金の猿と黒の虎。
「あれは、なんでござるか……?」
「にゃぁ……」
動物園の中に入り、なるべくこっそり移動中の俺とフリル。
その先で、やっと見付けた念願のレア異能持ちと思われる魔物が居た。
それは良い。とても良いのだけど、何故か別種のレア物が二匹居て、結構壮絶な殺し合いをしているのだ。
場所は普通の、コンクリートに囲まれた人間が見学する通路エリア。そこで二種類の魔物が殺し合ってる。周囲のコンクリートが砕け散る程に暴れながら殺し合ってる。
片方は金色の猿。片手に持った瓦礫を反対の手に生み出しては無限に投げてる魔物だ。異能はあの複製能力なのだろう。正直クソ欲しい。物資の複製とか出来たらもう、その時点で終末世界の勝ち組じゃん。
悠々自適なスローライフが確定するような神の異能だ。あの金の猿は絶対に仕留める。
そして、対するレア異能持ちの魔物は、黒い虎だ。イメージとしては、良く知ってる普通の虎が一回りどころか三回りくらい大きなって、黒と褐色の配分が真逆になった虎柄を想像すれば大体合ってる。
時折、金の猿を殺そうと振るった前足が不自然に伸びたり、叩き付けようとした尻尾が太くなってるので、多分あれが異能なんだろう。肉体改変とか、そんな感じかな?
「フリル……」
「にゃぁ」
「……そうか。被らないなら幸いだ」
「んにゃ」
俺とフリルは以心伝心。
レア魔石は交互に譲り合ってたが、今は目の前に二匹もレアが居る。つまり好きな方を選んで良いのだ。
俺は金の猿の複製能力が超欲しい。フリルは黒い虎に熱い視線を向けている。
「……まず、ヤバそうな虎から行くぞ。その後に俺とフリルで猿をフルボッコにする」
「にゃー……」
「開幕、俺が叫びながら飛び出して気を引くから、フリルは隠れながらパイロキネシスとショックサイトで援護よろしく。多分猿の方も、俺が虎を狙ってるうちは共闘してくれるだろうさ。頭は悪くなさそうだし」
「にゃんっ」
「…………じゃぁ、行くぞ。背中は任せた」
腰に蛮刀を挿し、手には斧。服は普通で防具なんて身に付けてないが、あの虎だってストレングスくらいは持ってるだろ。そんな大型獣の攻撃とか、生半可な防具じゃ意味無さそうだし、別に気にしなくて良いだろ。
攻撃を食らったら即死ぬ。それくらいのつもりで行こう。
現状でもあれだけ強そうなんだ。あれがこの先も異能集めて強化され切った後とか、怖過ぎてチビるわ。やっぱり俺の方針は間違ってない。
ヤバそうな魔物をヤバくなる前に殺す。そして異能を奪う。この方針は絶対に大正解。花丸もんだ。
「……ふぅ。……………………行くぜオラァァァァァアアアッッ!」
飛び出し、
猿も虎もビビってる。俺の存在には気が付いて無かったらしい。ならエコーロケーションは持ってないな。その分俺が有利か。
一応不意打ちの選択もあったが、俺がこうやって目立つ吶喊を行えば、今茂みに隠れて行ったフリルの存在をより隠匿出来るので、これはこれで良いはずだ。
「……ッッグルァァァァアアアアアア!」
「死ねよラァァぁぁぁあああッッ……!」
「ギィッ……!?」
虎がすぐに反応してぶっとい前足を一閃。俺はインテリジェンスを強めた反応速度で身を低くして回避。速度は緩めずに斧を一閃。
猿は俺の登場にまだ戸惑ってて、様子見に転じている。
「かっ、くっそ硬ぇなオイッ……!」
「ガァァァアアッッ!」
「うるっせぇぞクソモンスターがッ!」
土手っ腹に叩き付けた斧は、ほんの少し皮を斬ったくらいの手応えしか無かった。
俺が知る限り、魔物はただ異能を手に入れただけの動物だ。フリルやシロクマみたいに見た目の変化が無い個体も居るが、コイツやすぐそこの猿、そしてパイロキネシスやエアロメーカーを持ってた魔物みたいに見た目が著しく変わる魔物も居るには居る。
だが、それらを殺して来た感触では、魔物化したからって防御力を手に入れる訳じゃなかった。
つまり、こいつの硬さは魔物だからなんて曖昧な理由じゃなく、異能が防御力に直結しているのだと推測出来る。
「クソがっ、やっぱり肉体改変とかそんな効果なんだなチクショウが!」
「ルゥアアァァッッ!」
「ぶっ殺してやるよクソ虎がよぉッッ!」
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