猫二匹。
結局、二日ギリギリまでかかったが、満足の行く拠点に仕上がった。
ケーキ屋テナントのシャッター下にバリケードを組んで、そこに自作の鉄パイプ製扉を付けて、鍵はバイクとかに良く使われるU字ロックを採用。
そしてシャッターを降ろしたら、外からシャッターとバリケードに向かってセメントをぶっかけた。
これで鉄パイプ製のゲート以外はセメントでガチガチなので、ゲート以外からは出入り出来ない。
ゲートはもちろんマツバごと中に入れる大きさを確保してあるので、物資の搬入も楽々だ。
鍵に使ってるU字ロックはピッキングが難しい鍵として有名だし、今俺が用意出来る最高のセキュリティが準備出来たと思う。
「そんな訳で焼肉パーティだ!」
「にゃぅ!」
俺もフリルは仮拠点の仮完成を祝って、拠点の中で焼肉パーティを始める。
猫も肉食だからね。普通にお肉大好きだからね。
終焉から六日目、流石にもう電気も止まった。だから電気プレートは使えないので、普通に炭を使って肉を焼く。
当然、焼くのは冷凍した熊肉だ。フリルがこまめに氷漬けにしてくれてるが、そろそろ傷みが怖いので、このパーティで食い切ってしまう予定だ。
ちなみに、熊肉の味はびっくりするくらい良かった。普通に塩コショウで超美味い。本物のシロクマがこんなに美味いのか、魔物化した影響なのかは分からないが、これからも見付けたら積極的に狩りたいと思う。
「今日はこれ食べて、明日から本格的に魔物狩りだぞ」
「にゃぅ♪︎」
「ちゃんとフリルのお肉はふーふーして冷ましてやるからな」
「にゃぁっ」
漁って来た包丁で、熊肉を適当な大きさに切り分ける。
そして同じくその辺から調達して来た塩コショウをフリフリして、物によっては焼肉のタレをぶっかける。
フリル用のお肉には何もかけず、塩分などは控える感じになってる。
正しく魔物化した精霊のフリルに、猫や犬に対する塩分がどうとか、今まで通りに語って良いのか分からない。
分からないから、ちゃんと安全策で行く。
むしろ食べやすいように生肉を刻んでユッケ風にしても良いんだけど、俺は熊肉が生で食べれるのかを知らない。ダメだったら怖いので焼肉一択だ。
「ふふ、やっぱり焼肉は良い。人生の勝ち組になれる」
じゅわじゅわーっと肉を焼き、滴る油が炭に落ちて立ち上る煙の匂いに、胃袋がぎゅっとなる。
もう匂いだけで美味しい。
「しかも、直前に手に入れた異能のおかげで、拠点に煙と匂いが籠らないのが最高だ」
仮拠点を作る二日、なにも拠点作りだけしてた訳じゃない。普通に目に付いた魔物もちゃんと狩ってた。
その時に見付けた、薄水色のカラスを仕留めて出て来た新魔石が、地味に便利なのだ。
名前をエアロメーカーと名付けたこれは、凄く単純に風を操れる異能だった。ぶっちゃけ攻撃性能はカスだ。アニメみたいに風の刃とか無理だ。普通に風を吹かせるだけの異能だった。
だが、焼肉で発生する煙を外に追い出すだけなら最高の異能だ。
フリルと俺は異能を交互に譲ってるので、今回は俺が取得した。念願の異能らしい異能だ。でも風って目に見えないから、相変わらず目立たないんだけどさ。
魔石図鑑にもしっかりメモった。エアロメーカーの模様は波打った五本線で、多分シンプルに風を表してるんじゃ無いかと思う。
「ほらフリル、あーん」
「にゃーんっ」
充分に冷ましたお肉を、フリルの可愛いお口に運ぶ。
するとパクッと食べてくれて、俺がキュンキュンする訳だ。はぁまじフリル可愛い。うちの猫が世界一可愛い。
味付け無しでただ焼いただけの肉。それを美味しそうにハグハグしてるフリルが愛おしい。なんで飯食ってるだけでこんなに愛らしいんだ?
「フリルって、もしかして天使じゃなくて女神なのか?」
「………………にゃぁ?」
何言ってんだコイツって顔されたけど、間違いないと思うんだ。
だってほら、自分が食べ終わったら、俺がせっせと焼き貯めしたお肉を前足で器用に挟んで、俺の口元に持って来るフリルが可愛い。
慣れてない動作でプルプルしてるが、これは、勘違いの余地なく、「あーん」のお返しだろ? はぁマジ俺のフリルちゃんが女神過ぎるっ。
前足で持ったお肉の衛生? 知るかボケ。愛の前には雑菌などひれ伏すのだ。
「……あーん、ぱくっ」
「にゃぁ!」
「んまい! 世界一美味い!」
「にゃぅにゃう!」
愛猫にあーんされた焼肉とか、
そうやってイチャイチャしながら焼肉を楽しんでいると、ふと、エコーロケーションに反応があった。
これ、パッシブ効果なの地味に助かる。気が緩んでる時でも発動しててくれるからマジで便利。
「……四足歩行の獣が二頭。小型で、真っ直ぐこっちに来てる。……ああ、焼肉の匂いをエアロメーカーで外に出してるもんな。そりゃ魔物も誘引するか」
「にゃう」
反応はゆっくり、忍び足で来てるので、俺とフリルは取り敢えず焼肉をハグハグしながら待った。
ゲートはセメントと鉄パイプでガチガチに固めて有るし、大型の魔物じゃ無いならストレングスが育ってる個体でもすぐには抜けないだろうと思っての事だ。
そして、ゆっくりと近付いて来た二頭の獣が、鉄パイプで組まれたゲートの隙間から、顔を出した。
「……なぁぅ」
「……にゃ」
そして現れたのは、二頭の猫だった。
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