第3話 伯爵の魔法

ペリアッドの城では門を開いてデンバー伯爵の到着を待ちかねておりました。

街の人々はデンバー伯爵の往来を見て興奮して大騒ぎしていたそうです。

入城するとデンバー伯爵はすぐさまペリアッド王の元へ案内されました。


「この度は御即位おめでとうございます。

デンバーと申します。

お祝いの品を持参いたしましたのでどうぞお納め下さい」

デンバー伯爵はまるで旧知の友達でてもあるかの様にペリアッドに言いましたが、王は硬い表情を崩さなかったそうです。

「ようこそデンバー殿、食事をしながら話を伺いましょう」

続いて王妃が割り込んで伯爵にあいさつをしました。

「アルザベートでございます、お見知りおきを」

憮然とした王が再び伯爵に言いました。

「ところで、爵位は誰から頂いたのかね?」

「誰に貰ったものでも無く自ら名乗っております。

王でも良いのですが小さな国ですからね」

それを聞くなりペリアッドは怒り口調になってこう言ったのです。

「そもそもあの辺りは我が国に属するものであろう。

私と臣従の誓いを立てなおし、爵位はそれからの授与になるが良いかな?

またかの領土では男爵位が妥当である」

「かまいませんよ。

あなたが私の臣下になられて、デンバー王国領のペリアッド男爵になるというお話しですな」

伯爵が言い終わるやペリアッドが叫ぶより早く近衛兵が伯爵に槍を向けました。

「この者を捕えるがよい」

副長官がサッとペリアッドに近付いて耳元で囁やきました。

「王よ!伯爵はクンベルテ川に一瞬で石橋を架けてしまう驚くべき呪術師です。」

「呪術師とな、かまわん。

捕えて首を落として私の元へ持って参れ!」

「はっ!」

近衛兵達が伯爵を槍で突こうとした刹那、伯爵が一声発しました。

「リオン!」

伯爵の従者二人がたちまち大きなライオンに変身して近衛兵達を威嚇したので、近衛兵達は皆狼狽え慄いたのです。

そして同時にデンバー伯爵に敵意を抱いた者達、すなわちペリアッド王と橋の奇跡を見ていなかった近衛兵達は皆小さなネズミに変えられてしまったのです。

伯爵は怯えてうずくまっているネズミを一匹づつつまみ上げて、贈り物として携えて来たオレイカルコスの壺に放り込んて蓋をして、そのまま自分の国へ帰って行ってしまったのです。

それ以来ネズミにされたペリアッド王と兵たちは帰りませんでしたのじゃ、恐らく壺の中で干からびて死んだのでしょう。

これがこの王国とデンバー伯爵との間の因縁の物語です」

さすがのペリアッド5世王も狼狽しておりました。

「その話は真か?」

「はい、王国の系図を見れば一目瞭然、ペリアッド1世亡き後弟君のセリアッド様が御即位なされ今の王位が継承されているのです」

「走らせた使者をすぐに連れ戻せ!」

このような経緯で国の高官たちは善後策を話し合いました。

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