少しづつ。



 マイドリームを一つ叶えるため、避難所の運営を始めた。


 俺の運営方法は、無限の物資と言う資本を元に労働力を確保する方式であり、避難民は自ら選んで自ら仕事をして、まずお金を挟んでから欲しい物資を手に入れる形なので不満は少ないだろう。


 人より働けば人より多く食べれる環境なのだ。文句が有るならもっと働けば良いだけだし、働かずに文句を言うと働いてる人から白い目で見られるから。


「よし、ショップの整理終わり。これで本格的に動き始められるぞ」


 ゴルフ場のホテルなのでショップにはゴルフに使う道具ばっかりなので、全部片付けて俺のショップにする。


 さぁ、ここから無限の物資で無限のスローライフが始まるぞ! いやマジで楽しみだ。


 フリルとミケちゃんが手伝ってくれて、品物を並べて値札を貼っていく。と言っても、基本的に空箱などを使ったサンプルだ。その内、避難民以外にも利用者が増えていく予定なので、どんな奴が居るか分からない。盗まれない様に並べるのは基本的にサンプルだ。


「それと、クエストボードだな」


 物資トレーダーと同じくらいやって見たかった冒険者ギルド的なシステムも、この際だから一緒にやる。俺がクエストって形で仕事をはりだし、お金が欲しい誰かがクエストをやる。


「おや、早速ですか。どれどれ、どんなお仕事があるんです……?」


 店の準備をしてると、白髪のおじいちゃんがやって来た。名前は知らんが、歳の割りにガタイが良くて人当たりの良いじいさんだ。


 今日は俺が此処のリーダーに就任した祝いって事で物資も放出して宴会を開いた。それに老いも若きも関係なく支度金に500サバを支給して、お仕事とかに慣れないうちはこれで生活してくれって言ってある。


 俺のその対応が良かったのか、元々此処に居た避難民からはおおむね受け入れられてるし、数人居る子供からはやっぱり大人気だ。


 無限にお菓子出せる人ってだけで子供のヒーローになれる。


「今のところクエストは四つですよ。特定の物資探索と、パーク内に入り込んだ魔物の駆除。それに施設の清掃と、お弁当の納品。一つ目の物資探索がクリアされたらもっと増えるんですけどね」


「…………ふむ。戦える人と、戦えない人の為に差別化してあるんだね?」


「まぁそうですね。探索クエストだけ発行して、戦える奴だけ稼げたら不満が溜まるでしょう?」


「うんうん、いや、思ったよりもちゃんと運営してくれるみたいだね。これなら安心出来るよ」


 名も知らぬ白髪のじいさんが、「じゃぁせっかくだし、清掃のクエストをやってみるよ」と言ってホワイトクエストボードの紙を取る。


 ちなみに、施設清掃のクエストは大浴場や食堂など、公共の場だけの話しだ。

 

 それぞれが陣取ってる生活空間については自分でやって貰う。そこは元客室とは言え、もう此処はホテルじゃないからな。自分の部屋の掃除は自分でやってくれ。


「にゃぁ?」


「ん? ああ、欲しい物資はセメントとかの建築資材だよ。パークの外周をまるっと壁で覆いたいんだ」


 フリルにこのクエストなに? って聞かれたので答える。俺が最初に発行したクエストは、俺が欲しい物資の回収クエスト。持って来てくれたら割増で買い取るよってお仕事だ。


 欲しいのはセメントやベニヤ板など、建築に使う資材。流石に持ってないからな。持ってくれば良かったわ。


「それと、避難民の女性陣とかにもお仕事要るじゃん? お弁当作って貰ってそれをまぁまぁの値段で買い取って、それを複製して売れば手軽に料理が買えるようになるし、俺はラインナップ増えて嬉しいし、女性陣もお仕事あって助かる。三方良しになるだろ?」


 三方良し。経営哲学の一種だったか? 本当は、商売に於いて売り手と買い手が幸せになるのは基本の事で、さらに社会貢献も出来たら良いねって感じだったか。


 今回は売り手と買い手と仕入れ先全員嬉しいって意味で使ったけど、避難所内の経済と治安向上は社会貢献か? まぁなんでも良いか。


「にゃぁ〜?」


「ん、そうだよ。子供達はお小遣い支給するよ。働く子には追加で払うけどさ」


 ろくに稼げない子供は飢えてしまえ、なんて俺は言いたくない。いや避難所の外ならワンチャン言うかも知れないけど、比較的安全な此処ならそのくらいの「甘さ」は許されるだろ。


「さて、じゃぁ俺も出るかね」


「にゃ?」


「にぃ……?」


「いやいや、ほら俺ってそもそも狩りで新鮮な肉が食いたかったから千葉まで来たじゃん? 行くなら今のうちかなって」


「……………………にゃぁぅ」


「はい。さーせん、残ります」


 初日からお互い慣れてないネコと避難民に売買を任せるなって怒られた。


 俺は物資トレーダーをやりたかったけど、同じくらい魔物狩りもやりたいのだ。お肉食べたいのだ。だからインベントリが使えるお猫様達に店番を頼む事もあるよってお願いしてたんだけど、「初日からは止めろ」ってフリルに怒られた。


 少なくとも、俺がサポートしてお互いに慣れたら店番も任せられるだろって。


 はぁ、俺がキョンの肉を食べれる日はまだ遠いらしい。


「なら、どっちも取ってこようか?」


「おお、レオか。おはよ」


「おう、おはようリーダー。ボスとチカもおはよ」


 俺がキョン肉食べたーいって思ってると、レオがフル装備でやって来た。顔色は良いからゆっくり寝れたみたいだな。こざっぱりしてるから風呂にも入れたんだろう。


 ちなみにだが、ボスってのはフリルの事だ。


「で、なにを取ってくるって?」


「ん? セメントが要るんだろ? あとキョンとか言うシカの肉だっけ」


「…………あ、そっか。キョン肉食いたかったらキョン肉を持って来いってクエスト出せば良いのか」


「そりゃそうでしょ」


 レオとフリルから「馬鹿なの?」って目で見られた。辛い。フリルも一緒だから何だとコノヤロウって返せないのが辛い。


「んで、セメントは一袋で300サバで? ……キョンは?」


「キョンは、どうするか。山に行くから普通に魔物があぶねぇし、でも大量に居るらしいから高く設定すると戦闘職が簡単に稼げて不満出るかもだし」


「危ない仕事が金額高いのは別に良いと思うけど」


 ……………………それもそうか。


「よし、じゃぁ、キョンは一頭で100サバ」


「…………高いの? 安いの?」


「これ、魔石の値段は別だ」


「なるほど」


 俺も手探りでやってるから、この辺グダるのは許してくれよ。


「うん、分かった。じゃぁどっちも受けるね」


「まいど!」


 こうして、俺の物資トレーダー生活が始まった。


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