イミテーターは誰の手に。
イミテーター。こんな滅んだ世界では間違いなく最上位の異能であり、人間の生命線と言っても差し支えない。
メインパークやコストロを支えてる物資はイミテーターのお陰で湯水の如く使えてるのであって、もしこれが無かったらここに居る人間は半分も生き残って無かったはずだ。
ポロッと二つ目がドロップした訳だが、果たしてこの先もイミテーターがドロップするか否かで計画が少し変わるのだけど、それはひとまず後で良い。
今は、手に入ったイミテーターを誰に使わせるかだ。
まず一番ありえないのは俺。確かに二つ目を飲めば能力が強化されるが、使い込んでも強化は出来るので問題無い。それよりイミテーターの使い手を増やして俺の負担を下げる方が良い。
政治的な考えを持つのであれば、俺がイミテーターを独占する事で発言力を確保し続ける案もありっちゃあり。
だけどその結果俺の仕事が増えるのは嫌なので、やっぱり俺が使うのは論外なのだ。
「やっぱ、ここは無難に店長のルリかサオリさんじゃね?」
ショップとクエストカウンターを担当する店長ルリ。そしてお弁当屋を管理するサオリ。
本来なら館長代理であるネコに持たせるのもありだけど、残念ながらネコは連れていく予定なのでダメ。あれから時間も経ってるし、暴力を担保にしたネコの発言力を頼らなくても、イミテーターの能力を担保に発言力を確保する形に変えて欲しい。
見ればタクマも育ってるし、そのタクマがルリにベッタベタだし、ネコの代わりにルリを館長代理に据えてイミテーターを使ってもらって、タクマを護衛にするか?
あれ、そう言えばレオはどこいった?
この施設は単純に暴力が権力になり得る。だから早期から異能を鍛えてたレオも会議とかには呼ばれると思ったんだけど、見当たらない。ちなみにタクマはルリの代わりに店番だ。
「レオは?」
「ルリちゃんをタクマくんに取られて、魔物に八つ当たりしてるよ」
「えっ、あー……」
なるほど。タクマのやつ、ルリとくっ付いたのか。そりゃお姉ちゃん大好きっ子なレオは嫌だろうな。
「おけ、分かったケアしとく。それで、イミテーターはルリに使わせようかなって思うんだけど……」
サオリでも良いんだけど、彼氏という名の専属護衛がいた方が使い易いだろう。普通に拉致って酷使するに足る井上だからな。俺がレイダーならどれだけ犠牲を出しても拐うよ。
異論は出ず、と言うか何故か俺はメインパークだとカリスマ的なリーダーだと思われてるらしくて、軽く理由を話せば意見は大体通るのだ。
その後、部屋に戻ってからフリルとミルクを交えてパーティ会議。その場にはアキナも居るけど、特に意見は無いそうだ。ただ旅には同行したいと言う。
「という訳でメンバーだけど、どうする?」
「ヤマト、フリル、ミルク、ネコは確定にゃ。アキナも入れて五名にゃ」
一応、ネコには出迎えて貰った段階で伝えてある。と言うのも、森が良いと言って残ったネコである。コンクリートジャングルに行こうぜって誘って嫌がられたら悲しいので、先に打診しておいた。
ネコは充分休息出来たと言うので、次の遠征には絶対に連れていく。鴨川に来たばかりの時に地獄めいてた場所で、非戦闘員を守り切った実績はあまりにも大きい。
「レオも連れてく? 姉を取られて独りぼっちらしいから」
「うん、レオくんなら戦力になるよね」
「せ、戦力にならなくてごめんなさい……」
「いや別に嫌味で言ったんじゃ無いよ。気にすんな」
アキナも一応は魔石を摂取してるが、基本的に戦闘へ参加しないので異能が伸びない。だから俺達からすると「自衛出来る非戦闘員」くらいのイメージだ。
まぁ俺がコピーしたアサルトライフルを扱える時点で普通は戦闘員で良いんだけど、俺達の異能が育ち過ぎてるから比較対象が悪い。
フリルなんて白虎を装備するとマジで銃弾効かなくなるし、俺だってバイタリティの効果で銃弾を軽減出来る。ミルクだって白虎の元祖だから似たような事は出来るだろうし、ネコに至ってはシールドの異能がある。
うん、アサルトライフルが何? ってなるよな。
おかしいよな。アサルトライフルは充分に致死性の高い武器なはずなのに。
「コストロに行ったらゴルド回収して、七人か? チカちゃんはどうする? 交代要員送って連れてく?」
「私、ヤマトさん、フリルさん、ミルクちゃん、レオくん、ネコさん、ゴルドさん、チカちゃん…………」
「八人、多いか?」
「フリルとチカとゴルドは人より小さいにゃ」
「でもネコさんで大人が四人分くらいだよね?」
「………………メタモルフォーゼ、増やすのは楽だけど減らすのは面倒だからにゃぁ」
ふむ。小さいネコも気になるが、やっぱり大きいネコが良いよな。大きいフリルも味わってみたいけど、小さくなれない可能性があるなら我慢するべきだろう。
大きいのは最高だけど、肩とかに乗せれなくなったら悲しいからな。
「一応、ここの新人さんを連れて行くって選択もあるよ?」
「戦力になるか?」
メインパークには人が増えてる。その辺の報告も受けたけど、あまり頭に入ってない。
俺達が出発する時の倍とは言わないが、五割増しくらいには人が増えてる。この短時間にどっから湧いてきたんだと思うが、元々の母数が少ないから多く見えるだけだろうか。
「そういえば、トンネルも人増えてたよな」
コストロとメインパークの間にあるトンネルの避難所。あそこは最初五人しか居なかったのだが、帰ってくる時に通ったら二十人に増えてた。四倍だ。
その代わり、他のトンネルから人が消えてた。痕跡を見ると襲われて壊滅したと言うよりは、自分達で移動した風に見えた。
「少しずつ変わってるんだなぁ」
「世紀末だからにゃ」
世紀末。言葉の意味は世紀の終わりを示すものだが、実際は十九世紀の終わり頃にフランスで発生した廃退的な時代に準えて、それに準じた風潮や時代を世紀末と呼ぶ。
終わった世界でも今世紀はまだまだ続いて行くのだろうが、確かに今は世紀末なんだよな。
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