不意打ちと不意打ちを不意打ち。
「--なーんてな?」
発火。
「ルグゥアッ!?」
正直、斧を取られたのは俺の失態だ。斧がないと手数に欠ける。
だが、それで俺が
そう、フリルの援護だ。
パイロキネシスは座標に直接発火する能力と、認識下の炎を操る能力がある。
このうち発火能力の方は、発火する一秒前くらいに燃える空間が歪む特徴があり、気を付けてれば避けられるのだ。
しかし、俺っていうマヌケにトドメを刺せる瞬間に意識を持って行かれた更なるマヌケは、パイロキネシスの前兆に反応なんか出来ず、まんまとクリーンヒット。
「燃え死ねよラァァぁあああッッ……!」
顔面が燃え盛り戦いどころじゃ無くなった鵺の頭を、アクティブ式ストレングスの最大出力で蛮刀を振ってカチ割る。
流石に脳が壊れたら死ぬだろ。これでも再生するなら、今度はフリルのクリアコントロールを利用した窒息戦法くらいしか勝ち筋が残ってない。頼むから死んでくれ。
そう願う俺の背後で、金猿が手に持った瓦礫を振り被って飛び掛る。狙いは鵺じゃなく、俺。
敵を倒して、油断し切ったこの瞬間なら、俺も殺せるって思ったんだろ。
漁夫の利で総取りしたいならその判断は正しい。
けど、ごめんなエテ公。
エコーロケーションで全部見えてるし、何よりさっきの火炎攻撃、俺の異能じゃ無いんだわ。
発火。
「お前も燃え死んどけ」
振り返り、蛮刀一閃。
金猿の首を刎ねて、死亡を確認。そしたら跳ね飛ばされた斧を探して、見付けた斧を拾う。
まだ、まだ安心出来ない。金猿は死んだけど、鵺がまだ怖い。
コイツの異能は再生に使えるから、多少の致命傷じゃ安心出来ない。
首を、首を落とさねば。
「おっ……、らァアッ!」
拾って来た斧で、首を真横からぶった斬る。しかし斧の刃渡りで一刀両断出来る程、細い首じゃない。
何回も斧を持ち上げ、何回も振り下ろす。
再生する様子は無いが、死んだ振りだった場合に油断したら取り返しが付かない。
確実に殺したと思えるまでは、徹底的にやる。
「ラァぁあッッ……!」
何回目かも分からない振り下ろしで、やっと鵺の首が落ちて、俺はそこでやっと安心出来た。
気が付けばフリルも近くに居て、傍で死んでた金猿の体をズタズタにして魔石を摘出してくれてた。
「…………金色?」
受け取った魔石は、いつもと違って金色だった。紫紺じゃない。明らかなレア。
「ああ、ありがとうフリル。じゃぁ俺も、今からコイツの魔石を取り出しちゃうから」
フリルから金の魔石を受け取って、取り敢えずポケットへ。
未だに血塗れの魔石を口にする度胸が無い。水で洗ってから良く拭きたい。
斧を地面に置いて蛮刀を構える。コレを死んだ鵺の体にザクザクと突き立て、皮を裂いて行く。
どうやら死んだ後なら硬さも落ちるらしい。
まだホカホカしてる中身に手を突っ込んで、心臓ら辺を探す。そして手に硬い感触を感じて、ソレを掴んで引っこ抜く。
「…………おっ、コイツの魔石も金色じゃん」
ブチブチっと引き抜いた手に握った魔石は、これまた金色のレア魔石だった。
もしかして、魔石のレア度とかで色が別れてんのかな?
複製能力や変身能力なんて、明らかにレアな強異能だもんな。
パイロキネシスも中々強い異能だと思うけど、汎用性の違いかね?
「複製能力だって、瓦礫じゃなくて投げナイフや銃弾を複製してたら、もっと純粋に強いだろうし。鵺の変身能力も、普通に可能性の塊だし」
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