農家の人。
「採用」
「……あの、えっと?」
「ヤマトさん。お相手が混乱してますよ」
エンジンがブスンブスンとギャグ漫画みたいな音を立てながらお釈迦になった車から降りて来た四人組家族。
夫のヨシオ。妻のケイコ。小学生五年生の長男タカシ。小学生三年生のメグミ。
「み、ミルクちゃん!?」
「メグちゃんっ!?」
「あ、知り合い?」
なんと、このご家族の末っ子がミルクの友達だった。すげぇ偶然だな。
そして話しを聞くと、このご家族の職業が東京農家だった事が判明した。いや、東京農家って言葉を職業と言い切って良いのか知らないけど、とにかく農業に秀でた方々だったのだ。めちゃくちゃ欲しい人材である。
しかも夫ヨシオの方は、東北の
そんな事もあって冒頭、採用宣言だった訳だ。
「どうです、ヨシオさん。俺達と共に行くならある程度の安全は保証出来ますし、物資も分けますよ」
「…………よ、よろしいのですか?」
「ええ、勿論ですよ。房総半島の山を目指してるんですけど、この壊れた日本では自給自足出来る人材が絶対に必要ですからね。狩猟と戦闘は俺達に任せて下さい。代わりに、野菜をお願いします。お肉と野菜でお互い支え合って行きましょうよ」
ヨシオさんを説得して仲間に引き入れた俺は、桜鍋の続きと洒落込む。勿論ヨシオさん達も一緒だ。馬一頭から取れる肉だからな。まだまだあるぞ。て言うかイミテーターでコピーしてるし。
冷凍して腐るまではイミテーターで複製した肉を食べて、オリジナルの方が傷んだら処分しよう。ちょっと傷んだくらいならネコも食べれるだろうし、火を入れたら俺達も大丈夫だろ。
ギリギリまで馬肉を楽しんでやるぜ。
「お、おにく……」
「おう、お肉だぞ。メグミだったか? 好きなだけ食べていいからな」
「……ほんと? 食べても、おこられない?」
「少なくとも今日は大丈夫だぞ。これから先、勝手に何か食べちゃったら怒るかも知れないが」
コピーするオリジナル品を食べられたら困ってしまうからな。腐るまではそれを元にイミテーターで増やすのだから。
「ミルク、ちゃんとメグミにもお菓子分けてやれよな?」
「うん! メグちゃん、あのね、これあげるねっ」
「クッキーだっ……!」
ミルクはお菓子さえあげとけば大人しいし良い子なので、比較的手に入るクッキーとかはイミテーターで切らさないようにしてる。ミルクが最近「おかし食べたい」って言うのは、チョコレートとかのレア物の事だ。
最悪はクッキーなんて、小麦さえ栽培出来れば壊れた日本でも自作出来る。しかし、チョコは無理だ。カカオは日本じゃ育たん。
一応、日本でも栽培する計画はあったらしい。小笠原諸島だったか? あの辺で。それがどうなったか分からないけど、チョコが欲しいってだけの理由で小笠原まで行くのは骨だし、そもそも栽培に成功したのかも知らない。
こんな日本の状況だと輸入とかも無理そうだし、なんなら外国もこうなってるかも知れない。もうチョコは諦めた方が良いかも知れない。
「…………いや、保存が効く豆の状態で手に入れたら、それをイミテーターで増やして自作は出来る? …………試してみる価値はあるか」
カカオ豆の状態なら、冷暗所で湿気に気を付ければ一年程は大丈夫って聞いたことがある。
ん? いや、良く考えると板チョコとかって賞味期限二年とかだよな。じゃぁやっぱチョコ探した方が良さげか?
取り敢えず、二年後までは頑張って探せばチョコは食べれるかも知れない。
それ以降は、まぁ最悪、模造品でも頑張って作ろうか。落花生なら国内で栽培出来るし、ピーナッツバターを主軸に頑張って偽物チョコを作ろう。
タンポポの根っこを焙煎してコーヒーとか作れるらしいから、その手の苦味と風味を加えつつ、砂糖も入れて黒く出来ればチョコっぽくなるだろ。多分。
「あー、考えたらチョコ食いたくなって来た」
「え、鍋食べながら!?」
タクマに突っ込まれる。そう、鍋食べながら。
「いや、チョコってもしかしたら二度と食えなくなるかも知れない食材だぞ? 今のうちに確保したいじゃんか」
「え? いや、イミテーターで……、ああそっか、輸入が……」
「そうそう。どっかに大量のチョコとか有りそうな場所無いかねぇ?」
「…………それでしたら」
タクマとチョコ談義してると、横からヨシオさんが教えてくれる。
「この先、船橋方面に入って新習志野のに抜けて行けば、確かコストロが有りますよ。幕張倉庫店だったかな?」
「え、マジです?」
コストロホールセール? あのディスカウント最強の会員制ショップ? 物資の宝庫じゃん。
「よし次の目的地はコストロな。根こそぎ物資パクってくぞ」
「え、いや、ヤマトさん? コストロくらいの規模の店と物資があるなら、避難所とかになってるんじゃないですか? 占有してるコミュニティが有ると思いますよ」
「…………その場合は魔石を使って交渉するか」
道中、魔石狩りを徹底的にやらないとな。もう犬も見逃さん。見つけ次第殲滅してやる。
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