勝ち組。



 さて。適当な解体を経て、金の魔石が二つ。


 俺は金猿から入手した、天秤っぽいマークが揺らめく魔石。


 フリルが選んだ金の魔石には、二重螺旋のマークが入ってる。


 どちらも間違い無く金色。明らかにレア物。


 なにせ今日まで相当数の魔物を倒して来たけど、金色の魔石なんて一つも見た事が無かった。


「…………よし、飲むか」


「にゃぁん」


 水で良く洗う。感染症とか怖いから。


 ジャブジャブとペットボトルの水で濯いで、乾いた布で良く拭く。


 そしてフリルと見詰め合って、タイミングを合わせてパクリ。ごくん。


「…………カッッ、あぁっ!?」


「にゅぅぁあんっ……」


 魔石の持つ力が強いからなのか、それとも単純にレア魔石はそう言う仕様なのか、飲み込むといつもより反応が激しかった。


 紫紺色の魔石なら、飲み込むとウィスキーをストレートで飲んだ様な感覚が喉を走って、魔石が胃に落ちるとそこでポカポカし始める。


 短いと一分。長くても三分ほどポカポカしたら終わる能力の継承だが、金の魔石は十分ほども胃がポカポカ、…………いや、グツグツと煮詰まるような熱さを感じて、俺とフリルはのたうち回ってた。


 一分経って。


 五分経って。


 十分が過ぎた。


「……がぁっ、ぐぅう」


「………………にぅ」


 俺もフリルも、何やら凄まじい感じの能力を手に入れた気がするが、それよりも体力の減りがヤバい。


 金魔石ヤバいな。今ここで飲み込む物じゃなかった。持ち帰って拠点で飲むべきだった。


 これ、他にも凶暴な魔物が居て、俺らがのたうち回ってる時に襲って来たら詰んでたぞ。


「…………ふ、フリル。今度は、拠点で飲もうな、金魔石は」


「……にゃぅ」


 ふぅ。楽になって来たぜ。


「よっし。それじゃせっかくだし、動物園に居る残りの魔物を狩りながら、新しい異能を試して見ようぜ」


「にゃぁうん」


 それから、俺とフリルは動物園を荒らし回った。


 そしてその時に様々な検証を行った結果、俺らはこの終末世界に於いて勝ち組になった事が分かった。


 まず、フリルの魔石。これはストレートにメタモルフォーゼって名付けよう。


 メタモルフォーゼの効果は、まぁ予想した通りに肉体改変。筋肉量を増やしたりで単純に戦力が倍増するし、何より治療にも使える。とても良い異能だ。


 接触してればある程度は自分以外にも使えるらしく、俺が怪我をしてもフリルが治してくれる事になっだ。


 ただ、フリル自身を治療するなら良いけど、他人の怪我を治す場合は効率や効果範囲が落ちるので、深い傷など大怪我を治すのは難しそうだと分かった。


 それでも簡単な怪我ならすぐに治せるのは、とてつもないアドバンテージだ。単純に強いし、補助も出来る。チート能力や。


 そして俺が得た複製能力。これも単純にコピーと名付けたかったが、『コピーでコピーしたコピー品』とか訳分からない会話が発生しそうなので、贋作を作るって意味合いでイミテーターと名付けた。


 この異能は複製する毎に魔力を消費するタイプで、消費魔力はコピーする物の総質量を基本とする。


 それで、無機物か有機物かでも消費が変わる仕様があり、有機物のコピーには無機物の倍は魔力が持って行かれる。


 まぁそれでも、鉄なんかを生み出し放題。そして肉などもコピーしまくれると思えば、なんて事の無い制限だ。


 あと、コピーした物を元に更なるコピーは出来なかった。イミテーターが使えるのはオリジナルだけで、イミテーターで生み出したコピー品を元に別のコピー品を生み出せない。


 これは結構重要な事なので、しっかり覚えておこうと思う。


 さらにもう一つ。イミテーターでは魔石の複製は無理で、魔物の死体も、時間が経って腐りかけの物なら複製出来たけど、死にたてホヤホヤだと無理だった。


 恐らく、魔力が含まれてる物は複製出来ないとか、そんな制限なんだと思う。


「むふふ。もうこれさ、物資を適当に集めたら、イミテーターで複製して売り捌く売人スローライフとかも有りじゃない? 」


「にゃぅん」


「な。やっぱ良いよな。早い内に異能狩りを終わらせて、本拠点作りに力入れたいなぁコレぇ」


 俺は色々と夢を見る。


 世紀末が題材のゲームでさ、渋いディーラーとかやってるキャラ見ると憧れるんだよね。


 物資が不足してる世紀末で、高価な物資を転がして稼いでるディーラーキャラ。かっくいい。


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