モヒカン。
「準備は良いにゃ」
フリルがサイコドライブで自分にだけ影響する器を作り、そこに水を貯めている。
自分にだけ影響するとはつまり、自分の異能にも影響するって事らしく、アクアロードで生み出した水を現実改変して作った器に入れておくくらいの事は可能らしい。
いやヤベーだろサイコドライブ。自分の異能でワンクッション置けば余裕で現実にも影響有るんじゃん。
そんな風に
「起爆」
トラックや瓦礫を積んで汲み上げられたバリケードの近くで熔鉄を落として水に接触させた。
水蒸気爆発を意図して、人工的に起こす為に必要な物は二つ。400度を超える
落とした熔鉄が水の中に落ちて『鉄が水の中で密閉された』瞬間、限られたスペースに一瞬で水蒸気が満ちて空気が破裂し、大爆発が起きる。
一つの空間に於ける水蒸気の体積量が限界を迎えたのだ。
空に向かって立ち上り、辺り一帯にも広がる水蒸気が晴れるまで待てば、そこには無惨な形を晒す『元バリケード』があった。
うーん、もっと威力あげれば良かったか? 個人的には跡形もなく吹き飛んでくれた方が気分よかったが……。
「まぁ良いか、通れるし」
近くの民家を囲む塀ごと吹っ飛んだりして瓦礫が邪魔だが、このくらいなら通れる。
「何事だァ!? きさ、お前ら誰だぁ!」
「まずお前が誰だよ」
バリケード跡地を越えてやっとコストロが見てる場所まで来ると、何やらモヒカン頭のヒャッハーが駆け付けてきた。爆音を聞いて来たんだろう。
そいつはパツパツの鋲付き革ジャンにダメージジーンズを着用した男で、見た目は丸っきりレイダーだ。だがまだコストロ勢である可能性がミジンコ一匹分ほどは残ってるから攻撃はしない。
ミルクは車の外に水をジャブジャブ出して準備はしてるけど。
さっきまで普通に殺してたのは、俺達に対して物資強奪の意志を見せてたからだ。コストロ勢ならそんな事しないだろ。
「て言うかモヒカンって…………」
「アッ!? なんだ今オレの事を馬鹿にしたのか!?」
「いや、お前じゃなくて髪型を馬鹿にしたんだ」
いや、モヒカンそのものにも罪は無い。モヒカンが良く似合う『モヒカンが似合わないファッション』をしてるコイツが悪い。
そんな一子相伝の暗殺拳伝承者に殺されそうなファッションしやがって。明らかに狙ってるだろそれ。
なんでモヒカンにパツパツの革ジャンとダメージジーンズを合わせた!? 言えッ!
言っとくけどな、モヒカンって普通にコーディネートしたらめちゃくちゃカッコ良くなるんだからな! パンクも似合うけどパンクと世紀末ファッションを間違えるな! お前のそれは似合ってない!
「そう、似合ってないんだよ! モヒカンを馬鹿にすんなクソがッ!」
「ナンだとテメェ!? オレのモヒカンが似合ってねぇ訳ねぇだろ!」
「ちょ、なんでヤマトいきなりキレたにゃ?」
互いにヒートアップしてお互いに銃を突きつけ合う俺達の周りに、他のヒャッハーも集まって来て拳銃を向けてくる。
「一応聞くが、お前らがコストロ襲ってるアホで良いんだよな?」
「ああ? ンなもん見りゃ分かんだろボケ--」
「あっそうかじゃぁ死ね」
聞きたい事は聞けたので、俺の合図で車内全員がクリコン使って全周囲を氷槍で薙ぎ払う。
「テメェらも超能力使うのかよクソがッ!?」
「お? 仕留めたと思ったのに避けやがった?」
全員きっちり殺したと思ったんだが、俺と喋ってたリーダー的モヒカンは腹を赤く染めながらもまだ生きてた。
「……いや、無意識でインテリジェンスを起動して避けたのか。鍛えて無くても使えはするもんな」
インテリジェンスは人が基本で持ってる魔石だ。魔石は手に入れた時に何となく使い方が分かるもんだが、人間は普段から脳を酷使してる関係なのかインテリジェンスを起動するのに手間取るのだ。
異能の効果が人間の普段通り過ぎて、異能の存在を認識しずらい。魔石や異能なんて存在を知らなかったら尚更だ。
俺がインテリジェンスを最初に感じた時だって、魔石と異能をハッキリと認識した後に「まさか……?」って感じだったしな。
「いや、だからこそか。インテリジェンスをさわりでも使えたからリーダーっぽい事やれてんだろ」
まだギャーギャー騒いでるモヒカンに、俺は車の窓を開けて手を伸ばし、指先から氷槍を撃ち出してトドメをさした。
氷槍があればそろそろライフルとか要らないかもな?
「さて、邪魔者は片付けた。今度こそコストロに乗り込むぞ」
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