マーマレード

ももいくれあ

第1話

マーマレードのKissをした。

 積乱雲の海だった。

マーブルケーキの海を観た。

 入道雲の嵐だった。

いつか、雲のない日に、

水平線を探しに行こう。

夕陽に邪魔されないように、

虹をたよりに見つけに行こう。

具だくさんのサンドイッチと

飲みきれない紅茶を抱えて

湾岸線に乗ってみよう。

朝日を目指して、

夕陽に溶けて、

夜にすっぽり包まれて、

バックライトに揺れながら、

歌いながら、

踊りながら、

心の中で叫び続けた。

初めて聞いたその響きは、

心地良くて

恥ずかしかった。

長い長い夜だった。

トンネルみたいな夜だった。

車を揺らし続けながら、

そのリズムに戸惑っていた。

月の光(あかり)はないけれど、

嬉しくって、

ちょっと泣けた。


ラズベリーのKissをした。 

 砂ぼこりの毎日だった。

チーズケーキのクッションで、

 ポカポカの日ようだった。

いつか、雨の止んだ日に、

河と海のまざりあう

夜と朝のまざりあう

秘密の場所にもぐりこもう

卵とツナのギンガムチェックに、

チョコミントのkissをした。

 柔らかい午後だった。

レモンスカッシュな目覚めの後で、

 なまぬるい時間がすぎた。

いつか、朝が心地良い日に、

思いっきり吸い込んで、

向こうの方までのみこんで、

ゆっくり、ゆっくり、のんびりと、

作り慣れない手つきでまるめた

おにぎりに麦茶をそえて、

走り慣れた道なりを、

いつもの様に走らせた。

隣の街に届きそうで

両手を広げてつかんでみたら、

あとからあとから溢れ出す、

空の色にはしゃぎながら、

心の中で口ずさんだ

歌い慣れなたその曲なのに、

懐かしくって、

ちょっと泣けた。

上機嫌のクーラーボックス。

なぎさドライブウェイを抜けて

のぞいた谷に風はなかった

前が何にも見えないくらい、

時々激しく降りしきる

止まない雨もあるんだね、

泣きながら、

笑いながら、

心の中で呟いてみた。

ため息さえももらせずに、

冷たくなって、

震えていた

長い長い旅にでた

トンネルみたいな旅にでた

時間(ながれ)に身を任せながら、

浅くて苦い眠りについた

月の光(あかり)が眩しくて、

淋しくって、

ちょっと泣けた。

長い長いkissをしよう

トンネルみたいなkissをしよう

すべての思いをあつめながら、

遠くの風に近づこう。

月の光(あかり)は解(し)っていた

甘酸っぱいねと、

ちょっと笑った。

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