ヒャッハー。
「ヒャッハァァア! 食いもん置い--」
「るせぇ死ね」
目的地であるコストロ幕張倉庫店まであとほんの少しと言ったところで、俺達は何故だか世紀末風のアホに襲われるようになった。
ぶっちゃけ雑魚だ。車の外にライフル放り投げてからサイコキネシスで操って撃ち抜くだけの簡単作業である。
なんならミルクも車の外にお水をジャブジャブ出してから氷槍乱射で手伝ってくれる。
今更この車を異能無しで襲うのが間違いなのだ。せめてストレングスだけでも鍛えて来い。
「多くない?」
「多いですね」
コストロに近付くにつれて、何故か敵との遭遇率が反転しつつある。
反転したのは『無遭遇』と『遭遇率』じゃなくて、魔犬に遭遇率する確率と
そう、なんか初期の頃に大量遭遇した魔犬並にレイダーと遭遇するのだ。
本当に、あと少しなのだ。あの大通り過ぎて少し曲がったら、すぐにでもコストロが見えるはずなのだ。
なのに、道路は所々が封鎖されてて車は思う様に動けなくなってて、大量のレイダーが彷徨いてる。
こりゃぁ、どこか近くにレイダー用のコミュニティが発生したな?
「チカちゃん。悪いけど偵察頼めない?」
「わかったぁ〜」
俺がお願いすると、チカちゃんがトレーラーから飛び降りて街に消えて行く。トレーラー内No.3の強さを誇るチカちゃんなら間違いないだろ。
車を止めて少し様子見。
「ヒャッハ--」
「死ね」
様子見の間も襲って来るレイダー。なんかもう人間を殺すのに何も感じなくなって来たな。と言うかレイダーって人間か?
人間とは、言葉を喋り、音の組み合わせによってコミュニケーションを取れる生物の事だ。
ふむ、レイダー共は…………、コミュニケーションしたか? してないな?
寄越せ! 死ね! って言う鳴き声しか口にしてない。意志のやり取りをしてない。
うん。やっぱアイツら人間じゃねぇや。凶暴化してないけど魔物扱いで良いや別に。
「ただいまぁ〜」
待つこと数分。チカちゃんがサラッと戻って来て窓からにゅるんっと入って来た。
「どうだった?」
「んーとね、コストロのね、たべもの目当てでね、敵がいるの〜」
分からん。チカちゃんが可愛いと言う事しか分からん。
俺は運転席でチカちゃんを膝に乗せて撫でてあげながら、根気よく報告を聞く。
要は、コストロに有る大量の物資を目当てにしたレイダー共がこの辺に集まって来てるらしい。そしてコストロはレイダー共と戦争中なんだとか。
コストロ幕張倉庫店、毎回戦争して無い? 大丈夫? 幕張倉庫店から弾幕戦争拠点に改名しない?
「コストロは無事?」
「うん〜」
片や拾った銃などでヒャッハーしてる馬鹿。片や異能まで手に入れたライフル持ちの自衛官。
良く考えたら勝負にもならねぇか。
「あの道路を塞ぐバリケードはどっちの?」
「レイダーだよぉ〜」
「よしオッケ分かったぶっ壊そう」
そも、足止めを食らってるのはバリケードがコストロ側の作った物かも知れなかったからだ。壊して良いなら全部壊して最短距離を行くわボケ。
「ヤマト? 近くにコストロの連中が居るかも知れないから、大技使うならちゃんとお知らせした方が良いにゃ?」
「あ、それもそうか」
俺は今から熱した鉄をサイコキネシスで浮かべ、そこにアクアロードで生み出した水を接触させて水蒸気爆発を発生させてバリケードをぶっ壊すつもりだ。
しかし、バリケードの近くにコストロ民が隠れてレイダーをやり過ごしてたら、バリケードと一緒に殺してしまう。エコロケでは周囲にレイダーしか見当たらないが、エコロケは確実に索敵出来る万能異能って訳じゃないからな。
万が一を考えると勧告はした方が良い。もしかしたらコストロ勢にハイドアウト持ちが居るかも知れないしな。
『あー、あー、マイテスまいてす……』
俺は最近知ったエアロメーカーの使い方、『拡声器モード』を使って周囲に呼びかける。この異能、そよ風を操る焼肉用煙避けじゃなかったんだぜ。
『あー、聞こえるか? ヤマトだ。新拠点が出来たので約束通りに遊びに来たぜ。今からレイダー共の作ったバリケードを爆破しながらそっちに向かうから、バリケード近くに誰か隠れてたら逃げてくれよ』
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