第18話 聖女の裸



―――高級宿「風見鶏」




ドクンッ、ドクンッ、ドクンッ……



 湯船に浸かり"妻"を待つ。

 

 悶々としすぎて、思わず呼びに行ってしまったが、まさかの了承。


 あちらは本当は嫌なんだろうけど、欲には勝てない。そもそも、欲と戦う気がない。


 俺はそういうヤツだ。


 あぁー!! どうする!? 触らないって言っちゃったけど、そんなん無理だろ!!



 俺の興奮が最高潮になっていると、


 

カラカラ……



 タオルを巻いた真っ赤のアリスが入って来た。




※※※※※【side:アリス】



 ど、ど、ど、どうすれば……?

 うぅうぅ……は、恥ずかしいです!


 私は目のやり場に困りながらも、露天風呂の入り口に立ち尽くす事しか出来ない。


 湯船に浸かっている旦那様は私を見つめて固まっていて、やはり自分の身体に至らぬ点があったのかと焦燥に駆られる。



「……は、は、入ったら?」


「……いえ、まずは自分の身体を清めてからです」


 言葉にしながらハッとする。

 自分の身体を洗うという事は、タオルを取ると言うことと同義なのでは?



ドクンッドクンッドクンッ……



 もう私の心臓は壊れてしまったかのようだ。緊張と不安で身体が震えてしまう。


「……い、嫌だったか?」


「いえ。嫌ではありませんが……」


 恥ずかしくて、不安で涙が出そうなのです!


 私の心の声は言葉にならない。


「……わ、わかった! 俺が背中を洗うよ。その間にアリスが自分で"前"を洗えばいい」


 旦那様は顔を赤くして、私の瞳を見つめる。


「いえ。私が旦那様の身体を、」


「俺はもう自分で洗ったから! 恥ずかしいんだろ? 俺が背後に居るなら、"まだ"いいんじゃないのか?」


(うぅぅ……。なんて優しい旦那様なのでしょう……)


 尋常ではない顔の熱に、言葉を発する事も出来ずに、コクコクッと頷く。


 嫌われなくない……。

 せ、背中に傷などあったら大変です!


「《完全修復(パーフェクト・ヒーリア)》……」


 旦那様に聞こえない声で呟き、ドクンッドクンッと痛む胸に、呼吸が苦しくなりギュッと抱きしめる。


「……くっ……!! ア、アリス! そ、それやめて……」


 旦那様は何故か顔を手で覆い、鼻から出血している。


 旦那様が……出血を!?


 獄炎鳥を相手にしても、傷一つ無かった旦那様の出血に激しく困惑してしまう。

 

「……旦那様!」



ハラリッ……



 慌てて駆け出した私は、取れたタオルなど一切気にする事なく、即座に旦那様に《回復(ヒール)》をかけた。




※※※※※



 大きく目を見開いた紺碧の瞳。


 アリスが自分で胸を押さえた光景……。


 触らずとも柔らかさがわかるおっぱいに俺は悶絶した。


 きめ細かい綺麗な肌を少し赤くさせ、恥ずかしそうに、小さく唇を噛み締める姿。


 無表情が少しだけ崩れた『完璧な聖女』。


 恥じらい、視線を伏せ、自分の胸を押さえる姿に興奮は最高潮だ。



――やはり無理です。



 そう言われないように、「背中を洗う」という提案をしたが、"限界"を迎えたのは俺が先だった。



ブシュッ……



 ダラダラと流れ始めた鼻血に呼吸が苦しくなる。



ハラリッ……



(……!! か、『神』は存在する!!)



 非の打ち所がない"聖女の裸"。


「……旦那様!」


 綺麗で大きな胸には、ピンク色の……。慌てて駆けた数歩で、タユンッと揺れる。


 初めて見たおっぱいは想像を遥かに超えている。


 アレを揉む。アレを摘む? 口に含む……?

 その度に、アリスは誰も聞いたことない甘い声を……、


 妄想はとどまることを知らない。



ブシュッ!!



 し、死ぬ……! このままじゃ俺は死ぬ!

 いや、死ねるか! 死んでたまるか! 

 これからだ! やっとなんだぞ!!



「《回復(ヒール)》!」



 頭を抱えられると目の前には、布一つないおっぱい。触れている腕すら、どこか柔らかい裸体に"爆発"は目前……。



「アリス……、タオルが……」


「……!! も、申し訳ありません。このように見苦しい身体を……!!」


 尋常ではないほど顔を赤くして、グルグルと目を回し始めたアリスはサッとタオルを掴んで"前"を隠すが、隠しきれない物がある。


「……バカめ。死ぬほど綺麗だ……」


「……だ、旦那様!」


 アリスは更に赤くなると、恥ずかしそうに両手で顔を隠すが……、



(……!! か、神は存在する!!)



 白みがかった綺麗な金色の長い髪が、ちょうどアリスの"ピンク"を隠し、それはそれで素晴らしい光景だ。


 これ以上の出血は……!


 俺は堪らず立ち上がり、


「せ、せ、せ、背中を流すから!!」


 湯船から立ち上がると、アリスはサァーッと顔を青くさせる。


「ど、どうした? アリス……」


 小さく首を傾げると……、


「……こ、こんなに、お、大きな……。こ、"壊れて"しまいます……」


 アリスの視線をなぞると、そこには……。

 俺の"興奮"が……。



「い、い、い、いつかは覚悟しろよ!!」


「……は、はぃ……」



 ドタバタの初入浴。


 背中に触れるたびにビクッと身体を揺らすアリスと、露天風呂に備え付けられている椅子から少しだけ見えている綺麗なお尻。細く綺麗なくびれに3回は意識が遠のいた。


 2人で湯船に浸かり、ルフの街と広がる森の風景を眺める。


 なんだよ、最高かよ……。


 勇者パーティーの一員となった。

 目立ちたくない俺にとっては致命的な物だ。


 だが、その対価は有り余るほどの幸福だった。


 どんなクエストがあり、どんな仕事をしなければならないのかはわからないが、少しだけは働いてもいいなと思った。



※※※※※【一方のアリスは……】



 あ、あんなの……。絶対に……。旦那様の……。


 わ、わ、私、大丈夫でしょうか? あ、あれが私の中に……? うぅう!! が、が、頑張ります!!



ピトッ……



「んっ……」



 旦那様の熱い手が背中に触れるたびに、へ、変な声が勝手に……。お、お腹がキュゥッとします!!


 な、なんだか、落ち着きません!!


 ど、ど、どうすればよろしいのですか!?



 顔は無表情とは程遠かったが、くびれとお尻に夢中のアードは一切気づかなかった。

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