王妃から継いだ金色の瞳は、鷹の目のように鋭くなっている。

自分の婚約者がとられそうになっているのである、不機嫌になって当然だ。

「………ガイル・スルグリット、アラシュ・ゴッドン、ハイガス・ニュパス。」

「………!?」

ジェルドは、いきなり何人かの生徒の名を挙げる。呼ばれた生徒たちは、目を見開いていく。

「………フルガス・エルルス、マカセル・エルルス、モーデット・アスラス。」

呼ばれた中でも、気が弱いことで有名なマカセル・エルルスが顔を青くし、ふらりとよろめく。

「……兄上? 先程から私の友人の名を挙げてどうしたのです?」

アシュラが馬鹿正直に言う。

それには答えず、ただ一言だけ。『カイ』と、言っただけ。

その瞬間、アシュラから黒い煙が出る。

「……なに!?」

「……なぜ、アレが…っ!」

ジェルドに呼ばれた者達がいたところから声がかすかにする。

「なんですの!?」

「お、おおち、おちついて…お、おち、ついて、くださいっ。」

「……貴方の方が落ち着いた方がよろしくてよ?」

そんな混乱した声が周りから出る。

「…もやが、晴れて、いく……?」

呆然としているアシュラの声も、響いていく。

「……ひどいっ……!」

「……ここまで、とはな……。」

カラメルとジェルドのいる方から声がする。煙が充満しているため、周りがよく見えなくなっており、広間はますます騒然としていく。


「静まってください。」


けっして大きくない、ただの一言。

だが、その声には不思議と人を惹きつける響きがあった。

そして、その声が聞こえてきた方から、煙が徐々に晴れていく。

混乱が収まり、あの声が聞こえてきた方へと人々が視線を向ける。

そこには―――



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