本当に飛ぶんじゃねぇよ!
今どきのサメは、空だって飛ぶ。
サメは時空を超える。
奴らはハリケーンに乗ってやってくる。
そんなアホな格言…………、格言? まぁ格言で良いか。そんな格言が日本で生まれて久しい。
しかし、声を大にして言いたい。
「だからって本当に飛ぶんじゃねぇよッ!?」
鴨川入りした俺達を出迎えるのは、目測で3メートルを超える大きさの『空飛ぶサメ』だ。
意味が分からない。サメが飛ぶのは映画の中だけにしてくれ。て言うかその映画だって海外じゃウケてないんだぞ!? あれ見てるの85%が日本人ってデータが有るんだぞ!
「ああ、だから日本に居るんですかそうですかバカヤロォッ!」
「ヤマトさん落ち着いて!?」
真上から補足されては逃げ切れない。だから俺はサメに向かってライフルを撃ちながら仲間のそばから離脱した。
非戦闘員を抱えたまま、あんな訳の分からないバケモノと戦えないから。
「なのになんで着いてきた!? タクマは俺の中で非戦闘員だぞ!?」
「いやいやいや戦いますよ! …………いや、あのっ、ちょっと速度落としてくれたら助かりまっ」
「いや戻れよ!? 異能育てねぇからそうなんだよ!」
サメはちゃんと俺を追って来てる。残ったメンバーはネコと猫が守ってくれるだろう。
俺はいつも通りにフリルと共に駆け出して、街並みを猛ダッシュで走り抜け、その後ろをタクマがひーこら言いながら着いてくる。
「て言うか何あれ!? ホオジロザメってやつ!? 海からわざわざお越し頂いちゃったの!?」
「たぶん水族館からですよ! ここ鴨川ですから!」
「……ああ! シーワールドかッ!? --ってあぶねッ!?」
空から大口を開けて突っ込んで来るサメをエコロケで察して回避する。そして俺の代わりにどっかの民家がお亡くなりになったが、エコロケで読む限り誰も居なかったのでセーフ!
振り返りざま、走ってる速度を殺さない様に軽く跳躍しつつサメに向かってライフルを撃つが、何処からか現れた水が氷の盾となって銃弾を防いだ。
「アクアロードとクリコン持ち!? じゃぁ飛んでる異能はなんなんだよちくしょう! どれだけレアな異能持ってんだテメェ!」
仕返しとばかりに氷の槍が飛んで来るから同じ技で相殺する。しかし、どうやら異能の成長度合いは向こうの方が強いらしく、押し負けて氷槍が何本か相殺に失敗する。
「クソがッ」
ライフルを左手に持ち替え、右手に蛮刀を抜いて氷槍を弾く。その隙にフリルがパイロキネシスを撃ち込んで目くらまし。
「普通に強いなアイツ!? 流石ホオジロザメ!」
「あ、いや、多分あれホオジロザメじゃないですよ。ホオジロザメの飼育は難しくて、世界中のどこの水族館も今はホオジロザメの飼育は--……」
「ゴメン言ったの俺だけどぶっちゃけ種類はどうでも良い!」
そっか。ホオジロザメじゃないのか、うんうん。…………で? ってなるよな。あれがホオジロザメじゃないからって、アレが強い事には変わりないんだし。
可能な限りハイエースから離れようと足を動かし、ホオジロザメじゃ無かったナントカザメ君をライフルで挑発しながら逃げる。
俺達を食う為にもう一度空に飛び上がったサメの視界から逃げ過ぎない様に気を付ける。離れすぎてハイエース狙われると面倒だ。ネコが居るから大丈夫だとは思うが、ちびっ子共を無駄に怖がらせる必要も無い。
「や、ヤマトさん!」
「なにっ……!?」
「あれ、多分クロヘリメジロザメです!」
「だから種類はどうでも良いんだってッッ!」
何処から突っ込めば良いんだ!? お前なんか妙な事に詳しいよなって言いたいし、実は天然だよなお前って突っ込みたいし、お前敵キャラの解説するために着いてきたのかって叫びたい。
「にゃぁ!」
「フリル!?」
走る俺らの後ろ、フリルが突然立ち止まってサメを見据えた。
クロヘリなんとかサメと言うらしいソイツは、立ち止まったフリルを見て狙いを定めたらしい。
「フリル! 流石に危ねぇから!」
何か策が有るんだろうとは思うが、立ち止まるのは流石にダメだ。何かしらの方法で仕留めても、その瞬間に敵がピタッと止まってくれる訳じゃない。
あの質量が猛然と突っ込んで来るんだ。仕留めた後にも保険がなければ、轢き殺されてしまう。体長3メートル越えの巨体は伊達じゃない。
「フリ--……」
「にゃぁぁあッッ……!」
しかし、俺の心配を笑い飛ばすようにフリルがやった。
--グシャッッ…………!
フリルに突っ込んだサメが、フリルの目の前で、まさにピタッと止まって潰れて死んだ。
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