そこは木更津。
ふと思う。
「今頃、北海道とか地獄だよなぁ〜」
元々、野生に熊とか居る場所だ。そんな所でこの異変。いやぁ行きたくねぇなと思っちゃうよね。
旭川動物園とかにも、色んなヤベェ奴が居たはずだ。シロクマとか、オオカミとか、色々。
「ヤマトさん。確かに千葉には熊なんか居ませんけどね、代わりに猪も猿も居るんですよ。どっちも結構危ない動物です」
「ああ、確かに猪とか魔物化してたら強そうだ。猿も野生のは攻撃的なうえに残酷で結構ヤバいって聞くし」
時速20キロのトロトロ運転で、数日かけてやっと辿り着いた
「…………で? 俺はどこの山に行けば良いの? こんなに山が多いとか聞いてないんだけど」
「50近く有りますからね」
「半島一つに詰め込み過ぎじゃない?」
目的地に来たは良いけど、今度は山が多過ぎて何処に本拠点を置けば良いのか分からなくなってる俺が居る。
千葉県の山が多過ぎるッ! なんでだよ! 意味不明なくらい多いぞ! 地図とか見ても「いやコレもう一個の山で良いじゃん。なんで分けたの」って言いたくなる様な密集具合だ。
「まぁ、意外とあっちこっちに国道通ってますからね。結構このまま、車で動けますよ」
「それは助かるけどさぁ」
動けるのは良いの。でもその動いた先にある目的地が決まらないの。千葉県マジで山多過ぎ。
木更津の滅びたコンビニ前で車を停めて一休み。皆が思い思いに休んでる間に俺もタバコを吸って一服しつつ、タクマとヨシオに目的地のご相談をしてる。
「ヤマトさんはどんな山が良いんです?」
「んーと、深い山? キョンが沢山居る山が良いな。猪も魔物化してたら美味そうだし、やっぱ緑が深い方が獲物居そうじゃん?」
「なるほど。だったら一回、国道抜けて鴨川の方に行きますか。それから
「妙見山のちょっと北くらいに
「どれどれ……?」
俺は山の地図とか全然見れないので、二人にお任せしてしまってる。
手持ち無沙汰を感じてちょっと周囲を見れば、中々人の気配が強い場所だと思う。生き残りが多そうだ。
最悪は生存者に聞けば良いかも知れない。地元民だし詳しいだろ。
「にぃ……!」
車に寄りかかってタバコを吹かせてたら、頭にずっしりとした重みを感じた。この鳴き声はチカちゃんだな。
「どうしたチカちゃん。構って欲しいのか?」
「にぃにぃ〜!」
頭の上に乗ったチカちゃんを撫でながら、何やら前足で指し示す方を見れば、民家の窓からコッチを見てる生存者が居た。何となく手を振ってみるとピシャッと窓を閉められ、ちょっと傷付いた。なんやねんチクショー。
「で、どうします? 一旦鴨川まで抜けますか?」
「もう任せる。俺には何も分からん……」
「ははは、なんなら運転も変わりましょうか? 僕は言うほど何も出来てませんから、運転くらいは」
「それは助かりますけど、ヨシオさんの本領は拠点を決めた後ですからね。バッチリ美味しい野菜を作ってくれればそれで良いんです」
目的地も決まり、また皆で車に乗り込む。
今回はヨシオが運転してくれるって言うので、俺はネコの方に乗ってみた。よろしくなって背中を撫でると、嬉しそうにグルグル鳴きながら尻尾で俺の腕をコショコショしてきた。
ストレングスで力が強いのもあるけど、それ以前にキャリーのハンドルに巻き付けたうえで先端が伸びて来たのでちょっとビックリする。
やっぱコレ、メタモルフォーゼかな。
実はペガサスの魔石、確認してないんだよね、俺。
解体しながらネコに内臓食べて良いぞ〜ってポイポイ渡してたら、間違って魔石抜く前の心臓も渡しちゃって…………。
「でも、そうか。メタモルフォーゼって治療にも使えるし、シールドとメタモルフォーゼで、ネコは完全に聖職者ポジに居るな」
メタモルフォーゼは自己の肉体改造を行う異能だけど、接触時に限って相手にもささやかな肉体改造を施せる。それを利用して傷を塞いだりして治療にも使えるのだ。
その他にも、仲間の体を少しずつ筋肉増やしたり骨格を矯正したり、強化や接骨も出来る。俺は筋肉増やしてもらってたりする。毎日ちょっとずつだけど。
肉体改造は失敗すると怖いから、ゆっくり慣れていこうってフリルと相談してあるのだ。大事な事なので何回でも言うぜ。
「…………あ、動いたな。ネコ、追いかけよう」
ネコと戯れてる間にハイエースが動き始めた。その後ろをネコに追い掛けてもらい、俺達は鴨川を目指す。
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