殲滅戦。
意気込んだは良いが、俺ってこのパーティで現状だと最弱の存在なんだよな。
「にゃっはっはっはー! 猫を舐めるにゃよ犬っころぉ〜!」
俺は暴れ回るフリルを見て強くそう思った。
いや、だってさ。広いスペースを確保して戦うなら、今のところフリルは控えめに言って無敵なのだ。
サイコドライブがあるから駐車場の広い空間を自由自在に使ってイマジナリーキャットタワー乱立からの立体機動とか平気でやるし、白虎召喚も出来るし、単純にショックサイトも鬼強いし、機動力も防御力も火力も隙がない。
ゼロ距離使用で金猪を挽肉に変え、迫り来るサメすら止めて見せたショックサイトの威力は今更語るまでも無い。そして俺達には見えず、フリルにだけ見えてフリルにだけ影響を及ぼせる巨大キャットタワーを生み出せるサイコドライブとかビビる程のチートスキルだ。もう意味がわからん。
そんな感じで、駐機場の中で大暴れするフリルは控えめに言ってラスボスだった。
白虎を纏った時の防御力もえげつないし、もう今の時点でフリルの倒し方が分からない。長距離から狙撃して暗殺とか? でもフリルって殺気とかにも普通に反応するんだよな。
「もう、フリルおねーちゃんに全部お願いしちゃっていいのかな」
「良いんじゃないか?」
遠い目をして大惨事を見守っていると、白虎を適当に犬へと突っ込ませてるミルクが白竜に乗りながら俺のところに来て、そうぼやいた。
そんなこと言ってるけど、ミルクも
俺は背後のガルムを守る使命があるけど、完全にフリーな二人はマジで鬼神もかくやと言わんばかりの殺しっぷりである。千葉の魔犬が絶滅しちゃうぞコレ。いや良い事なんだけどさ。
「…………わぅ」
「んぉ、もう大丈夫なのか?」
嵐のような猛攻を掻い潜って近寄ってきた魔犬をぶん殴ってぶっ飛ばしたところで、後ろから弱々しい鳴き声が聞こえた。ガルムだ。
「……ぁぅ」
「戦うのか?」
俺が問うと、ガルムは控えめに頷いた。まだ気力は最低レベルだが、それでも戦えるくらいには立ち直ったらしい。
「そうか。…………じゃぁ、背中は頼んだぞ」
護衛対象が復帰した事で俺もフリーとなり、バイタリティ全開で戦線に
「しゃおらぁぁあああああッッ!」
両手で握った大剣をぶん回して魔犬を両断し、さらに踏み込んで加速する。キルスコア最下位とか気にしなくて良い。ゼロよりマシなら上々なのだ。
「死ねよラァアッッ!」
最近はライフルも使ってねぇなと思いながら大剣を振り回す。今回を切り抜けたらライフル使用月間でもやるべきだろうか。
チラリと背後を伺えば、復活した味方ガルムが魔犬をぶん殴って爆散させてる所だった。その戦闘を見れば、魔犬の統率がガルムの固有能力では無いと推測出来た。あいつにも統率があるなら殺すよりも寝返らせた方が楽なはずだからだ。
となると、味方ガルムのメイン異能はストレングスで、敵ガルムのメイン異能は統率なのだろうか? それとも単に、味方ガルムが統率を使ってないだけか?
分からん。だが考えるに足る取っ掛りは手に入ったので、後で答え合わせでもしようか。
「だからまずは、この状況を何とかしないとな」
エコロケで周囲の状況を把握し、死角から俺の首を噛み千切ろうとする魔犬達を叩き斬る。お前らに罪は無いのかも知れんが、生存競争とはそもそも罪の有無なんて関係ないのだ。
「ミルク砲!」
「だからそれ止めて!? 怒るよ!?」
斬撃の中に氷槍を織り交ぜながら戦うと、ミルクからガチめのお叱りを受けた。砲口をぱっくり開いた白竜がこっち見ると撃たれそうで怖いのでそろそろ弄るの止めた方が良さそうだ。
「…………お手伝い、要るー?」
「チカちゃんッ!?」
戦ってると、背後から聞きなれた声が聞こえてビビった。振り返るとそこにはチカちゃんが居て、俺を見上げていた。
「どうしてここに!?」
「戦闘音聞こえたから〜」
気の抜ける喋り方でチカちゃんは言う。思えばコストロからそこまで遠くない場所だし、あれだけフリルとミルクが大暴れしてれば相応にうるさいのだろう。猫の耳をもってすれば、有事の際に駆け付けるくらいは造作もない事なんだろう。
「えーと、あっちはお仲間〜?」
「そう、そっちのガルムは味方! で、今見えてない別のガルムが敵!」
「りょ〜。探して来る〜」
味方ガルムの存在を確認するチカちゃんへ手短に状況を伝えれば、今も姿を隠しながらも遠吠えで魔犬を操作してるっぽい敵ガルムの探索を請け負ってくれた。チカちゃんマジ有能。
戦力的にも信用出来る斥候が登場した事により、状況はかなり楽になった。
魔犬の群れを処理するだけだと延々と集められて消耗戦になる。どっちにしろどこかでガルム探しは必要だった。
しかしチカちゃんが探して来てくれると言うならこのまま戦い続けるだけで状況は好転する。
「さぁ、もうひと踏ん張り!」
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