神速の戦闘。
そも、
何を衝撃として使ってる? どう言う力学が働いてる?
俺もフリルも、その辺の事はふわっとしてた。とりあえず衝撃と呼べる様な物が発生してる。ただそれだけを理解して使ってた。
例えばクリアコントロールやパイロキネシスを例にしても、それらは理解出来る物を操ってた。操る力その物が理解の及ばないファンタジーである事はおいといて、水や炎なんて身近で馴染み深いものだからこそ取っ付きやすかった。
だからきっと、ショックサイトもそう言う物なんだろうと勝手に思ってた。
しかし─────
「いい加減、墜ちろにゃぁぁあッッ……!」
「クァァァァアアアアッ!」
電撃すら弾き飛ばせる衝撃って、それどんな力なの?
突然この戦いに乱入してきた金の鳥が雷撃を使い、それをフリルがショックサイトで弾き飛ばす。
雷は言うまでもなく光速。それを弾き飛ばす衝撃も似たような速度域であるのだろう。
なら、それらを使って戦う両者を、俺はなんと表すれば良い?
金の鳥、カラスっぽいので暫定
今までは雷撃によって軽く殺せる獲物ばっかりだったのだろう。雷をどうにか出来る存在って軽く生き物辞めてる感あるもんな。だから八咫烏は雷撃を当たり前に弾いてしまうフリルの存在に戸惑って、そして苛立ってる。
神速の戦闘が上空で繰り広げられる中、俺達は何をしてるかと言うと────
「あ、おにいちゃん。これおいしい」
「そうか? 俺はココアよりバニラの方が好みかなぁ」
「どっちもうみゃうみゃ……」
「………………………………ゎう?」
のんびりと観戦してた。
戦闘はどうしたかって? そんなのとっくに終わってる。勝者は八咫烏で。
フリルがフライハイして八咫烏とバトり始めた後、チカちゃんが敵ガルムの奴を上手く駐車場に追い込んでくれたんだけども、そうしたら八咫烏の雷撃が流れ弾として飛んで来てだな、敵ガルムに当たっちゃって…………。
即死はしなかった物の、盛大にダメージを受けた敵ガルムを適当にボコって終わってしまった。締まらねぇ最後だったぜ。
集まってた魔犬達も、上で起きてる戦闘の余波にビビって逃げ出してる。統率してた敵ガルムが死んだんだから当然と言えば当然だ。
奴となんか因縁が有りそうだった味方ガルムも、今はやるせない顔をしてる。うん、なんか、ごめんな。
そんな訳で、チカちゃんのインベントリから食べ物や飲み物を出してもらって、フリル達の戦いを観戦する事にした訳だ。
やはりウチの最強が全力で戦ってる様を見るのは色々と刺激になるのか、すっかり戦闘員が板についてるミルクもお菓子をポリポリしながらも食い入るように戦いを見守ってる。
そうだよなぁ、雷撃が発動してからじゃ流石に対応出来ないから、異能が発動する前兆を掴んでショックサイトを発動してるフリルの戦闘は、結構な勉強になりそうだ。
「八咫烏もフリルの動きを読み始めたな」
「……やた?」
「あぁいや、仮称な。呼び名が無いと不便だし」
脳内で完結してた八咫烏呼びにミルクが首を傾げて俺を見た。こう、説明した気になって新用語出しちゃうのは悪い癖だよな。
「んねぇねぇ、加勢しないの〜?」
「まぁ、今のところはね。フリルってかなり負けず嫌いだから、今加勢すると不機嫌になっちゃうんだ」
家猫時代のフリルは寡黙で落ち着いた猫だったけど、それでも性根は変わらない。真っ直ぐで、甘えん坊で、負けず嫌いの可愛い
ルールも分からなかっただろうに、何となくにらめっこしてたら物音に釣られて視線を外したフリルが、その後に「負けてねぇ、負けてねぇからなぁ」とでも言うように三時間くらい俺の顔を見続けてた事があった。
にらめっこが分からなくても、多分「今のなんか負けた気がする」とか思ったんだろうな。
俺が勝手に始めたにらめっこでソレなのだ。今、明確にタイマン張ってる途中に乱入なんてしたら、「一人で勝てたのに味方が勝手にルール破って負けた」とか思うんだろう。
「だからとりあえず、フリルが明らかに負けたなって状況になるまでは手を出さないよ。フリルなら勝つと思うし」
と言うか、ウチの最大戦力がタイマンで負けたら、俺達も勝てない事になる。その時は数の暴力でリンチしても許されるだろう。フリルだって意地と矜恃に命までは賭けない。
ちゃんと、全ては命あっての物種だと分かってるはずだ。
「頑張れフリルー! そこだ殺れぇー!」
「ヤマトうるさいにゃぁ!」
だからまぁ、応援だけはさせて欲しい。
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