食える肉。


  

 比較的良く見かけるインテリジェンスとストレングス。これは基本的な魔石っぽくて、人間とかカラスとか、頭脳派っぽい生き物がインテリジェンスを良く持ってて、今倒した熊とか、犬とか、肉体派の魔物はストレングスを良く持ってる。

 

 で、どうやらその基本の魔石以外を持ってる魔物ってレアっぽい。

 

 パイロキネシスとエコーロケーションを持ってた魔物は、今のところ一体ずつしか見付けてない。

 

 色以外は同種の魔物でも持ってなかった。特にパイロキネシス持ってた犬なんて、毛並みが真っ赤で明らかに異常進化みたいな感じだったし。

 

 多分だけど、フリルの異能もこれ、レア異能なんだろう。流石だぜ。


 まぁそれで、複合魔石って言うのは、先天的に持ってる異能の他に、後から別種の異能を追加された魔石の事だ。

 

 魔石の中にゆらゆらしてるメインの模様に、追加された異能が纏わり付いてぐるぐる回ってる感じになる。


 例えるなら、メインの異能のマークが地球で、追加された異能のマークが月的な感じか。衛星軌道でぐるぐるしてるのだ。


「メインが多分、さっきこの熊が使ってた水に関する異能だろ。模様も涙滴っぽいし。んで、サブはストレングスとインテリジェンスだな。気にしなくて良いだろ」

 

「にゃぅ」

 

「それにしても、フリルは魔眼持ちで、発火能力も手に入れて、水まで操れるようになるのか? ……魔女化がヤバいな。魔女猫フリル、うん可愛いな。最高だ」

 

「にゃぁ?」


 対して俺は、音で敵の位置を探ってストレングスでぶっ殺す。見事な野生児だ。

 

 野生児ヤマト。ふふ、俺にはお似合いじゃないか。魔女猫フリルのオマケっぽいところが特に似合ってる。

 

 そんな他愛ない考えで頭を埋めていると、ペットボトルの水で洗った複合魔石を、フリルがパクッと飲み込んだ。

 

 それから少し時間を置く。魔石は体に馴染んで消化しないと使えないのだ。


「…………あぁ、流石に水の生成は無理なのか。パイロキネシスと同系統かと思ったから期待したんだけど」

 

「にゃんっ」


 新しい異能を手に入れたフリルに実演してもらうと、魔石を洗うのに使ってアスファルトに落ちた水がふわっと浮いて、フリルに操られる。


 パイロキネシスが発火と炎操作の異能だったので、この異能にも水の生成を期待したんだけど、無理らしい。まぁ発火と水の生成だと難易度全然違うもんな。仕方ない。火はエネルギーの生成だけど、水の生成は物質創造の領域だもんな。

 

 あ、今更だが、使った魔力はしっかり休めば回復した。そして使えば使うほど総量も増えるっぽい事も確認してある。魔力は積極的に育てて行きたい。


「……おお、だけど代わりに氷に出来たりするのか」


 ただその代わり、フリルが浮いた水を凍結させてみせた。生成が出来ない代わりに、相当な汎用性が有りそうな異能だ。俺も欲しい。


「むふ、水場だと普通に強そうだ。…………ああ、持ち主がシロクマだったからか? ホッキョクグマとかなんだろうし、種族的には水と氷を操る異能って、普通に似合うしな。それに、水なんて身の回りに普段からあっただろうし、わざわざ生成するような異能にはならなかったのか?」

 

 俺もこんな、異能らしい異能が欲しかった。

 

 今持ってる異能って、インテリジェンスとストレングスとエコーロケーションで、全部俺の体で完結する。だからこう、人が見て明らかに異能って分かる能力が無いのだ。それは全部、フリルが持ってる。

 

 ショックサイト、パイロキネシス、そして今手に入れた水の異能。正直、羨ましい。


「んー、水の異能はなんて名前にしようか。ハイドロキネシス、はちょっと語呂が良くないか。うーん…………」


 少し考え、候補を並べて、使用者であるフリルに選んでもらう。

 

 まぁ言うて語感とかが優先で、深い由来とかは特に無い名付けである。分かり易くて愛着が湧けばそれで良いのだ。


「ん、じゃぁ水の異能はクリアコントロールな。水と氷だもんな。アクアとかウォーターとか、アイスとかフリージングとか、どっちかだけを由来にするとちょっと変だし、どっちも平等に表すクリア透明ってのは、まぁ良いんじゃ無いか?」


 自画自賛では無い。俺的には水と氷の由来には妥協しつつ、『アクアライト』とか『フリーズマスター』とか考えたんだ。でも候補並べたら、フリルはクリアが良いって……。


「……よし、魔石図鑑にも書いたし、次の獲物を探すか」


 俺は手帳に、判明した異能の効果とその模様をメモって、名前を添える。大事な事だと思うので、これは可能な限り続けたい。

 

 そうやってやる事やったので、立ち上がって次へ行こうとする俺に、フリルが裾を噛んでグイグイと引っ張った。


「にゃう?」

 

「ん? …………あぁ、そっか。……たしか熊肉って、食えるよな」


 フリルに促され、俺は仕留めた熊を見た。

 

 首をザックリ斬ったので、良い感じに血抜き出来てる熊である。魔石を取り出すのに内臓も掻き出して、乱暴に扱ったが膀胱や腸なんかも特に損壊はさせてない。

 

 つまり、これは食える肉なのだ。

 

 いや、もちろん今まで倒して来た犬だって食べようと思えば食べれるし、最悪は人だって食える。けど、熊は普通に食用できる肉として知られていた存在だ。シロクマもヒグマと同じ扱いで良いのかは知らないが、まぁ近縁種なら大丈夫なんだろう。


「…………ふむ。どうしようか? 流石に俺も、食べる為のちゃんとした解体方法なんて知らないぞ?」

 

「にゃぁん? なぁう」

 

「ああ、まぁそうだな。別にとびっきり美味しく食べる必要も無いんだし、適当な部位を適当に切り出せば良いか」


 別に肩ロースとかスペアリブとか、綺麗に部位を分けて食べたい訳じゃない。今のうちにでも確保出来る食料は確保するべきだと思ってるだけなのだ。

 

 とりあえず、熊の遺体を引き摺って移動する。流石にちゃんと解体するなら水が使いたい。ペットボトルの水は勿体無いし、駅の中のトイレとかで良いだろ。

 

 まだギリギリ水道も生きてるし、今はフリルのクリアコントロールも有るから、より効率的で衛生的な解体が出来るだろう。

 

 解体したお肉はクリアコントロールで凍らせれば、まぁそこそこ日持ちするんじゃ無いだろうか。


「よし、使えそうな水場を探そう。行こうフリル」


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