コストロ。



 新しい仲間が加わり、江戸川を超えて船橋へ。


 そこから更に東へと進み、ヨシオの言う通りに新習志野を抜けて進むと、目的地のコストロ幕張倉庫店があった。


 倉庫に荷積みの状態で品物を置く事で人件費をギリギリまで削る方式によって、ビックリする程のディスカウントを達成したコストロホールセール。その日本支部の一つは、その名前にたがわぬ巨大な倉庫だった。


 そして、タクマの予想通り、既に占有してる生存者のコミュニティも存在してた。


「うわ、戦争かよ……」


「おじちゃん……、あれこぁい……」


「怖いなぁ。うん、滅ぼすか」


 辿り着いたコストロホールセールは、まぁ一言で表すと『戦争状態』だった。


 こんなご時世だ。その辺に居た犬や猫が人を殺す化け物となってどんどん強化されていく地獄みたいな世界になって、もう警察や政府なんて当てにならない。


 そんな情勢になると必ず現れる存在、火事場泥棒。


 要はモラル守ってても仕方ない時代になったから好きにやろうぜ! って堂々と店や民家へ押し入って武力ゴリ押しの窃盗を行う輩のことだ。いや、コソコソした火事場泥棒も居るのかも知れないし、そもそも語源が指す事柄も違うのかも知れないけど、俺のイメージで言うと火事場泥棒ってそんな感じ。


 あえて分類するなら俺達が『生存者サバイバー』で、奴らは『略奪者レイダー』だろうか。


 そして、そこに「コストロに大量のが居ると知った犬の群れ」と、「レイダーと意気投合する魔物化した人間」なんてカオスな存在も合流して、コストロに避難してる人達と外部勢力が三つ巴の熱いバトルを繰り広げていた。


 その様子を口にすると、やっぱり『戦争』以外に思い付かない。コストロの巨大な駐車場で戦争が起きてる。


 人間食べたいワンワンがレイダーを襲いつつ、コストロへの侵入も試みる。


 人間食べたいし女を犯したいし食い物も欲しいレイダーと魔物化した人間……、グールとでも呼ぼうか。レイダーとグールは襲って来るワンワンを殺しつつコストロを占拠しようと猛攻撃。


 そしてコストロ避難民は、そんなクレイジー達を前にして一致団結。精一杯の抵抗を見せてる。


 人間はコストロ側もレイダーも銃を持ってて、普通にバンバン発砲し合ってるのが日本情緒ゼロで笑いそうになる。


 うん、やっぱ戦争だわ。ここは紛争地帯か? 平和な日本はどこへ消えてしまったのか。


「タクマ、ヨシオさん。これ任せます」


「…………分かった。もう、綺麗事を言ってられる状況じゃぁ無いんだね」


「頑張ります……」


 俺はタクマとヨシオにイミテーターでコピーしたライフルと弾薬を渡した。これで援護してねって事だ。


「ネコはここで待機。皆を守ってくれ」


 シールドって言う無二の異能を持つネコに、非戦闘員を含めたタクマ達後方要員の防御を託す。何も言わずにただ頷くネコは、もう立派なパーティメンバーだ。マジこいつ仲間に出来て良かった。


「フリル、ミケちゃん、チカちゃん。悪いけど手伝って」


 既に殺る気満々のフリルは、四挺の複製ライフルをサイコキネシスで浮かべながら短く鳴いてくれた。予備マガジンとかも浮いてて殺意がマシマシだ。


 ミケちゃんとチカちゃんもボッボッボッとパイロキネシスを吹かして殺る気アピール。クリアコントロールで水も浮かべてて氷槍の残弾もバッチリだ。


「ちびっ子達は目を瞑ってろ。タカシも良い子にしてろ」


「…………うん」


 準備は大丈夫そうだと思った俺は、タカシ少年の頭をグシグシ撫でた後、背中から右手で大剣を引き抜き、左手にライフルを持つ。リロードはサイコキネシスでやるから両手が塞がってても大丈夫。


「よし、行くぞ」


 吶喊とっかん


 左手のライフルで弾をばら撒きつつ、俺の存在に気付いて反撃して来る奴らの弾を大剣を盾に防いでく。悲しいことに、弾がコストロの方からも来てるんだよな。味方なのに…………。


 もうコストロごとぶっ殺しちゃおうかなって物騒な考えが頭を過ぎるけど、なんかと我慢してまずは犬の処理に向かう。


「…………なぁ、見えてんだよレア物!」


「--ギャンッ!?」


 犬の群れに突入して大剣を振り回し、地味に殺害数キルスコアが高い赤色・・の犬・・を頸椎ぶった斬ってキッチリ殺す。


 さっきから銃火に紛れてちょいちょい人が燃えてるのは見えてたのだ。絶対パイロキネシス持ちの犬だコイツ。


「ォルぅあッッ!」


 そして、どうやら赤い犬が群れの頭だったらしく、ぶっ殺してから二、三匹つついたら犬共が潰走かいそうした。背後からフリル達の援護もバンバン刺さってるし、格の違いを思い知ったんだろう。


「ンだよテメェ! 引っ込んでろ!」


「るっせぇ! 死ねよラァァァアアアアアッ!」


 犬が終わったら次はレイダーとグールだ。


 まさか、コストロの人達もレイダー達を射殺してるのは見えてたし、俺が此処でコイツらを殺したって文句を言っては来ないだろう。まだギリギリ平和だった時のホームセンターとは違うはずだ


 ストレングスもインテリジェンスも全然育ってない様子のレイダー達に突っ込み、大剣で首を刎ね飛ばしてライフル弾を脳天にぶち込んでいく。


 未だに俺もコストロからの射撃対象なのが悲しいが、エコロケを駆使して回避したり大剣で防ぎながらレイダーを殺して行く。


「何すんだてめぇぇぇぇぇ! ダチが死んじまったじゃねぇぇぇえあかぁぁぁぁあ!?」


「るっせぇ黙って後追えやクソが」


「--えぴッ!?」


 叫ぶレイダーの額に大剣の柄頭を叩き込んで陥没させたら、振り向きざまに大剣を一閃。ついでにコストロの駐車場を店舗に向かってバンザイアタックしてるグールを後ろから射殺する。俺を無視してんじゃねぇぞクズが。


「行かせねぇよ。精々せいぜい、恩を高く売らにゃいけねぇからな」


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