(ΦωΦ)カネゴン

FLOKI-Q

第1話 ダイソン掃除機に居座るホコリー証言①

「俺たちホコリからすれば暮らしにくくなってきていることは確かだろう。細々暮らそうと部屋の隅っこに逃げてもルンバに狩られ、衣服にしがみついて逃走しようにも洗濯機に投げ込まれる。知り合いは全員あっけなく逝っちまった・・・」


「そもそも家の中から菌や不潔を追い出して何になるんだと貴様に問いたいね。どれだけ掃除、洗濯を頑張ろうが目に見えない細菌も不潔もそこら中に蔓延はびこっている。まるでアキレスと亀じゃないか?永遠に終わらないのにやるだけ無駄だだとわからんもんかね」


「更に言わせてもらうと貴様の体内にも菌や微生物がウジャウジャ住んでいる。そいつは気にならないのか?いっそ内蔵もアルコールスプレーで除菌しろってんだ!」


「クソッタレが」


「人類は潔癖の歴史だと死んだ友が話していたことがあるが、このまま行くと抜け落ちた髪の毛一本を見て発狂する時代がくるんじゃないのか、ゴキブリを目撃したときのようにな」


「ん?あぁ、そうだなアイツの話を聞きにきたんだったな。久しぶりの客人なもんで熱くなっちまったよ、悪い悪い」


「アイツとはもう付き合いも長いよ。大学を卒業してそのまま社会人になって当時付き合っていた女と結婚して住み着いたのがこの家さ。アイツは根が真面目だから仕事も毎日遅くまで頑張って、家では家事もこなしていたよ。俺は働きすぎて過労死するんじゃないかって内心心配してたんだがとにかく動いてないと気がすまない性分なんだろうな。愚痴の一つもこぼさなかったよ。大したもんだよ実際」


「結婚して一年くらい経過したある日、あいつは平日だってのに正午くらいに帰宅してきた。掃除機の中からでもわかるくらい顔色は悪く足元も覚束ない、まるで酷い二日酔いに襲われたみたいな感じだったな。心配したさ、本当に」


「ただあいつがリビングで力尽きて膝から崩れ落ちた瞬間、俺はあまりの驚きに目を見開いたんだ」


「・・・硬貨を吐き出したのさ。胃液や吐瀉物としゃぶつではなく500円硬貨をな。一回目は確か・・23枚だ、間違いない。気が動転したアイツも何回も数えてたんだから」


「そりゃ初めは困惑と恐怖が顔で混ざり合っていたさ。なんだこれ?どうなってんだ?って顔して・・・。だけど不思議なもんでそれが本物の硬貨ということ、そして繰り返す嘔吐で硬貨を吐き出すもんだからだんだんと喜色が勝ってきた。労せずとも金が手に入るようになったんだ。人生安泰だろ?」


「さて、貴様ならどうする?一日の平均嘔吐数が3〜5回くらいで、枚数が20〜30枚程度だからざっと・・・難しい計算は貴様に任す。貴様がアイツならどうだ?いぶかしんで使わないか?それとも人生を豊かにするために使用するか?」


「なぁどうする?」

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