第47話 【SS】 『鼻血よ、出るな!』
☆1章完結 SS☆
―――高級宿「風見鶏」
(……お、俺の妻が麗しすぎるッ!)
俺は心の中で絶叫しながら、露天風呂の中でザパァッと顔を洗った。初クエスト後の宴から、もう7日……。
――旦那……様……。
布を纏わない聖女様のトロンとした表情、唇の柔らかさと絡み合う舌の音と、漏れ出るアリスの甘い声。
吸い付くような白い肌をこの腕に抱き、柔らかくて弾力のあるおっぱいの頂(いただき)を刺激する。
アリスは恥ずかしそうに顔を隠しながらも、"受け入れて"くれようとしてくれているし、
――私も……、旦那様と"1つ"になりたい……です。
ちゃんと望んでくれている。
だが……、
ブシュッ……ボタボタッ……
俺の鼻血が留まる事を知らない。
アリスの"破壊力"も留まる事を知らない。
一向に慣れないアリスとの"情事"。
俺は悪くない! 全てはアリスのせいだ!
貧血で死にかけるなんて笑えない。
興奮しすぎて死ぬなんて、断固として許さない。
――……う、麗しすぎるんだ! アリスが綺麗すぎるんだよ!
俺の"八つ当たり"にアリスは嬉しそうに顔を真っ赤にして、愛おしそうに俺を見つめると、
――旦那様、抱きしめさせて頂いてもよろしいですか……?
なんだか子供のように扱われている気もしたが、こんな風に素直なアリスがたまらないので、普通に甘えるフリをしては、容赦なく触れて、"鳴かせて"、鼻血を噴く。
チャプンッ……
こうして1人で風呂に入るのは久しぶりだ。
今夜こそは決める!
俺は、なんとしてでも"今夜"決める!!
題して、『無限"初めて"』を決行する。
成功するまで、何度でも"繰り返す"。
いつものように、鼻血が出て、アリスが《回復(ヒール)》してくれても「気持ちが折れる事がない!」ように、固く決意するための1人風呂だ。
鼻血が止まったら、即、《時間縮小(タイム・シュリンク)》。また撃沈しても、"制限"が解除するたびに何度も何度も『初めて』を繰り返すつもりだ。
……もう7日目。
「出来ない」事より、これ以上、アリスにカッコ悪い所を見せるわけにはいかない。
俺の《時間縮小(タイム・シュリンク)》は、この日のために開発したと言っても過言じゃないと、今ならわかる。※そんなわけない。
「ふぅ〜……行くか……」
ザパァー!!
風呂から上がり、アリスの待つ部屋に向かう。
俺の"息子"はすでに戦闘態勢に入ってて、"貧血死"を覚悟した俺は、ガラにもなくシリアス顔で風呂場を後にした。
◇
部屋に戻ると、今にも泣き出しそうなアリスが待っていた。
……えっ? "おっ立ててる"場合じゃないじゃん。
昂った気持ちなど投げ捨て、アリスに声をかける。
「アリス? どうしたんだ? 何かあったのか?」
「……いえ、なんでもございません」
「……そんなはずないだろ?」
「私は……、私は、旦那様をお慕いしております。心から旦那様を愛し、愛されたいと思っております……」
「……え、あ、う、お、おお! そうか!」
「"1つ"になれずとも、旦那様が口づけをしてくださるだけで天にも登るように、心から幸せだと思えます」
「……ん? いや、」
「は、恥ずかしく、満足に奉仕する事も出来ませんが、どうか、どうか……、私を側に……」
「なにを言ってるんだ……? アリス」
話しの流れが見えない。
いや、言ってくれてる事は単純に嬉しい。
でも……、
なんでこんなに泣きそうなんだ?
なんで"やらない"と思ってるんだ!?
"やる"に決まってるだろ! ふざけろ! 俺はやると決めたらやる男だ! 今夜は寝かせないぞ! アリス!
これは『聖戦』だ。
俺が死ぬか、アリスを抱けるか……。
人生最大にして最強の難関なんだ。
アリスはチラリと俺を見つめると、少し無表情を崩し、ハッとしたように顔を赤くする。
「……も、申し訳ありません。旦那様との生活が始まってから、一緒にお風呂に入らなかったのは初めてでしたので……、その、……も、申し訳ありません」
なんだ、それ……。
俺の『決起入浴』を勘ぐって、捨てられるとでも思ったのか?
……はぁ〜……2度とそんなバカな事を考えられないように、身体に刻み込んでやる。
鼻血なんて出してる場合か!
このクソ童貞!
俺自身に吐き捨て、「ふっ」と笑うとアリスを真っ直ぐに見つめる。
「バカめ……。アリス……、俺はお前を抱くぞ?」
「……はぃ」
「"約束"はした。……俺が離れるなんて思うな。俺から離れれるなんて思うな」
「……はい、旦那様」
アリスの白い頬にポロッと流れた涙に手を伸ばし、優しく拭う。
「覚悟はいいな?」
「はい。私は旦那様に全てを、」
堪らずアリスの言葉を遮るように唇にキスをする。
「んっ……はぁ、あっ、んん……」
クチュッ……クチュッ……
舌を入れ、アリスの口内を掻き回す。
絡み合う舌は甘い水音を立て、アリスは苦しそうにベッドのシーツをギュッと掴んで声を漏らす。
「あっ、ん……旦那、様……、んっ、はぁ……」
静寂の部屋には、甘く卑猥な音に包まれる。
「はぁ、はぁ、んっ……あっ、んん」
クチュッ……
唇を離すと、そこには凄まじい色気を放つアリスが待っている。
涙に濡れる睫毛に赤く染まる頬。
誰も見たことのないアリス。
コレは俺だけの物だ。
「「はぁ、はぁ、はぁ……」」
2人の荒い呼吸。
アリスは俺から視線を外すと、
「だ、旦那様……。私も、身を清めて……」
言葉にしながら、ベッドから抜け出そうとするが身体に力が入っていないようで、ガクッとベッドに手をついた。
(……あ、煽りすぎだ、アリステラ・シャル・フォルランテ……!!)
ドサッ……
ベッドに押し倒し、アリスが身にまとっている浴衣の帯をスルリッと外す。
「だ、旦那様、私もお風呂に、」
クチュッ……
「んっ、んぁっ……あっ、ん、はぁ、旦那様っ……」
俺はまたキスをしながら、その柔らかく綺麗な胸に手を伸ばした。
アリスの肌はどこまでも白く綺麗で、手に吸い付く。唇の柔らかさと、必死に俺の舌を追いかけるアリスも、全てが俺を刺激する。
くっ……。ヤバい……。顔が熱い。
クソッ! 鼻血出る、
チラリと浮かんだのは、先程の不安気なアリスの表情だ。
……消してやる。刻んでやる。
骨の髄まで……。俺の"約束"はそんなに軽い物じゃないと教えてやる。
恥ずかしくて絶対に口には出せないけど、俺もお前に惹かれていると……、教えてやる。
初めて会った時は、"自分を持たない"いけ好かない女だった。ただただ綺麗で、気味が悪いほどに"完璧"で、俺とは絶対に合わないと思っていた。
……望まない形での結婚だった。
でも、たまに……、本当に、たまにだが、最近ではよく笑うようになった。
何気ない穏やかな昼下がり、目覚めたばかりの寝ぼけた時、俺に付き合い晩酌の時も。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
自分の身体を起こし、アリスを見下ろす。
「はぁ、はぁ、……旦那様……」
はだけた浴衣には、とてつもなく綺麗な"聖女の裸"。細い腰に触れると、ピクッと身体をよじる俺の妻。
綺麗な胸に顔を寄せれば、
「んんっ! あっ、はぁ、はぁ……んんっ!」
甘く、どこまでも美しく"鳴く"。
「あっ、あぁっ! だ、旦那、様……んっ、も、う、あぁっ……んっ、んんっ」
口を塞ぐアリスだが、漏れ出る声は止まる事はない。アリスの全てが俺を昂らせる。
誰も知らない聖女の姿を俺だけが知っている。余裕なんて一切ない。もう色々と爆発しそうだ。
(もう……限界だ……)
改めて見下ろすと、恥ずかしそうに顔を両手で押さえている姿。
「……はぁ、はぁ、ぁあっ……」
「顔を見せろ、アリス……。これから先、お前は俺だけを見ていればいい」
「……旦那、様……はぁ、はぁ、」
スッ……
アリスの両手をとり、その顔を見つめる。
「『完璧な聖女』なんか要らない。俺は……、"アリステラ・シャル・フォルランテ"が欲しいんだ……」
縋るような、求めるような、紺碧の瞳が揺れる。俺はアリスの手を握り締めたまま、ベッドに優しく押さえつける。
ツゥーッと目尻から涙を流したアリスにキスを落とし……、
「んっん! ん! あっあ!!」
"1つ"になった。
アリスは必死に俺の手を握りながら耐えているが、キツく、声が上がるたびに締まる"アリスの中"に俺もグッと歯を食いしばる。
「アリスッ!」
「だ、んな様ッ!! んんっ!」
とめどなく流れるアリスの涙。
「痛いか……? だが、もう……止まれそうにない……」
「あぁっ、んん、んあ、はぁ、あっ……ち、違います……んっ……」
「はぁ、はぁ、はぁ……」
動きを止め、アリスの言葉を待つ。堪らない快感と、湧き上がる愛おしさに、グッと唇を噛み締める。
「はぁ、はぁ……旦那様と"1つ"になれて……、心から嬉しく、あまりに幸福で……、涙が止まらないのです……」
「……」
「こんなに余裕のない旦那様を見られるのは……私だけ……。心から愛しております、旦那様」
「……ふっ……、煽りすぎだ」
俺はまたアリスにキスを落とし、
「あっ、んんっ、はぁ、あっぁ! 」
言葉にできない「お前に惹かれている」という想いをぶつけた。
◇
アリスは俺と同時に"果てる"と、しばらく立ち上がることすら出来ず、「幸せです……」と小さく呟き、意識を失うように眠りに落ちた。
俺はついに童貞を卒業した事を実感しながら愛おしさが爆発、裸のまま眠りに落ちたアリスに、治らない興奮と衝動を抑えるのに必死だった。
けど……、
ブシュッ!!
遅れてやって来た鼻血に、それどころではなくなり、疲れて眠っているアリスを起こさないように必死で悪戦苦闘を繰り広げた。
アリスの《回復(ヒール)》もなく、収まっても、アリスの裸体で『初めて』を思い返しては、
ブシュッ!!
無限ループに陥り、冗談抜きで死にかけた。
目を覚ましたアリスは血塗れの部屋に驚愕し、すぐに治してくれたが、本当にやばいところだったはずだ。
そして、落ち着いた頃……、
「……大丈夫か、アリス?」
俺達は露天風呂に一緒入っている。
ラフィールに向かおうと思っていたが、アリスは尋常ではないほど顔を赤くしていて、歩き辛そうにしているので今日は大人しくすることにしたのだ。
「……は、はぃ。この"痛み"すらも、愛おしく思います」
「……そ、そうか! ってか……、なんで顔を隠してるんだ?」
「……あの、ま、まだ、"旦那様"がいて下さっているような感覚が続いてまして……」
アリスは下腹部に手を当て、恥ずかしそうに顔を赤くしては、視線を外す。
だ、だ、第2回戦の始まりだ!!
俺はアリスが巻いているタオルを奪った。
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