上野到着。



「死ねよらぁぁぁあああアアアッッ!」


「グルァァァァアッッ!」


 三日。生物が魔物化して凶暴化、人間がバタバタと殺されて行く世界になって三日が経った。

 

 もうサイレンの音も聞こえなくなり、やはり事態は終息しなかった。


「にゃぁっ!」

 

「フリル、ナイスぅッ……!」

 

「グァッ……!?」


 上野の駅前、たった三日で荒廃しつつある街並みで、俺は血染めのシロクマと戦っていた。

 

 とは言え、もう戦闘も終わりだ。

 

 相棒からのアシストを貰って、遭遇した熊の首を斧で叩き切る。フリルのショックサイトから俺が首を狩るコンボはもはや鉄板となりつつある。

 

 三日使って、やっとここまで来た上野の駅前。だが動物園までまだ距離があるのに、もう既にそれっぽい魔物と遭遇し始めてる。

 

 まぁ普通に考えて、檻とかぶっ壊して逃げ出したんだろうな。つまりこの辺にはもう普通に、虎とか獅子とか居る訳だよ。


「…………はぁ、はぁ、普通にヤベェ強さだったなこの熊。なに、薄汚れてるけど、やっぱりこれ、シロクマか?」

 

「にゃぁ?」


 もう三日もやってるので、手早く仕留めた獲物から魔石を抜く。

 

 動物の種類ごとに正しい解体方法とか知らなくても、腹を裂いて腕を突っ込めば大抵は魔石を取れる。心臓に無かった場合は頭を割れば大体ある。


 その二つに無かった場合は、特徴的な場所に生成されてる可能性が高い。明らかに腕が肥大化してるとか、尻尾が長いとか、魔物化して肉体が変異してる感じの奴だ。


「……良し、ストレングスの複合魔石だぜフリル! どうする、どっちが使う? 今回はフリルだっけ?」


「にゃぁ!」


「おけ、今回はフリルな」


 この三日で分かった事。

 

 まず、一度使った事のある魔石を更に重複摂取して異能を強化する場合、重複し続けると強化率がグングン下がって行く。

 

 最初の一個で得た異能を十割として、更に追加で一個を摂取すると二割くらい強くなる。それで三つ目が一割半、四つ目が一割ちょい、五つ目が……、って具合に、摂取するほど強化率が落ちる。追加で十個摂取してやっと最初と比べて二倍程になる。

 

 そして最初の一個と追加の十個に、更に追加して十二個目を摂取すると、「…………え、今これ強化された?」ってレベルの誤差しか強くならなかった。

 

 多分次は百個とか集めないと十割強化出来ない感じだ。

 

 つまり、最初の一個で十割、追加の十個で更に十割、予想で更に百個飲めばもう十割ほど、異能が強くなる。

 

 強くなるのは、まずパッシブ発動してる能力もそうだし、魔力を消費して行う追加のブーストも、魔力消費効率と出力限界値が伸びてる感じだ。

 

 ストレングスだけでも上手くやればメチャクチャ強くなれる。

 

 まぁ、とは言え魔石摂取での強化は十個以降、凄い効率が悪いのでそれ以上は基本的に貯めておく事にした。

 

 その内なにか、生存者と物資の交換とかする時に役立つかもしれないし。

 

 一応、魔石を重複摂取しなくても、異能を使い続ければ育つ事も分かった。

 

 フリルが持ってるショックサイトは同一の異能が手に入らなかったけど、フリルが使い込んでるからか、目に見えて着々と強くなってるのが分かる。

 

 そして俺のストレングスも、かなり使ってるからまぁまぁ育ってる。便利な異能なのでこのまま育てたい。


「にゃぅ♪︎」


 次に、魔石の模様について。

 

 これはやっぱり能力毎に決まった模様が有るらしくて、俺たちが現在把握して名前を付けてるのは、五種類。


 フリルのショックサイト。

 

 人間の初期異能っぽいインテリジェンス。

 

 人間以外のデフォルト異能っぽいストレングス。

 

 巨大蝙蝠倒したら手に入ったエコーロケーション。

 

 真っ赤な毛並みの犬を倒して手に入れたパイロキネシス。


 フリルの異能は、フリルの体にメスを入れる訳にもいかないから模様は分からない。名前だけだ。

 

 パイロキネシスはフリルに取得させた異能で、名前の通り発火能力だ。炎を操って飛ばしたりも出来る。フリルの魔女化が加速した。魔石の模様はシンプルに火の模様だった。

 

 蝙蝠から出て来たらエコーロケーションは俺が取得した魔石で、四重のガビガビした円の模様だった。

 

 異能の効果は音の反響で空間把握がしやすくなる感じの物で、音さえ鳴らせばその反響で周辺の状況を死角すら把握出来る。メチャクチャ便利だ。

 

 ファンタジーラノベで良くある「気配察知」とか「サーチ系魔法」みたいな感じで、生存率が爆上がりしそうな予感がする。

 

 これを手に入れられたのは超デカい。これからお世話になるだろうし、積極的に探していきたい。


「まぁ、見つからんのだけど」


 そう、でも見付からないのだ。


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