予想の八倍キショい。



 街中のスケルトンは一掃し、マナボールと名付けたドーピングアイテムを回収し尽くした俺達。


 チームリーダーはフリルなんだけど俺が毎回ロマンとかで暴走するから行動指標が俺のワガママって言うどうしようも無いチームだけど、八王子での行動を開始した。


 まずチームを二つに分けて、セーフハウス作りをする土地探しを担当するチームと、八王子を全体的に見て回って探索しつつ、物資を集めるチームで行動する。


 チーム分けは俺、フリル、ゴルドの探索チーム。そしてミルク、ネコ、アキナ、ユキナの山探しチームになる。


 フリルとネコを分けて配置する事でスレイヴによる連絡が出来るので、何かトラブった時も安心だ。


 ネコのシールドも限界まで育てた結果、昔みたいに平面の一枚だけしか張れなかったシールドが自由自在の形で五枚くらい張れるようになってる。もちろん球状に展開して結界にも出来るから、トラブったら俺達が駆け付けるまで籠城も出来る。


 うーん、有能。


「ミルク、任せたぞ」


 まぁそっちのリーダーはミルクなんですけどね。ネコは超強いのにリーダーやりたがらない。なので自動的に同格のミルクがリーダーだ。


「はーい! 良い場所探すから、素敵なお家作ろうね!」


 任せとけ。セーフハウス付けるためにソーラーパネルとポータブル電源を大量に用意したからな。この世紀末にオール電化の近代的な生活をしてやろうぜ!


 ミルク達を見送った俺は八王子駅の方に向かう。確か駅前にはショッピングモールが三つくらいあったはずなので、根こそぎにする。


 この周辺で生きてるサバイバーには悪いが、どうせもう一年も経ったんだし根こそぎされてるだろ。スッカスカだろう場所を改めてスッカスカにするだけだから許してくれよ。


 八王子駅前にあるショッピングモールは『京皇八王子ショッピングセンター』と、『八王子オクトール』と、『セレブ八王子南館』だな。


 ちなみに俺が八王子に詳しい訳じゃなくて単純に地図を見てるだけ。最近気が着いたんだが、世紀末だと紙の地図が超便利。


「駅前じゃなくても離れたら結構ショッピングモールあるっぽいな。後でそっちも回ってみるか」


「ここは栄えてるんだか寂れてるんだか、良く分からん場所にゃ」


 それ八王子民に言ったら喧嘩になるから言わない方が良いぞ。


 白虎に乗って街を駆け抜け、駅前に突撃してショッピングモールにエントリーした。


「…………あ? 思ったより物資残ってるな?」


 中は薄暗く、一年も放置された事で廃墟然とした様相だ。なのに何故だか物資は結構残ってる。


 缶詰なんかの保存が効く食料も残ってるのは決定的だ。何かこの場所おかしいぞ?


「フリル、ゴルド、何か感じるか?」


 一応、見付けた缶詰や菓子類を回収しながら、俺は体の性能が段違いの二人に聞く。人間には分からなくても、犬と猫だったら何か分かるかも。


 そう思ったのだが、しかしフリルもゴルドも首を横に振った。


「マジか。こんな美味しい場所が一年も手が入ってない? いやいや有り得ないだろ」


 予想だとヤバめの魔物が住み着いてるはず。だから人が探索に入れないと思えば辻褄は合う。なのに魔物の気配も無いのはどういう事だ?


 何も居ないのに物資だけ残ってる訳ないだろ。


 他の物資ならいざ知らず、缶詰が残ってるのだけは有り得ない。今の世の中で保存が効く食料は何よりも価値があるのだから。


 それが放置されてるならば、やはり相応の理由が存在するはず。


「ゴルド、悪いけど広範囲の索敵に全振りしてくれ。フリルは範囲絞って精度上げて」


「にゃ。ヤマトはどうするにゃ?」


「エレクトリカル使う」


 ゴルドはこの一年で異能を増やして居るので、俺達の標準装備になりつつあるエコーロケーションは育成済みだ。なのでゴルドに精度が低くても広範囲を、そしてフリルには範囲を絞って高精度の索敵を頼んだ。


 反して俺は、今この時に敵が見付からないなら普段使いの異能じゃ見付から無い可能性を視野に入れて、エレクトリカルを応用した索敵を始める。


 エレクトリカル。この異能は八咫烏から手に入れた電気を操る物だが、凄まじい応用力が備わってる。


 例えば電磁波や磁力なんて力も操れる範囲内であり、平たく言うと学園都市のビリビリ中学生みたいになれる。


 残念ながら電流と電圧を弄って触った相手を即死、なんて使い方は難しかったが、他の事はだいたい出来た。


 電流の直流しだと相手の保有魔力とかも関係するらしく、即死させたい奴ほど難しくなる。即死させられる雑魚ならエレクトリカルなんて使わなくても殺せるし。


 とにかくエレクトリカルは使い方が色々あるが、その一つに電磁波探知がある。エコロケの電磁波バージョンだ。


 それもエコロケの使用に噛ませる事で更に性能を上げて使える。


 俺とフリル、ゴルドが全員同時に高精度の索敵を開始し、そしてほぼ同時にそれを見付ける。


「「上ッ!」ゴルド避けろ!」


 モールの天井に張り付いた何かが、職種のような物を降らせて俺達を攻撃して来た。


 狙われたのはゴルド。新入りをいびるとは良い度胸だコノヤロウと、俺はアサルトライフルを天井に向けて発射した。


 最近開発中の新技、エレクトリカルとメタルロードとサイコキネシス全部盛りで弾丸を押し出して威力を底上げして撃ち出す複合スキルを化け物に見舞う。


「死ねよラァァァアアアアア!」 


 弾丸が当たったのか、避けたからそうなったのかは分からないが、俺がライフルを撃った事で化け物が天井から降りてきた。


「…………よ、予想の八倍キッショいぞッ!? コイツはきっついビジュアルだぁ!」


 その化け物は、大小様々な触手の集合体だった。


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