第2話 ダイソン掃除機に居座るホコリー証言②
「アイツらが引っ越してもう3年は経ってるか・・・。日当たりが悪く、借り手もつかないこのハイツの一室に残ったのは適当な家具とこの俺の住処だけだ。誰もいない家ってのは驚くほど静かなもんさ。蚊一匹寄ってこないから寂しいもんよ」
「嫁がどうなったのかなんてワシは知らん。火事とか殺人、事件なら噂になるがそれでも全員そうなるとは限らんしな」
「ん、どうして順風満帆な人生に聞こえるのにこんな結末になったのかと?」
「それはわからない。俺はこの家で起こる全てを見てきたが、アイツの心情までは見透かすことはできんのだから。どれだけ仲睦まじく暮らそうが打ち明けられない何かがあったんじゃないか」
「話を戻そうか」
「嘔吐は副業みたいなもんさ。それがあれば金以外にも様々な恩恵が手に入る」
「アイツの場合は本業に余計なストレスを感じることがなくなったのか少し顔色がよくなったんだ。それになんといっても生活に余裕が生まれる。生活に余裕が生まれると心にゆとりが生まれる。心にゆとりが生まれると人生が華やかになる。毎日朝から晩まで仏みたいな顔してたぞ」
「
「ざっと高価な買い物でいうと・・・ドラム式洗濯機、冷蔵庫、車、あと時計とかブランド物の服とか・・・」
「あら方散財して最後の砦になったのが新築マンションだな」
「都内の新築マンションを狙っていたよ。まぁローンでだがな。嫁も物件のパンフレットを隅から隅まで見ては内覧から内覧へと走り回っていたからな」
「まぁ、なんだ、こんな感じで毎日幸せそうだったなってことだな。死の匂いなんざ俺にはついぞ嗅がなかったな」
「・・・・・・」
「アイツが死んだいまだから思うことがある」
「アイツは金に殺されたんだ」
「だからこれは自殺なんかじゃない。金による立派な自殺幇助だ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます