最終話 先輩
翌日の放課後。俺は──体育館裏へと向かった。体育館裏に着くと、早希先輩は俯き加減で地面を見つめ、体育館の壁に背中を預けて立っていた。
「先輩」と俺が声を掛けると、先輩は壁から背中を離し、ゆっくり俺に近づいてくる。
「お待たせしました」
「うぅん、大丈夫」
「えっと……昨日の返事ですけど──」
俺がそう口にすると、先輩はなぜか人差し指を立てて俺に突き出す。
「なんですか?」
「返事を聞く前に1本、勝負をしない?」
「別に良いですけど、空いてます?」
「うん、今日は誰も来ないはず」
「分かりました」
俺は返事をして先輩と一緒に体育館に入る──本当に誰も居ない。俺が静まり返る体育館を見渡していると、先輩は体育館のカギをかけた。
「え? ちょ、先輩?」
「だって……邪魔されたくないじゃない? 今日は特にね」
「はは……」
先輩と俺は奥へと進み──先輩は落ちていたバスケットボールを拾った。
「どっちが先にオフェンスをするか、ジャンケンで決めますか?」
「うぅん、今日は澤村君が先で良いよ」
「分かりました。ありがとうございます。では行きますよ?」
「どうぞ~」
俺がゆっくりドリブルを始めると──先輩が行き成り、正面から抱きついてくる。俺はビックリして、「せ、先輩!?」と、バスケットボールを手放してしまった。
「いま──告白の返事を聞かせてくれる?」
「えっと……この態勢で、ですか?」
「うん……」
俺はゆっくり目を閉じ「──ズルいなぁ、もう……」
「えへへ……」
「俺、そんな事をしなくても、断りませんよ」
「え……」と、先輩は意外だったのか、そう声を漏らし、俺の体から離れる。俺は目を開けると「隙あり!」と言って、バスケットボールを回収して──レイアップシュートを決めた。
「やった~、初めて先輩に勝った~」
「あ~……ズルいんだ」
先輩はそう言ってフグの様に可愛らしく頬を膨らませると「──じゃあ、さっきのは、私を油断させる為の嘘だったの?」
「──そんな事、ないですよ。俺……正直に言うと、仮入部の時に先輩を見掛けた時からずっと、綺麗な人だなって憧れていました。いま思えば俺が頑張れたのは、そんな先輩に会いたいって気持ちもあったからなんじゃないかと思ってます」
俺は落ちていたバスケットボールを拾い、先輩に近づく──そしてバスケットボールを先輩に差し出すと「だから俺……先輩と付き合いたいです」と、告白をした。
先輩は目を丸くして驚いている──けど、直ぐに頬を赤くして、可愛らしい笑顔を見せると、ボールを受け取ってくれた。
「はい! 喜んで!」
こうして俺と先輩は結ばれ、モテまくり騒動は無事に幕を閉じた──。
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