第5話 それぞれの結末

 ある日のこと。仕切り屋のフリーター403が、モデル系606にLineを送っても、いつまでも既読にならなかった。いつもなら、すぐに返信してくるのに・・・そろそろ引越すかもしれないと言うから、みんなで送別会をやろうって誘ったのに、何のリアクションもなかった。おかしいなと思った。人のLineを無視するような子じゃないのに。


 夜、403の元に、いきなりAさんが訪ねて来た。


「〇〇ちゃん(606)がいなくなっちゃった」

「え!」

「部屋を見たら空っぽなんだよ。きっと俺のことが嫌になっちゃったんだろうね」

 403は歓喜した。これで私の勝ちだ。


 それから、Aさんは毎晩403の部屋に来るようになった。


「結婚しない?そんなに贅沢はさせられないけど」


 フリーターの403は迷わなかった。


「いつ結婚する?」

「そうだなぁ・・・君のご両親に挨拶もしないといけないから、その後だね」


 ***


 505号室。声優志望の子だ。アイドルみたいに可愛い。Aさんが夜にいきなり尋ねて来た。


「Aさん、お久しぶりです!元気でしたか?」

 部屋でもメイド服を着ててかわいい。メイド喫茶に来たみたいだった。

「そうでもなくて・・・色々あったから」

「どういう意味ですか?」

「万里加ちゃん、美玖ちゃん、英美里ちゃん、みんないなくなっちゃって・・・」

「あ、そういえば最近連絡してこないと思ってました」

「いいなぁ。君はいつも明るくて」


 Aさんは久しぶりに505を抱いた。小柄で抱き心地がよかった。

「本当はね。君が一番好きだったんだよ」

「ほんとですかぁ?」

「うん。もう浮気はやめる。それで君の部屋だけに来るよ。専門学校卒業したらどうするの?」

「まだ決まってません。ずっとバイトしてるかも」   

「俺の奥さんになれば?そしたら好きな事してていいよ」

「えぇ!」

 505は難色を示した。もともと、無理やり関係を迫って来た男だ。許せないと思う時もあったからだ。


「じゃあ、毎日来てくれたら結婚します。あと、浮気もダメですよぉ!」


 Aさんは笑った。


 ***


 308号室。平凡な女子大生。夜Aさんが訪ねて来た。


「万里加ちゃん、美玖ちゃん、英美里ちゃん、葵ちゃん、みんないなくなちゃってさ。薄情だよね」

 

 Aさんは久しぶりに308を抱いた。ちょっと違うなと思いながらも、顔だけは可愛いからやっぱり好きな気もした。


「俺、これからは君のとこだけに来るよ」

「また、また・・・浮気性のくせに」

 Aさんはイラっとした。

「本気だよ。君もいなくならないでね」


 ***


 205号室。小説家志望のフリーター。夜、Aさんがいきなり訪ねてきた。


「万里加ちゃん、美玖ちゃん、英美里ちゃん、葵ちゃん、クルミちゃん、みんないなくなちゃってさ。みんなで示し合わせてるのかな?薄情だよね」

「へぇ・・・随分いなくなりましたね。どうしたんでしょうね」

 作家志望の205がわかり切ったことを言うので、Aさんは苛立った。

「俺のことが嫌になったんだろうな」

「みんな好きでしたよ。社長のこと。だからいなくなるなんて信じられない」

「君、優しいんだね」


 Aさんは久しぶりに、205を抱いた。巨乳でなかなかいい女だった。


「俺は本当は君が一番好きだったんだよ」

「やっと気が付きました?」

「前から気が付いていたよ」

「随分とご無沙汰でしたね」

「これから、毎晩来るよ」

「待ってます」

「君の小説に何かプラスになるかな?」

「はい。多分」


 ***


 602号室、アスリート系美女の部屋にAさんはいた。


「万里加ちゃん、美玖ちゃん、英美里ちゃん、葵ちゃん、クルミちゃん、玲央奈ちゃん、みんないなくなちゃってさ。薄情だよね」

「そうですね。意外です」

 ずっと敬語のままだった。

「美玖ちゃんがどうしていなくなったか知らない?」

「全然・・・親友だったけど、わかりません。社長にプロポーズされたって聞きました」Aさんは気まずかった。

「いい?今晩?」

「はい」

 

 Aさんは久しぶりに602号室を抱いた。体が引き締まっていて、四肢が固い。まるでカモシカのように動物的で、妙に官能的だった。


「君、すごいね・・・燃えたよ。3回もやっちゃった・・・」

 Aさんは照れた。「これから毎晩来るから」

「はい」


「ねぇ・・・君のお母さんにご挨拶したいな・・・君と結婚したいって」

「え!?」

「あ、ごめん。気が早かったね。でも、今決めたんだ。君と結婚するって」

お金があれば親に楽をさせてあげられる。東京に呼んで一緒に暮らしたい。602はそのプロポーズを受けようと思った。

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