第3話



「……………………申し訳、ありません。………お断り、いたします。」

周りの男の数人の目が厳しくなり、混乱しているような顔になる。

アシュラは、口をパクパクとさせ、何かを言おうとするが、言葉にならないようだった。

「…………なぜだ………カラメル………っ?」

かろうじてそれだけを絞り出す。

少女――カラメルは、目を伏せながら言う。

「…………「あのお方」……を傷つけた者の、求婚は受けれません。

……………それに―――」

今まで見せてきた貼り付けた笑み――それでも綺麗すぎたのでアシュラ達はやられちゃっている――とは違い、満面の笑みを浮かべて、一人の青年の腕を取る。

「私、予約済み、ですのでっ……!」

その声音から、嘘は言っていないことを察したアシュラは相手の青年の顔を見ようとして、少し上を向く。

アシュラは、その青年の顔を見て、絶句する。

「ぁ………に…うえ………」

ホッドウ王国、第二王子、ジェルド・ホッドウ。

紛れもなく、彼の、アシュラの兄、ジェルドだった。





「シイアナ?」


目の前の少女、シイアナは、俺の想い人であり、………今日、求婚をしようとしている相手でもある。

腰までの長い金色の髪、翡翠色の瞳、優美に弧を描く桜色の唇。

いつもとは違う、本当の姿。

俺でも数回しか見たことのないその姿は、王から直々にご命令を賜ったそうで、自分からは晒していけないこととなっているらしい。

(相変わらず、綺麗だ。)

口では言えないそんな台詞も、心の中では言えるから驚いたものだ。

「レオノール様はどうしてこちらに?」

シイアナの質問に、俺はここにきた理由を思い出す。

片膝を付き、こうべを垂れて。

指輪はいらない、それは婚姻の申し入れの時以外、いらないものだ。

俺がするのは、婚約の申し入れ。

「どうか、俺と、っ婚約してくれないだろうかっ!」

シイアナが美しい翡翠の瞳を見開く。そして、徐々に口元が緩んでゆく。

彼女が口を開く。

「…………はい。もちろん………っ。」


そしてゆっくり立ち上がった俺に満面の笑みで少し囁く。

「よろしくね、レオノール様……ううん、さいきょーの、レオ君?」

「っっっっ!!」

ふふ、と笑いながら人差し指を唇に当て、いたずらっぽい笑みを浮かべる。

―――まったく、シイアナは………

そんなことを考えていても、口元はどんどん緩む。

「よろしくな、シーナ?」

俺も耳元で囁く。

反応が気になり、シイアナ…シーナの顔を見る。

―――かぁぁぁぁっ

ユデダコもメじゃないくらい、真っ赤になっていた。

仕返しだ(って思ったけど、可愛すぎて破壊力がヤバイ………)。

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