新メンバー。



 それはそれとして、俺は背後を見る。


「で、ガルム君。問題は片付いたから改めて話し合いたいんだけど、こっちの言葉は通じてるよね?」


 味方ガルム君は元飼い犬。人の言葉には長く触れていただろうし、不本意とは言え飼い主を食っちまってるならインテリジェンスの魔石も確実に持ってるはず。


 そう思って問かければ、ガルム君は控え目に頷いてくれた。


 漢防御から殴り耐久したあと、敵ガルムに襲撃され、更にさらに八咫烏にも介入されたカオスな盤面もやっと落ち着いた。


 そう、元々はこの子を探して廃都を彷徨いてたんだし、見付けてから分かり合うまでがゴールだったんだ。なのに敵ガルムと八咫烏の乱入で滅茶苦茶だっただけで、俺たちのゴールは最初からここに居た。


「じゃぁ改めて、俺はヤマト。そしてこっちが嫁のフリル」


「嫁にゃ。旦那殴ったお前のことまだ許してにゃいからにゃ」


「ミルクだよ、よろしくねっ」


「チカだよ〜」


 メンバー全員で挨拶をして、それから重要な事を一つだけ確認する。


「ガルム君、俺達と一緒に来るかい?」


 聞かれたガルム君は肯定も否定もせず、黙って俺を見ていた。


「俺たちは色々と旅をする予定なんだ。その途中、もしかしたら世界をこんな風にしやがった奴を見付けるかも知れない。そしたら、君の家族を殺した罪をソイツに償わせるチャンスも有るかも」


 もちろん、可能性としては極低いし『有り得ない』と言い切っても良い未来絵図だ。


 しかし、この提案には意味がある。


「だから、何回も言うが君は悪くない。世界をこうした奴が悪いし、君の家族を殺したのは君じゃなくソイツだ」


 ガルム君は無罪だと、真犯人一緒に探してボコろうぜと、そう提案する意味。つまりは無関係な俺がこの子を『赦す』為の方便である。


 じゃないと、無関係なヤツが無責任に放つ言葉でしかなく、言葉に重みなんて宿らないから。


 俺が言いたいのは一つだけ。要するにこの子が一緒に来なくても、俺達の目的の一つはそれなんだと。だから君が来ようが残ろうが関係なく、俺達は真犯人が本当に真犯人だと思ってるし、探そうと思ってる。


 ガルム君を気遣っての提案では無く、俺達に取っての真実はそうなっていて、あとは単に戦力が欲しいから誘っているのだと。


「気ぃ使い過ぎにゃ」


「そんな所も好きな癖にぃ〜」


「お? お? なんにゃチカ、やるにゃ? その喧嘩買うにゃ?」


「あっ、助けてミルクおねーちゃま……」


「もう、フリルおねーちゃんも落ち着いてよ。チカちゃんも煽らないの〜」


 背後がうるせぇ。幸せな感じにうるせぇ。良いぞもっとやれ。


 世界が終わった世紀末。このくらいほんわかしてないと精神が持たないぜ。


「だからさ、俺達と行こうぜ。旅して色々見て、たまに帰ってきてご家族の墓に報告してやろう。そんで、その途中に黒幕でも見付けたらついでにボコろう」


 俺はガルム君に手を伸ばす。


 仰々しさは無く、懇願するようでも無く、「ちょっと一緒にコンビニ行こうぜ」くらいの気安さで。


 ◆


「と言う訳で、新メンバーのガルム君改め、ゴルドくんです」


「わんっ!」


 ガルムはこれからもガルムと呼ぶだろうから、新しく仲間になった味方ガルムには改めて名前を付けた。


 何故ゴルドなのかと聞かれたら、金色だったからとしか言えない。うん、俺のネーミングなんてこんなもんだよ。異能のネーミングからとっくに分かってるだろ。


 わーぱちぱちと拍手するメンバーはもちろん、否定的な感情が少しもない。


 まぁ俺達って虎すら仲間にしてるしな。金色な犬だから何って感じだし。


「ゴルドはストレングス……、筋力を強化する異能が基本で良いんだよな?」


「わう」


 紹介が終わり、今度はお互いの出来ることを確認する事にした俺達。


 言葉が交わせなくても、通じさえするなら首を縦か横に振るだけで充分にやり取り出来る。


 あと今更だが、フリルのメタモルフォーゼでゴルドの喉を弄って発声可能にする方法は無理である。


 あれはフリルが猫だから、自分と同じ種族や近縁種であるチカちゃん達とネコに施した術であって、造りが全然違う犬にまで使える便利異能では無いのだ。


「ってことはぁ〜、一芸特化すると進化するのぉ〜?」


 俺の質問に肯首するゴルドを見て、誰にとも言わずチカちゃんが聞く。


「そうにゃると、精霊でも進化するって前提にゃらウチで一番進化に近いのはミルクじゃにゃいか?」


「………………えっ!? ミルク、進化しちゃうの!? 人間やめちゃうっ!?」


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