第4話 デンバー橋

強大な力を持った魔術師のデンバー伯爵を怒らせてしまった恐怖に包まれて、ペリアッド国の要人達によって話し合いがされていました。

「相手はたった一人、恐ることはないであろう」

「あのわざを見たはずだ、立ち向かえば皆ネズミにされて壺に放り込まれてしまうだろうよ!」

「誰か良い手立てを示せる者はおらんのか!」

ペリアッドの弟セリアッドは自分の兄の行いが招いた災いである事など気にも止めずに皆に問いかけました。

「それなら私から提案がありますわ!」

ホラム王妃が口を開きました。

「ほう、ホラム。どんな提案か言ってみるが良い」

「伝説によれば伯爵様は、敵意を抱くものには容赦なく振る舞い、一方で友愛の意を示す者に対してはとてもお優しく、求めるならば極上の知慧をも授けて下さると言われております。

この度の無礼を改心する証として、恭順と友愛の証として我が国によってクンベルテ川に立派な橋を架けてデンバー橋と命名した上で伯爵に進呈するのです。

そして使者を送り非礼を詫び捕らえられたものを返して頂いた上で国の友好を結ぶのです」

「さすが王妃様、名案にございますな。

使者としてはセリアッド様が行かれるのが宜しいかと存じますが」

副長官がそう言いましたが、ホラム王妃はそれを直ぐに訂正してこう言いました。

「なりません!我が夫ペリアッドなき今セリアッドにももしもの事があってはなりません。

使者としては私がまいりましょう。

国の王妃ならば役に不足はなかろう。

副長官には案内を命じます」

「分かりました、それでは早速橋の建設を手配いたします」


副長官の命により職人やら資材が手配されてデンバー橋の建設が開始されました。

これには失敗が許されなかったので、ペリアッド国の一大事業となりました。

橋の建設事業によって国が豊かになり、人々は皆笑顔で暮らすようになりました。

事業の為にレムル帝国とグーラ族との間にも停戦協定が結ばれて平和でした。

デンバー伯爵は幸せをもたらすと言う言い伝えは本当だったようです。


オレイカルコスの壺に放り込まれた王たちは、ネズミになって生きておりました。

この壺はとても不思議な品で、大洪水で世の中が一度滅びる以前の文明の技術によって造られており、中の物は腐り難く、生き物は食べ物無しで永く生きられると言う代物だったのです。

ネズミから人間に戻す方法は伯爵しか知りません。

デンバー伯爵は、直ぐに王国の人が謝りに来るものと思ったしそうすれば人質を返してあげるつもりでしたが、一向に使者が訪れなかったので、すっかり壺の事を忘れて蓋をしたまま放って置きました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る