最終話 幼馴染
翌日の放課後。残念だけど俺は、先輩、凛ちゃん、飛鳥さんの告白を断り、家へと帰った──。
残すはあと一人、杏のみだ……俺はドキドキしながら、自分の部屋のドアを開ける──杏はお気に入りのペンギンクッションを思いっきり尻に敷き待っていた。
思わぬ先制攻撃を食らってしまい、俺はクスッと笑ってしまう。
「お前なぁ、抱き枕にしてないって気付いたからって、そりゃないよ」
「だってこのクッション、気持ちいんだもん」
「まったく……」
俺が通学鞄を床に置くと、杏は立ち上がって俺に近づく。向き合うように立ち止まると「──もう、話は終わったの?」と聞いてきた。
「うん、話をしてきたよ。あとは杏だけ」
「そう……」
「心の準備は出来てる?」
俺がそう聞くと杏は黙って頷く。
「分かった。今までの女の子には魅力に感じるところを話してきたんだけどさ……お前は端折って良い?」
杏は怒ったようで眉を吊り上げながら「え~、ヤダッ!」とハッキリ口にした。
「お前とは長い付き合いだから、その辺を言わなくても、分かってくれてると思ったんだけどな」
「それは何となく分かってるよ? でも、言葉に出して欲しいじゃない」
「分かったよ」
俺は急に照れくさくなり、髪を撫でる──切りがないので、意を決して手を止めると、口を開いた。
「杏の魅力はさ……顔が可愛いとか、優しいとか色々あるんだけど……やっぱり家族に一番近い存在と感じさせてくれる所だと思うんだよね」
俺は落ち着かなくて、杏から視線を逸らすと、自分の手のひらをジッと見つめる。
「ホントいうとさ。食事会が終わるまで誰を選ぶか何て決めてなかったんだ。でも──」
この先の言葉はきちんと正面を向いて伝えたくて、俺は顔を上げて杏の目を真っすぐ見つめる。
「お前が最後まで残ってくれて、『お帰り、お疲れ様』って声を掛けてくれた時、家族のような安心感があって……お前にだけは未来を感じられたんだ」
俺は大きく深呼吸をすると「俺……杏の事が好きです。だから、付き合ってください」と、愛を告げた。
杏は両手で口を覆い「蒼汰……」と、言葉を詰まらせた──少しして俺に近づき胸板にオデコを付けると「蒼汰があんなことをするから、凄く不安だったんだよ? みんな可愛いし、凄く心細かったんだから!」
「ごめん……」
「──良いよ。最後は私を選んでくれたんだから、許してあげる」
「どうも」
杏はオデコを離すと、頬を真っ赤に染めながら、上目遣いで俺を見つめる。
「ねぇ、蒼汰。転校したら、なかなか出来ないから、その……キスして」
ドキッ!! 何だよ……急に可愛すぎるだろッ!!! 俺が心の中でそう叫んでいると、杏は黙って目を閉じる。
こ、こりゃ……いかない訳にはいかないよな!? では頂きます!!! 俺は上手く出来るか不安に思いながらも、ゆっくり顔を杏に近づけ──マシュマロのように柔らかい杏の唇に俺の唇を重ねた。
「ん……蒼汰、好き」
こうしてモテまくり騒動は、無事に幕を閉じた──。
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