異能使い。
「…………で、お嬢さん達は無事かな? 助けは要る?」
レイダー五人を瞬殺した俺は、とりあえず目的の女の子二人に安否を確かめる。
いきなり強姦されそうになって、その後もいきなり五人をあっという間に殺して見せた完全にヤベー奴に話しかけられる。女の子二人に取ってはもう許容量を超えたのだろう。
「…………きゅぅ」
「はぅ……」
真っ青だった顔色そのままに、二人ともほぼ同時に気を失った。
「おっと」
「にゃ」
そのままだとコンクリに頭をぶつけると思ったからサイコキネシスで服を掴んで倒れるのを阻止した。そっと抱き留めるのがラノベ主人公流かも知れないが、生憎とここは現実だ。そして俺は主人公って柄じゃない。
最初、女の子助けるの渋ったくらいだしな。もう欲しい人材は金田一家で充分だと思ったし、ネコも居るから尚更だ。これ以上の仲間は正直要らない。
「ふむ、中学生くらいかな? 動き易くて丈夫そうなジャージに、ナイフとバック。…………うん、探索を意識した装備だな」
少なくとも、何となく惰性で生きてる感じがするタクマよりは即戦力感がある。これ以上の仲間は要らないが、だからって切り捨てる程の無能にも見えないな。
「連れて帰るか? ……おっと犬っころ」
悲鳴を聞いて集まって来てた魔犬も、俺とフリルの気配を感じて半数以上は逃げ去り、しかし頭が悪いのか自分の方が強いと思ってるのか、少数の犬はそのまま襲って来た。…………ので、取り敢えず射殺した。やっぱ銃器は便利だぜ。
「とりあえず、レイダーの持ってた銃を回収して、女の子二人は担いで--」
助けた女の子をこのままにすると、魔犬に食われて死ぬだろうと思った俺は、二人を担いで車に戻ろうと手を伸ばした。
その瞬間、
--ガッ……!
エコロケが俺に向かって飛んでくる飛翔物を捉え、俺はインテリジェンスをブーストして
「……石?」
「お前ぇえッ! 俺の姉ちゃん達に何しやがったー!?」
飛んで来てたのは、誰かに投げられた瓦礫の破片。そしてそれを投げた人物が、民家の影から現れて
見てくれは、タカシよりは大きく見える小学生か中学生くらいで、来ている服は女の子達とお揃いのジャージだ。セリフからも分かる通り、多分知り合いなんだろう。
しかも、
「おっ!? 早いなお前! もしかして異能使い
「ぶっ飛ばしてやるぅううううッッ!」
少年はストレングスをブーストしながら俺に肉薄、そして背負ったリュックサックからデカいバールを取り出して横薙ぎにして来た。
いや、強いぞこの少年!? ちゃんと異能が育ってる動きだぞコレ!
「--だが残念、俺の方が育ってる」
「んなぁッ!?」
手に持った蛮刀を落として振るわれたバールを左手でバシッと掴んで、そのまま右のグーパンで少年の頬をぶん殴って拳を振り抜いた。
「んぎぴぃ--!?」
「悪いな少年、勘違いとは分かってるが、襲って来るなら多少の痛い目は見てもらう」
「…………にゃぁ〜、にゃぅ」
殴られて吹っ飛んだ少年に追撃しようと、俺が一歩踏み出した時、フリルが呆れ交じりの溜め息を吐いてから俺のズボンの裾を噛んで制止した。その視線は「止めてやれよ。事情は分かってるだろ」って言ってた。
…………まぁ、フリルがそう言うなら。
俺達以外に、初めて最初から異能を使いこなしてる人物を見てテンションが上がっちゃったのは否定しない。ちょっと不貞腐れつつも拳を解いた。
それからフリルは更に溜め息を吐いて、吹っ飛ばされて民家の塀に激突して頭クラクラしてる少年に近付いて、その顔に可愛い肉球をペタリとくっ付けた。
…………ぐっ、あの肉球は俺のなのにっ!
凄まじい嫉妬の念が浮かび上がるが、多分メタモルフォーゼを利用して少年の治療をしてるんだろう。臓器の位置を変えたり増やしたり創造したりって使い方は難易度が高いが、腫れや裂傷を治すくらいならそこまで難しく無いようだ。
最近、フリルとネコが良く喋ってるのを見かけるが、あれはもしかしたらメタモルフォーゼ持ちの先輩として、そう言う使い方を教えてあげてるのかも知れない。
「にゃぁ」
「…………ハッ!? え、あれっ、痛くないっ?」
「おう、気が付いたか少年。とりあえずフリルに治療のお礼はしとけよ」
「……あ、あんた! 姉ちゃんに何したんだ!」
「話しを聞かねぇガキだなぁ」
すぐ暴れようとする少年を、フリルがどうやってか抑えてる。それどうやってるの? サイコキネシスで服を抑えてるの? それともメタモルフォーゼで体が動かない様にしてるの? 分からん。とりあえずフリルに逆らっちゃダメってことは理解した。
「あのな、良く見ろよ。その辺に転がってる死体を」
「……な、なんだ!? お前、殺したのか!?」
「見りゃ分かんだろ」
俺は動けない少年に対して、懇切丁寧に状況を教えてやった。
まず女の子二人のウチ、一人が上げた悲鳴を聞いて助けに来たこと。到着した時点で女の子二人は男にのしかかられてて、もう少しで酷い事をされる寸前だったこと。そして女の子に乱暴してた五人組を瞬殺して、それを見てたショックで気を失った女の子を保護しようとしたこと。
証拠はあんのかよって小学生みたいな事を言う少年に、俺は銃を突き付けて「今お前を殺してないことが証拠だな。俺が悪者だったら、今頃お前は撃ち殺されてるよな?」と伝えた。
誰が悪く、誰が助かって、誰がそれをやったのかを理解した少年は、物凄く嫌そうな顔で、しかしちゃんと、渋々ながら頭を下げてきた。
「…………勘違いして、ごめんなさいでした」
「まぁ、フリルに免じて許してやるよ」
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