お友達。
「にゃうにゃぅ!」
「にぅ〜!」
「おお! ミケちゃんにチカちゃん! 一週間ぶりか!? 元気だったかい!?」
生存者探しを決意してから、はや二日。全然見つけられないで居る俺は、駅から離れた路地裏で一週間ぶりに友達と遭遇した。
拠点で一緒に焼肉パーティをした精霊猫である三毛猫のミケちゃんと、マンチカンのチカちゃんだ。
この子達はあれからも顔を合わせる仲であり、余った魔石も融通してあげたので今じゃ結構強い。
現在上野でのヒエラルキーは頂点にフリルを置いて、第二位に俺。三位と四位が恐らくチカちゃんとミケちゃんだろうと思う。
俺達も重複してる魔石だって積極的に取り込むけど、全部残らず飲み込んでる訳じゃない。
流石にアクアロードとかは無理だが、パイロキネシスとクリアコントロール、エコーロケーションくらいはおすそ分け出来たのだ。
充分な異能を得た事で二匹とも自前で食料を確保出来るようになったんだろう。もうあの頃の痩せ細った可哀想な猫じゃない。上野を支配するフカフカもふもふの存在である。
実際、俺とフリルが移動したらヒエラルキーの頂点はこの子達が座るだろうね。
「今日はどうしたんだ? フリルなら拠点に居るぞ?」
「なぁう!」
「にゃっ、にゃぁっ」
「なになに可愛い。でもごめんね、会話が成立するのってフリルだけなんだわ」
長年……、って程じゃないけど一緒に暮らしてたからか、俺はフリルが何を伝えたいのか八割方理解出来るようになってて、殆ど会話が出来てしまってる。けど、それは俺が猫語を習得した訳じゃなく、多分フリルの方が仕草や表情で俺に伝えるのが上手いんだと思う。
だから必死に何かを伝えようとするミケちゃんとチカちゃんには申し訳ないが、何言ってるか分からないのだ。でも可愛さだけは完璧に伝わってるぜ!
しかし、狩り暮しで友達が猫。同居してる相棒も猫。うん、俺ってば野生児だわぁ。
「なぁぁぅ!」
「にゃぁんっ」
「…………お、なになに? 着いて来いって?」
裾を引かれ、猫ちゃんからデートのお誘いを受けた。
で、でも、俺にはフリルが…………--
「にゃぅんっ!」
「あ痛っ……!」
あ、はい。大人しくついて行きます。だから噛まないで……? 普通に狂犬病とか怖いからさ。
おかしいな。この子達に施したの、半分は俺からなんだけど。もう少し敬ってくれても良いのでは? 泣いちゃうよ?
そんな若干のモヤモヤを抱えつつ、俺はチカちゃん達の後ろについて行く。
猫特有の「そこは人間通れねぇよ」って場所も、ストレングスとインテリジェンスでゴリ押してついて行く。なかなかハードなデートだな。
ビルが並ぶ裏路地にあるエアコンの室外機を伝って上に跳んで、割れた窓からビルの中を突っ切るショートカットとか予想してなかったよ。これ普通に外歩いちゃダメなんかい?
俺がサイズ的に通れない所は迂回してくれてるみたいだけど、そもそも俺は「大きい猫」じゃないからな。猫が通る道を当たり前に利用出来ないのよ。
いや、そう言えば猫って人間のことをデカい猫だと思ってるって聞いた事あるな。つまりそう言う事なのか?
なんて考えてたら、目的地に到着したらしい。
「…………おお、まだあんな大物居たのかよ。しかも生存者付きか」
「にゃっ」
連れてこられたのは、とある雑居ビル。一階がテナントになってるタイプで、そこはぐしゃぐしゃにされて大物が居座ってる。そして雑居ビルの二階以降に、チラホラと生存者の反応がエコーロケーションで感じられる。
「ふむ? 普通にビルを占拠して生き残ってたら、一階部分に化け物が住み着いて出られなくなったんかね」
物陰から一階テナントをブチ抜いて巣穴にしてる魔物を見る。
虎型だ。多分、上野動物園に居たあの
鵺と違って見た目は普通の虎だ。大きさもおかしくない。異能は分からないが、普通にストレングスだったとしてもあの巨大だと凄まじい効果だろう。
「取り敢えず……」
死ね。
ビルの影から虎に向かって
銃声。そして--
-ガギィンッ……!
「あ?
「グルゥゥアアアアアアアアアッッッ!」
不可視のナニカが銃弾を防ぎ、虎は無傷。撃たれて激怒したのか、周囲の建造物が軋むような怒号を発する。
ああ、アイツ俺の事気付いてやがったな。匂いか? それとも、エコーロケーション持ってんのか? だとしたら不意打ちは無理だな。あれはパッシブ能力あるし。
「ったく、るっせぇなデカネコこのやろう! いいぜ、やってやんよ!」
せっかく銃を手に入れたのに、まさかのガチバトルが発生してしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます