出発の準備。
いやにユキナが懐いてくるコストロ生活二週間目。
消費されてた食料品や必需品の類は
そして物資補充の代わりに、サナダ隊長くんを初めとした自衛官さん達が八九式の整備をしてくれて、手入れの方法も教えてくれた。なかなか得難い時間だった。
今更だけど、俺が八九式を持ってる事に対しては「こんな世の中だしね」って事で文句は言われてない。その口止め料って訳じゃないけど、弾薬はマジでたっぷり用意した。
「持ってく物資はこんなもんか?」
「にゃぁ?」
「うん。多分大丈夫だと思うんだが……」
「…………えっ、ヤマトおにーちゃんって、フリルちゃんとおしゃべりできるの?」
「おう。フリルとだけな」
フリルを抱っこしながらユキナをおんぶして、その状態で物資確認をする俺。フリルと会話してたらユキナに突っ込まれるけど、俺もなぜフリルと会話が成立してるのか分かってないんだ。聞かないでくれ。
「これだけ持って行ければ充分だよね?」
「にゃぁぅ」
「だよね、良かった」
「…………ほ、ほんとにおしゃべりしてるっ」
リアカーの積載量じゃ足りなかったから、一度リアカーをバラしてからコストロ内にある様々な商品をバラして組み込んで、ネコ専用の大型キャリーカートを作り上げた。パーツが足りないなら普通に外へ探しに行った。
近くに東京インテリーとかカーズ電気とか色々あったので、探せば割りと何でも揃った。
結果、元のリヤカーの六倍ほどの積載量を誇るネコ専用機が完成した。
更に、コストロの駐車場に放棄された持ち主不在の車から一台拝借して改造した。ネコと併走しながら旅をする予定だ。
拝借した物の車種は普通にロングタイプのハイエースだ。恐らく何かしらの業者が使用してたタイプで、八人掛け出来る広さが有るのに座席を減らして五人しか乗れなくなってる。その分、詰める荷物の量も相応に多くて、大量の物資を持って行けるだろう。
犬に凹まされるのはムカつくから、追加装甲を溶接して装甲車みたいにしてある。ちなみに車は店内に運び込んでから物資の積み込みをしてる。外だと犬とカラスがウザイからな。
フリル、ミケちゃん、チカちゃん、そしてネコが食べる為のキャットフードはドライもウェットも充分に用意した。この充分にって言うのは、主に種類の話。一袋オリジナルが有れば複製出来るから、物資は基本的に量よりも種類を優先した。キャットフードならバリエーションだな。
一応、オリジナルが一つだと何かあってダメになったら困るから、予備も含めて二袋ずつ用意してある。
それから勿論お米や缶詰なんかの人間用食糧も大量に。お菓子も可能な限り手に入れてきた。ミルクがチョコレートに喜び過ぎて、未だに機嫌良いもんな。
衣類や生理用品も用意して、便利グッズやキャンプ用品も更に充実。流石に生鮮はちょっと難しかったが、保存性の高い芋とかは何とかなった。
芋は保存が難しかったら植えて増やしちゃえば良いしな。種芋用じゃなくても、病気にさえ気をつければちゃんと育つし。種芋ってあれ、病気の心配が無い選別された芋の事であって、特別な品種って訳じゃないからな。
野菜の種とかも結構手に入れたし、そもそもヨシオ一家が種を結構持ってたから野菜はあまり気にしなくて良さそうだ。居を構える場所を見付けたら、全力で農業をサポートして美味しい野菜を手に入れるぜ!
今更だけど、ヨシオ一家の苗字は
もっと言うとタクマは
「おや、ヤマトさんは物資の確認ですか?」
「ん? ああ、サナダさんか。ネコもお疲れ様」
「ぐるぅあ〜」
俺がハイエースとネコ専用機に積んだ物資を確認してると、周囲警戒と魔石集めに出掛けてたサナダ隊と、その補佐の為に一緒に行ってたネコが帰って来た。
「魔石の集まり具合はどうです?」
「順調ですよ! ネコ様のお陰でもう魔犬も怖くないですし、ヤマトさん達には感謝してもしきれません!」
「ホントですよね。もう、物資が減ってく様子を見ながら死を覚悟する日々が遠い昔の様で……」
「おネコ様の異能が頼もし過ぎて負け知らずだし、今までの苦悩が嘘みたいですよ」
「ヤマトさんのお陰で弾薬の減りを気にしながら戦う必要もありませんし」
サナダ隊長くんが喋ったのを皮切りに、サナダ隊の皆さんが口々にお礼を言ってくれる。フリル達も頑張ってるんだけど、やっぱ物資を増やせる俺と、見た目のインパクトが強過ぎるネコが注目されるみたいだ。
ガチバトルしたら多分フリルの方が強いと思うんだけどなぁ。
「あと一週間で俺達居なくなりますけど、魔石は間に合いそうです?」
「その日を迎えたくは無いですけど、魔石は本当に順調ですよ。今日なんかコレ、ヤマトさんが言うアンコモンって奴が手に入りまして。ああそうだ、これがどんな魔石なのかをヤマトさんに聞こうと思ってたんでした」
「おっ? どれです? 俺が知ってる奴かな」
彼が胸ポケットから取り出したアンコモンは二つあり、エコーロケーションとクリアコントロールだった。マジかどっちも超強い魔石だぞ。いや、強くない魔石を俺は未だにエアロメーカーしか知らないな。エアロメーカーはマジで焼肉の煙を散らすくらいしか使い道が無いゴミ魔石だもんな。俺の手元にもめっちゃ残ってるよ。
「エコロケもクリコンも結構強い魔石ですよ。クリコン……、クリアコントロールはあれです、ウチのミルクが皆さんのお手伝いをする時に使ってる異能です」
「アレですか! 水を操って凍らせて、氷の槍を飛ばせる異能ですよね!」
「それですそれです。水の生成はまた別の異能なんですけど、水さえその場にあればかなり強いですよ。川の近くで戦えば、魔力が無くなるまでは無双出来ます」
「いやぁ楽しみですね! …………で、コチラは?」
「こっちはエコロケ。エコーロケーションって魔石です。効果は名前の通りで、音波の反射を知覚出来るようになる異能ですね。地味ですけどコレも強いですよ」
「ほぉ、エコーロケーションですか…………」
「取得するとパッシブで周辺の状況を知覚出来るようになるので、めちゃくちゃ不意打ちに強くなりますし、意識して能力をブーストするアクティブな使い方をすると、かなり広い範囲を索敵出来るようになります」
「めちゃくちゃ強いじゃないですか!?」
「だから強いって言ってるじゃないですか」
一応、俺もクリコンはまだまだ欲しい異能だったからドロップ先を聞いてみた。俺の場合は動物園でペンギンを虐殺した産物だからな。異能強化のために追加で飲まないで取っときゃ良かったぜ…………。
「へぇ、水鳥が出したんですかこれ」
「ええ。何故か近くにウミネコが居まして」
「あー、まぁ何故かウミネコが内陸に居たりしますよね。俺も昔、何故か埼玉県に居たウミネコを見ましたよ」
「…………海が無い県の筆頭じゃないですか。なんでそんな場所に」
雑談をしながら、お互いに欲する情報を交換する。ああ、俺が知ってる限りの魔石情報も渡しとくか。模様と効果と名前付きでメモってるアレ、写して置いてこう。もしかしたらコッチに戻ってきた時に、俺の知らない魔石のメモとか増えてるかも知れないし。
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