狩猟開始。
焼肉の翌日。
目が覚めると、ミケちゃんとチカちゃんは居なくなっていた。悲しい。
ミケちゃんとは三毛猫ちゃんの事で、チカちゃんはマンチカンの事だ。
安直と笑いたくば笑えばいい。名前なんて愛着が湧けば何でもいいんだから。
「ストレングスとインテリジェンスの魔石は、大量に余ってたから分けたけど、大丈夫かな……」
「にゃん!」
フリルは大丈夫だと言う。いや、正確にはそう言ってる気がするだけなのだが、まぁ間違ってないはず。だって俺とフリルはラブラブだから。
ミケちゃんとチカちゃんには昨日の晩に、余った魔石を分け与えた。
二匹とも、持ってる異能が普通にストレングスだったのだ。しかし、体の小さな猫がストレングスを持っていたとして、ぶっちゃけそこまで役に立たない。魔石十個追加してからやっとって感じだ。
なぜなら、ストレングスは元々持ってる膂力をブーストする異能であり、パッシブ効果も結局は元の筋量に依存する。つまり体の小さな生き物とは相性がそこまで良くない異能なのだ。
それでも育てれば使えもするんだろうけど、異能が言うほど役に立たない状況では育てる余裕も無いだろう。ストレングス持ちの獲物すら満足に狩れず、得られそうな魔石なんてその辺で死んでる人間のインテリジェンスくらいだ。それも、まだ魔物に頭をムシャムシャされてない遺体からしか奪えない。
まぁ要するに、詰んでるのだ。あの猫ちゃん達は。
周りの犬とかは勝手に殺しあって強くなって行くのに、筋量に劣る猫はだいぶ不利だったはずだ。
そんな中で、他の魔物を避けながら自分たちの食料を確保するのは大変だっただろう。なので、せめてすぐに強化出来る分は強化したのだ。
ストレングスとインテリジェンスの魔石をそれぞれ十個。これだけではまだ辛いだろうが、だいぶマシにはなったはず。カラスくらいなら狩れるようになったと思う。
「まぁ、暫くは俺らもここに居るし、また辛くなったらここに来てくれれば良いんだよな」
「にゃんっ」
そんな訳で、六日目の探索を始めようか。
必要な荷物以外は全部バックヤードに置いて、かなり積載量を減らしたマツバを拠点から出す。
もちろん前カゴはフリルの為の専用座席だ。
「ある程度の食料と水。それと武器に、簡単な医療品。……よし、準備はおっけ。いざ出発!」
マツバを漕いで駅ビルから出る。狙うはレアな異能を持った魔物で、可能なら食肉に出来る魔物が嬉しい。
あとは気に入った物資があればマツバに乗せて持ち帰る。それくらいの探索だ。今はとにかく魔石を集める段階なのだ。
「…………しっかし、マジで人が居ないな。まだ六日だぞ?」
ペダルを漕ぎながら辺りを見て、そんな感想が口に出る。
流石に、荒廃が早すぎやしませんかね。魔物しか居ないんだが。
まぁ上野は動物園が近かったから、その分だけ危険度がヤバくて人々も逃げ去ったんだろうけども。それにしたって人の気配が無さすぎる。
上野に来てから生存者なんて、同じ駅ビルに立て篭ってガチガチにテナント封鎖してる三人組しか知らないぞ。あれも、彼らは何を思ってテナントなんかに閉じ篭ったんだろうな。ちょっと意味わからん。
俺の場合はその方が都合が良かったからだけど、普通だったら民家とか選ぶんじゃない? なんで彼らは駅ビルのテナントなんか選んだの?
「グルゥァァアッッ!」
「おっと、ワンちゃんだ」
飛びかかるワンちゃんを斧で一閃。手馴れたものだ。
まぁ、「おっと」とか言いつつ、エコーロケーションで接近は把握してたし、インテリジェンスで反応速度も上げてたから余裕だったけどさ。
「うーん、インテリジェンスが地味に強い。これ使いこなせてない魔物とかもはや怖くないな」
反応速度の強化は凄い重要だ。マジで基礎の異能と言える。
ぶっちゃけ、肉弾戦メインで行くなら、インテリジェンスとストレングスの二つだけ徹底的に育てて行けば、それだけでメチャクチャ強くなれるだろう。
仕留めた犬から手早く魔石を抜き取りながら、さっさと移動を続ける。死体は放置だ。その辺の魔物が勝手に食うやろ。ミケちゃんとチカちゃんが食べるかも知れないし。
血みどろの手と魔石はフリルがクリアコントロールで綺麗にしてくれた。はぁ気が利くフリル素敵。もはやお嫁さんの領域。
「なんかレアな異能が見付かると良いな」
「にゃうんっ♪︎」
取り敢えず、俺は上野崩壊の爆心地だっただろう場所、動物園を目指してマツバを動かした。
檻から脱走したって言っても、完全に全部の魔物が動物園から抜け出した訳じゃ無いはずだ。
動物園はある程度、飼育してる動物が好む環境を作ってるはずだから、そんな場所を捨ててコンクリートジャングルを目指した魔物ばっかりだとは思えない。少なくとも
つまり、まぁ、今の世界では、動物園の中って超危険なダンジョンになってると思うんだよね。その分リターンも大きいと思うけど。
「ああ、見えて来たな。動物園」
さぁ、ここからが世紀末サバイバルの本番だ。
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