一人足りないけど。
俺達はメインパークの面々から盛大に見送られながら出発した。
しかし、旅のメンバーが予定と少し変わっている。
現在トレーラーに乗っているのは俺、フリル、チカちゃん、ミルク、アキナの五名だ。
そう、メグミが居ない。
なんでかって言うと、土壇場で家族と離れるのが寂しいと泣き出しちゃったのだ。
最初は旅に行くのにヤル気むんむんだったのだけど、見送りでケイコから抱きしめられた時、急に寂しさがオーバーフローしちゃったらしい。
まぁ、せっかく家族が居るんだし、あえて別行動する理由も無いよな。
そんな訳で、人間三名と猫二名による新しい旅が始まった。
「おーい、通してくれぇ〜」
だが、忘れてたけど鴨川から木更津に抜けるだけでもトンネルが封鎖されてたりして死んでる道が多いんだった。
俺としても無駄に遠回りするのも嫌だし、ハイエースならまだしもアレより大型の
だから普通に最短ルートを通って木更津に抜けるべく、俺はトンネルが何個か繋がってる道を選んだ。
「なんだお前らは!」
「
トラックや丸太を使ってガッチガチに封鎖されたトンネルに呼び掛けると、何やらミノムシみたいな状態のオッサンが出て来た。首を起点に布を沢山巻いてマントみたいにしてるらしい。
対して俺は、いつも通りにデジタル迷彩の戦闘服に鵺の毛皮を使った革マントを羽織ってる。これ、結局ケイコに直してもらってポンチョからマントになったわ。
多少荒っぽいデザインにして、狩人風にしてあるのがポイントだ。
他にも、戦闘服の上にチェストリグって言う装備も身に付けてる。これはマガジンポーチとかが沢山着いた戦闘用のベストだな。色々と小物が入るし、マガジンも大量に持って置けるから便利だ。
運転席に座ってるから大剣とライフルは脱装してあるけど、大剣も綺麗に作り直した物が鞘と一緒に置いてある。手を伸ばせば届く場所だ。
旅の途中は有り合わせで作ってたけど、メインパークで時間があったからジックリちゃんとした物に作り替えたんだ。
せっかくの終末世界だし、大剣も超シンプルなスラッとしたデザインから、アニメとかに出て来そうな厨二っぽい物に変えた。ふふ、パーティにガチの中学生が居るとこの手のデザインは捗るぜ。
「通行料!? こんな世の中になって金なんか要るかよ!」
「いやいや、そんな事ねぇよ? 俺達のグループが独自に流通させようとしてるオリジナルの通貨なんだが、これを払ってくれるなら俺達が物資を売れる」
「なんだっ、食料があるのか!? だったらソレを直接寄越せよ!」
トンネルを塞ぐバリケードから周囲を警戒しながら出て来たミノムシと交渉を進めるが、此処でもサバイブを流しておけばメインパークで使えるだろ。
相手のガラがちょっと悪いが、それも極限状態で暮らしてればこんなもんだろって感じもする。もしかしたら異変の前は穏やかなおっさんだったかも知れないしな。
「いーや、良く考えろって。金で持っとけば腐らねぇんだぞ? 一気に食料貰ってダメにしたら勿体ねぇだろ」
「あ? お前ら、そんなに大量に食い物持ってんのか?」
「おう、かなりあるぞ。文字通りに売る程な」
俺はカントリークラブの方にかなりしっかりとした避難所を作った事をおっさんに教え、俺が渡す金さえ有ればそこで買い物も出来ると教える。
「もちろん、今この場で俺から買うのも有りだ」
「…………通行料だったか? バリケード
「そうそう、木更津に抜けてぇんだよ。通してくれんなら、武器も売ろか? 剣も槍も弓あるし、なんなら銃もあるぞ」
「武器も有るのかッ!?」
交渉の結果、俺は5000サバ支払う事に。
ただ、ラインナップを見せつけながら「毎回
ちなみにラインナップはこんな感じ。
ブロック栄養食一つ1サバ。
お弁当、5~30サバ。
八九式、890サバ。弾薬一箱30サバ。
MP5、600サバ。弾薬一箱20サバ。
剣・槍200サバ。
弓300サバ 矢1サバ。
コモン魔石5サバ。販売10サバ。
アンコモン魔石50~100サバ。販売200~500サバ。
レア魔石1000。販売3000〜5000サバ。
基本的にこんなモンか。生活雑貨とか生理用品は物による。
「ちなみに、銃で悪さしても良いけど、ウチの避難所に居る奴らは大体全員がクソ強いからな。悪い事してると駆除されるかも知れないから気を付けてな」
「……いや、言われなくてもしねぇけど」
「そうか? 一応、どのくらい強いかって言うと……」
俺は車の側まで来て交渉をしてた男をチラッと見ながら、空に向かって手を伸ばした。さして異能コンボで氷の槍を三本ほど空に撃ち出し、飛んでたカモメを狙う。
氷槍で突然串刺しにされて絶命したカモメは当然墜落して、ミノムシのオッサンのそばに落ちた。
「ひっ……!?」
「今のは、凶暴化した動物から奪った超能力みたいなもんだ。オッサン、ナイフ貸してやるからその鳥の心臓か脳みそ開いてみ?」
「な、なんで俺がそんなこと……!」
「良いから良いから。後悔はさせねぇからさ」
こっちが人を即死させられる様な異能を持ってると分かったオッサンは、ビビりながらも俺が言う通りにして受け取ったナイフでカモメを捌いた。
そして、死んだカモメの中から魔石を見つけると「……なんだこりゃ?」と困惑する。わかるぅ〜! 俺も最初そうだったぁ〜!
フリルにペス君を捌けって指示された時はビックリしたもんな。それで、魔石見付けて「なんでござるかぁ」とか言ってたもん。
「ソイツの事を俺らは魔石って呼んでる。それを良く洗ってから飲み込むと、俺が使ったみたいな超能力が手に入るぜ。その超能力の事を俺は異能って呼んでる」
「………………ほんとか?」
「ああ、嘘じゃない。なんなら今自分で使ってみ? 記念にそれはプレゼントするぜ」
一応、今俺が使った異能が水を生み出す「アクアロード」って物と、水を操作する「クリアコントロール」って二種類であり、そのカモメから出て来た魔石はクリアコントロールの物だと説明する。
俺はミネラルウォーターのペットボトルをオッサンに渡して、その水で魔石を良く洗わせる。それからオッサンは意を決して魔石を口に入れて飲み込むと、多分体に馴染む時の反応に自分の腹をさすって不安そうにする。
「…………ん。もうそろそろかな? ほらオッサン、今手に持ってるペットボトルの水を操作してみ? 魔石が体に馴染んだ時点で、何となくやり方は分かるはずだから」
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