第3話 面接
アスリート系の602、フリーターの403、国立大学の308の面接も似たような感じだった。金がないのにつけ込んで、寮があることをほのめかす。みな、お金がなくて毎日ストレスを感じているから、何が何でも寮に入りたいと思ってしまう。602と403なんかはしっかりしていて、多分、Aが愛人関係を望んでいることにも気が付いていた。それでも、お金がないから受け入れた。
関係を持ってすぐの頃は、Aさんは週2回くらい女の元に顔を出す。
でも、しばらくすると、来なくなった。そして、バイト仲間からあのマンションって実は・・・と聞かされる。みんな悔しがるけど、Aさんは女性たちの気持ちの変化に気が付いて「君が一番好きだよ」と口から出まかせを言う。そして、ちまちま小遣いを渡す。
***
505号室の住人。メンヘラっぽい専門学生。小柄で見た目が超かわいい。声もアニメ声でエロい。
「君の家は都内なんだ」
「はい」
「専門学校でどんなことやってるの?」
「声優の学校です」
「ふうん。もし嫌じゃなかったらやってみてくれる」
505は取り敢えずアニメ声を出した。その声がかわいいし、Aさんは居酒屋のバイトじゃもったいないなと思う。
「かわいいね。君アイドルみたいって言われない?アイドルやらないって?」
「でも・・・人前に出るのが苦手で」
「へぇ・・・もったいないなぁ」
「でも、本当なんです」
「接客大丈夫?」
「はい。でも、できれば厨房がよくて」
「いいよ。君がそっちがよかったら」
「厨房は時給は同じですか?」
「本当は違うんだけどね・・・君を気に入ったから、同じだけ払うよ」
「本当ですか?ありがとうございます」
「みんなには内緒だよ」
かわいい子はいつも特別扱いされているから、505は何とも思わなかった。週5日入りたいと言うので、Aさんは尋ねた。
「君は実家だろう?どうしてそんなに働くの?」
「一人暮らししたくて」
「え、どうして?」
「実家が嫌なんで」
「ここ、寮もあるんだけど・・・週5も入るならどうかな」
「家賃いくらですか?」
「君ならタダでいいよ。将来有名になったらうちでバイトしてたって言ってくれる?」
「もちろんです」
「じゃあ、いいよ。タダで。でも、他の人には言わないでね」
505は入社と同時に寮に越した。Aは部屋に訪ねて行く。
「なんか困ったことがあったら言って」
「実は・・・天井に手が届かなくて・・・」
「じゃあ、つけてあげるよ」
Aさんは照明をつける口実で505の部屋に上がり込んだ。それで、引越しを手伝う。
「腹減ったからUberEatでも頼もうか?」
505は食費が浮いてラッキーだと思う。Aさんはずっと部屋にいて帰ろうとしなかった。
しかし、「若い子の部屋に上がり込んだら申し訳ないよね」と言って、その日は大人しく帰った。
それから、何回か差し入れをした。
「給料日前だから・・・食うもんなかったらって思って」
「ありがとうございます!」
505は感激した。部屋には冷蔵庫がないことを知っていたんだ。
「冷蔵庫買った?」
「まだ・・・」
「じゃあ、電気屋に行こう」
2人で量販店に買い物に行って、Aさんは電子レンジ、冷蔵庫、炊飯器、ドライヤーなんかを買ってやる。
505は給料を前借しているみたいな気分になる。
「給料、前借してもいいよ」
「あ・・・じゃあ・・・」
お金は交通費などですぐになくなってしまうから、度々前借りしていた。
Aは口実を作っては、いつも部屋を訪ねていくようになる。
「夕飯一緒に食おうよ」
そうやって、部屋に入ると2人は妙な雰囲気になって、Aさんは505にキスをした。
「いや・・・私そんなつもりじゃなくて・・・お金いっぱい出してもらってるんで悪いんですけど」
「君も男と付き合った方がいいよ。その方が説得力も増すから。最近は、色んな仕事があるだろう?エロゲーとか・・・」
「嫌・・・」505はAさんの胸を押し返した。
「君のことは大事にするよ」
強引に迫るAさん。505は弱みを握られているので、仕方なく受け入れてしまった。205の作家志望のフリーターも気が付いたらAさんに食われていた。
「作家になるなら、色んな経験積んだ方がいいよ!」
2人の子は、Aさんから「クリエイティブな仕事をするなら男性経験0はあり得ない」と説き伏せられると、何となくそんな気がしてしまった。
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