乱入に次ぐ乱入。



 は、自身が得た派手な能力とは裏腹に、平穏を好んだ。


 チカラを得てから派手になってしまった体色も気に入らないが、何よりも騒がしい周囲にイラついてしまう。


「……………………?」


 住処すみかであった場所は人が多く、家族を害された事で完全に敵対して壊滅させたが、結局静かになったその場所も家族が亡くなった場所でもあるので旅立った。


 銃弾にて失った子供達が記憶にチラつく場所に居るのが辛いと思える程度に知性が上がってしまったのは、はっきりと不幸だと思った。


 だからは旅に出た。今度こそひっそりと静かに暮らせる場所をめざして。


 するとどうだ、住み心地を確かめながらも巣を点々としたに、自分と似たような色の獣が争う様子が見えた。


「………………」


 腹が減った。丁度良いからアレを食べよう。


 は平穏を好むが、だが生きる為の糧を得るために他を殺める事に躊躇いなど無かった。


 は、食事にすると決めた瞬間に地上目掛けて急降下する。


 金の獣が2。人が2。その他多数。


 金の鳥ソレは、突如としてそこに乱入した。


 ◇


 チカちゃんに炙り出しを頼んでから五分ほど。俺は突如を嗅ぎ取って緊急回避を試みた。


「どぅわっ……!?」


 恥も外聞もなく、地面に飛び込むようにして無様なローリング回避の刹那、ついさっきまで居た場所にけたたましい音を聞いた。


「なんにゃっ!?」


「お、おにいちゃんっ!? 上見て!」


 今も数多の犬を捌きながらの事で、すぐさま体勢を整える。そしてフォローしてくれたミルクの言に従って空を見れば、そこには急降下から切り返して空を目指すが居た。


「新手ッ!? 俺は今、何で攻撃された!? 誰か見てたか!?」


「電気だったよ!」


 すかさず異能の種類を確認すると、記憶に残る情報が勝手に組み上がって答えを出す。


 金の鳥で、異能は雷。出没地域にも違和感は無く、つまりアイツが…………!


「お前が自衛隊基地を潰した奴か!?」


 サナダさん達の同僚を皆殺しにした雷使いの魔物が、突如として乱戦に乱入して来た。


 見た目から推測すると、種類は多分カラスだろう。体毛が金色になるトリガーについてはまだ判明してないが、下手したらガルムと同じように進化個体の可能性もある。


「クソがっ……!」


 急降下攻撃イーグルダイブが失敗に終わったからなのか、一定の高度に達したカラスは待機飛行に移行して、その高度を維持したまま追加の雷撃を撃って来た。


 しかも何故か狙いが俺固定であり、こっちが手を出しづらい高度から悠々と攻撃を続ける金カラス。


 いやあの、カラスさん? なんで俺を狙うんすかね? 脅威度的には俺、このメンツでほぼ最下位なんだけど? 今なら多分、ミルクにも勝てないし。


「だぁぁあッ!? くそっ、空に芋ってんじゃねぇぞ金ピカ野郎が! 文明の利器を喰らえオラァァァアアア!」


 躱せないタイミングで振る雷撃はタングステンの大剣を空に放り投げて誘導し、その隙にフリルからライフルを受け取って反撃する。近寄る魔犬は蹴り殺しながらの対空射撃だ。


「あっぶ────!?」


 しかし、サナダさんにも聞いていたがやっこさん、飛び道具を見ると暴発狙いに切り替えるらしい。隙の少ない弱めの雷撃を乱射してライフル本体を狙い始めた。


 咄嗟に異能で水を生み出して防壁を展開したが、もたついたら手元のライフルが吹き飛んでたかと思うとゾッとする。


 いや、今のステータスならライフルが暴発しても怪我しないかもだけど、流石にそんな事を試す気にはなれない。


「鳥風情が、調子に乗るにゃよぉ!」


 何故か俺に集中する攻撃にキレたフリルが空を走る。異能で空中にイマジナリーキャットタワーでも作ったんだろうか、ジグザグと飛び映りながら空中を疾走するフリルに、流石のカラスも雷撃の牽制を諦めて更なる高度に逃げ込む。


「無駄にゃんだよぁあ!」


 しかし、フリルのサイコドライブは自分の認識する空間に無条件で道を作れる異能であり、たとえ高度を上げたって逃げ切れる物じゃない。


「喰らえにゃぁああッッッ!」


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