進化の情報。



「良く考えたら、前と条件はそんなに変わりませんね」


「ああ、そう言われれば……」


 会議を続けてると、俺とヨシダ館長は一つの気付きを得る。


 館長が言うように、俺達の取引は前回も一応は金銭的なやり取りを経て物資を融通した。


 俺の出す情報に金額を付け、その金額分の物資を融通してもらう。取り引きの骨子はそれだ。


 俺としては取り引きに応じてくれる信用が欲しかっただけなので、その後はなぁなぁになって物資を増やしたし、向こうも金額を気にせずオリジナルを融通してくれた。


 だから、今回だって形の上では同じなのだ。今度は俺が金を出して、その金でコストロが俺から物資を買う。その間になぁなぁさが無くなるだけで、実際のところは前回の取り引きと殆ど変わらない。


「では、今度はこちらが情報でも出しましょうかね。いくら払います?」


「いや、せめて情報のくらいは教えてくれよ。値段付けらんないじゃん」


 取り引きが前回の逆さと言う事で、今回はコストロが情報を出してくれるらしい。


 言うて俺は此処だと人気者なので、倉庫行って誰かに聞けばすぐ判明する情報なんだろうが、それはフェアじゃない。お互いに信用を持って取り引きしてるんだからな。


 ちなみに、連れて来たメンツはみんな大人しくソファーに座ってコーヒー飲んでる。


 フリルとチカちゃんは俺の膝の上でゴロゴロしてるけど。あぁ〜可愛いんじゃぁ〜。


「で、どんな情報?」


「魔物の進化、と聞いたら何か思い浮かびますかね?」


 ……………………マジで?


 え、待ってくれ予想の千倍ヤバい情報転がされたんだけど。


「五万サバ出す。聞かせてくれ」


「ちなみに通貨の価値は?」


「1サバでブロック栄養食一つくらいだ。生鮮を料理した弁当とかは割高で10から30サバくらいだけど」


「おおっ、お弁当があるので? 楽しみですなぁ」


 それから聞かせてもらった情報は、この世界が更なる混沌に包まれる事を予測するには十分過ぎるものだった。


「魔物が、ガチのファンタジー生物に進化した……?」


「サナダくんが見付けてなぁ」


 なんでも、レイダー潰しの合間になんとか魔犬を見付けて魔石狩りをしていたらしいんだが、その時にサナダ隊長が見付けたらしい。


 魔犬を統率する、金色の魔犬モンスターを。


 それだけなら金魔石持ちの魔物だと俺は判断するが、そいつは発見した時ただの魔犬で、交戦中に金の光がその犬を包み込んだと思ったら次の瞬間には姿形が変わっていたそうだ。


 メタモルフォーゼはそんなファンタジーなエフェクト発生しないので、仮に異能だとしても別の物だ。確かにその場面を見たら「進化」と呼べなくも無い。


「元はバーニーズだったらしいが、進化後の見た目はほぼオオカミと言って良い風貌になったらしい。しかも、その後の戦闘は明らかに苦戦して、最後は逃げられたと報告を受けたよ」


 しかも、その進化現象はその後にももう一件目撃されてるらしい。二回目の進化元は柴犬だそうだ。


「何かしらの理由で再現性がある……? しかも突然強くなる?」


「その通り。仮にそれを異能だとしても、突然の強化現象はおかしいと言うことになってな。うちではそれを魔物の進化と仮定したよ」


 それが本当ならマジで値千金の情報だぞ。


「我々は進化した魔犬をマーナガルムと呼んでる。ポピュラーなのはフェンリルかも知れんがね、金色だったものだから。君達の命名にあやかってみたよ」


「……北欧神話で『月の犬』って意味だっけか」


 確か、月を追い掛けるハティと同一視されがちなオオカミだったかな。死者をくらい空を血で塗り太陽を隠してしまうとか。


 女の巨人が産んだ子供が全てオオカミで、スコルとハティもこの血族だったんだっけ。その一族で最強のオオカミがマーナガルムであり、ハティと同一視どころかスコル・ハティの親玉的な存在とも言われてたり。


 そのスコルとハティもフェンリルの血族だーって説もあったり、もう神話は訳分からんから詳しくは無いけど、とにかく神話級のヤバいオオカミなのは間違いない。


 下手したらマーナガルムがフェンリル級とも見れるし。と言うか北欧神話のオオカミって基本ヤベー奴らしか居ねぇんだよな。


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