民間用装甲車。
結局、見付けたナイトXVは俺が貰う事になった。やったぜ。
近辺を探すと持ち主らしき人物の亡骸がコンビニの傍に転がって居たので、恐らく最強格の装甲車で物資を漁りに出たら、魔物に遭遇して殺されたんだと思う。
ナイトXVの鍵を持ってたので間違いないはずだ。
その鍵を使ってナイトのエンジンを始動すると問題無く動いたので、目的地までは吉崎家に貸し出す。吉崎家は避難所までの足が有れば良いと言うので、貸してもらえればそれで良いと言う。
海外でセレブや要人向けに売られてるイケメンビークルを手に入れた俺は、持ち主の身内から所有権を主張されてもウザいと思ったから、速攻で車のナンバーを外した。
ナンバー無しを罰する団体はもう日本で機能してないからな。
それから意気揚々とトレーラーに乗り込んで、目的地まで走り出す。
「ヤマトさん、装甲車なんて手に入れてどうするんです?」
「んぇ? いや、カッコイイじゃん?」
「…………まさか、それだけ?」
「いやいやまさか。最悪は魔物の群れに突っ込んで殺せるじゃん?」
「あのイノシシが群れの中に居たら大破しそうだけどにゃ?」
…………言われてみればそうだな。魔物に突っ込むのは止めとこう。
魔犬の中にもバイタリティの魔石持ちが居ないとも断言出来ないのだから、犬を車で跳ね飛ばして逆にコッチが大破とか嫌すぎる。めちゃくちゃレアな車やぞこれ。
ナイトXVはライフルで撃たれても大丈夫な車らしいけど、全速力で壁に突っ込んでもぶっ壊れない程だとは思えない。と言うかコンセプトが違うからな。
撃たれても走って逃げる為の民間用装甲車なのだ。自分から突っ込む為の装甲車じゃねぇ。
「まぁそのうち、使い道もあるでしょ。特出した物ってのは持ってても損は無いはずだし」
持ち物に制限があるならまだしも、フリルの個人用インベントリはまだスッカスカだし。
気を取り直して幕張へ。別に誤魔化した訳じゃないぞ。
脳内でカントリーロードを流しながら進む道は、人の遺体や引き千切られた魔犬の死骸などで溢れかえって爽やかさとは無縁である。絶好の旅日和…………、
「…………いや待て? 引き千切られた魔犬? 待て待てどんな死に方だそれッ!?」
俺は若干アクセルを強く踏んで速度を上げる。なんか周辺にやばい魔物が居そうだぞ。なんだ引き千切れた魔犬って。ゴリラでも居たのかよ。
「あるぇ? 前に通り過ぎた時は比較的平和だったんだけどなぁ?」
「…………数々の死体が転がる道が、平和ですか?」
後ろから吉崎一家が着いてきてるかをミラーで確認しつつ、比較的安全で瓦礫の少ない道でアクセルを踏む。多少の瓦礫なら弾き飛ばせるくらいにバンパーも改造してあるけど、わざわざぶつかる事も無い。
そうやって安全運転しつつ、来た時よりもヤバさが上がってるっぽい木更津に首を傾げてると、アキナに変な目で見られた。なんでや、俺変なこと言ってないやろ!
「いやマジで平和だったんだよ。ぶっちゃけアキナ助けた時の木更津はヌルすぎて拍子抜けしたくらいだぞ。なぁフリル?」
「そうにゃ〜。確かにぬるかったにゃ。上野は刺激的だったにゃあ。にゃぁ、ミルクもそう思うにゃ?」
「うーん、そうだったかも? ネコちゃん居たのも上野だし」
ほら、みんな同意してくれる。多分メインパークに残ったタクマも同意してくれるぞ。上野や鴨川に比べたら木更津は温かったって。
「上野怖すぎません?」
「やっぱ生物系の施設がある場所はヤバそうだなぁ。あとはペットの多い土地?」
「東京は終わってそうですね……」
「犬多そうだもんな、東京は……」
幸い、魔犬を捻り切って殺してるナニカとは遭遇する事も無く、無事に幕張へ抜けて来た。
もう少しでコストロ避難所だ。
「犬減った?」
「コストロの連中が狩ってるんじゃないのにゃ?」
ふむ。これなら人の生存圏はある程度取り返せそうか? いや、無理か。人が死に過ぎてる。国の体裁を整える程に生き残りが居るか微妙なところだ。
それに、今は頭数減らせてるけど、その後は? 魔物だって繁殖するだろうし、対応ミスるとそれこそ房総半島のキョンみたいになるぞ。
まぁ俺、キョンを求めて房総半島に行ったのに、まだ生きたキョン見たことなんだよな。
「さて、もう到着するぞ」
「速度落とすにゃ。レイダーと間違えて撃たれたら大変にゃ」
俺はフリルの指示に従ってシフトレバーを操作しながらアクセルを緩めて行く。
さぁて、皆は元気かな?
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