第4話 そんなもん見せんな!
今、俺がいるのは、頑丈そうな鉄で囲まれた近未来的な施設で、ドアなんか、瞳の認識で解錠される。SF映画に出てくるようなやつだ。
その施設の中にある一室で、究極の選択を迫られている。
目の前には巨大なガラス窓のショーケース。その向こう側に、多種多様な種族がずらりと並んでいて、人型ではあるものの爬虫類のような肌に尻尾が生えてる奴や、ファンタジーに出てくるオークみたいにゴツい奴、それから仁王立ちした色白の豚に似た__というより完全に豚だろ、あれは。
しかも全員素っ裸で、下半身の、本来は棒があるべきところには、地球人とは違う、うねっとした生物がくっついている。
どこかで見たことがある気がして目を凝らしていると、正体を思い出した。
__チンアナゴだ!
あれに似たモノがひょっこり顔を出している。でも、一般的な蛇のような模様はなく、持ち主の肌の色と一緒だ。
「おい、なんで海の生物ぶら下げてんだ?」
「生物ではない。あれはアナノコだ。お前にもくっついているだろう?」
「俺下半身で生き物育ててないです」
「あれは生物ではない。お前ら地球人のモノとは形が違うが……まあ、興奮度によって自立するのは一緒だろ」
「いやちょっと、一緒にしないでくれます?」
「我々に言わせれば、地球人のアナノコの方が珍妙だぞ。愚かな地球人は卑猥なものと捉えがちだが、我々にとって生殖器は命を授かる神聖なものだ」
「はあ……」
この星は性に奔放なのだろうか。
俺は改めて、エルを下から上へと舐め回すように眺めた。こいつは男だが、この惑星にはこのレベルの女もいるはずだ。
だとすると…………とんでもなくラッキーかもしれない!!!!
俺の下心には気付いていないエルは、大真面目な顔で俺に向き直り、アナノコを指差して言った。
「あれを引っこ抜いてきて欲しい」
「いや何言ってんの!?!?!?!?」
だが冗談ではないようで、エルはショーケースの中にいる、豚を連れてくるように指示を出した。
「僕が手本を見せよう」
「やるなんて言ってないんだけど?」
俺の抗議には耳を貸さず、エルは勝手に聞きたくもない説明を続ける。
「まずは相手のアナノコを自立させる。最初は威嚇するのがマナーだが、慣れないうちはどんな手を使ってもいい。まあ、大体は対峙したら自立するが」
「いやだから、やるなんて言ってな__」
「シャァアアアアアア!!!!!!」
突然、エルが豚の股間に向かって威嚇を始めた。
「キェエエエエエエエ!! シェエエアアアアアアアア!!!!」
さらに奇声を上げながら両膝をついて、仁王立ちしている豚の股間に向かって蛇を模した手つきで両手を素早く動かす。
豚相手に全力で威嚇する異様な様を目の当たりにした俺は、思わず大股で一歩、後ろへ身を引いた。
__こいつとはあまり関わらない方がいい。
そんな気持ちで見つめていると、豚の股間に変化が起こる。
穴の中に引きこもっていたアナノコが、するすると顔を出し、エルに噛みつかんばかりに大きく口を開け、威嚇を始めたのだ。
「しめた!」
エルが豚のアナノコをむんずと掴むと、豚は「ピギィッ」と鳴いて、顔を赤らめた。
しかし、エルに止める気はない。
「自立したところを掴んで……思いっきり引っこ抜く!!」
掴まれたアナノコは、なす術もなく引きずり出され、豚は「はうぅ〜……」と満更でもなさげな顔でパタリと倒れた。アナノコがいた股間には住人のいない穴だけが虚しく残っている。
振り向いたエルは、爽やかな汗と共に一仕事終えた後のスッキリとした表情で。
「……な、簡単だろう?」
「オゥェエエエエエエエエエエ!!!!!」
力なく項垂れるアナノコを目の前に突きつけられた俺は、たまらずその場にゲロッピーした。
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