初めての。
朝、愛する飼い猫に起こされると、外が地獄みたいな様相で、ひっきりなしに断末魔とサイレンが鳴り響いてる。
そして、そんな状況を見た俺は避難をする為に外へ出ようとすると、血走った目でヨダレをだらだら流すお犬様に殺されかけた。
うん、完全に異常事態だ。それもテロとか災害とかそんなんじゃなく、もっと漫画チックでアニメチックなパニックホラー的な異常事態だ。
だってさ、良く見るとこの犬、アパートの隣の一軒家に居たペス君じゃねぇの……? いやペス君だよ間違いねぇって。ギロチンして下半身しか見えないけど多分ペス君だよこれ。
「なんで見知った犬に殺されかけんだよ…………、て言うか、フリル? フリルいま、なんかしたよねっ? あれ何したの?」
「にゃぅん?」
そう、そしてフリルちゃんだ。
なんかさっき、凄いファンタジーな事しなかった? したよね?
お目々がピカってしたら、俺を食い殺そうとしてた不法侵入暴走ペス君を吹っ飛ばしたよね?
何あれ、魔眼ですか? ……えっ、魔眼っ!? やだ何それカッコイイ……。
「……まぁいいか。なんでも。…………フリル、助けてくれてありがとうな」
「にゃぅん♪︎」
はい可愛い。もう何でも良いよ。フリルが可愛いからヨシ!
俺は理解出来ない事は考えるだけ無駄だと、意識をリセットする。
「……さて、予想の二百倍くらいお外が殺伐としてましたが、どうしましょうね」
「にゃぅ。にゃぁー?」
死んだ犬の尻を眺めながら呟くと、フリルが俺のベルトに挟まったタオル巻き包丁を口に咥えて、俺の手に落とした。
その視線の先には、玄関にガッチリ挟まれて死んでるペス君が。
「…………え? いや、フリル? あれもう死んでるよ?」
「にゃう」
「いや、もう追撃とか要らないよ? 死んでるからさ……」
「にゃぅにゃぅ!」
わざわざ武器を持たせて犬を見るから、やんわりと追撃のお断りをすると、フリルは俺の膝をぺしぺし叩いて可愛い。
いや、だがしかし、追撃の拒否を許して貰えない。何故だ。今日のフリルはヤバいくらい賢くて、なんかお目々が光ったら敵が吹っ飛ぶ魔眼まで覚醒してるのに、あの状態のペス君が死んでないと理解出来ないとは思えない。
「……………………あ、えっ? も、もしかして、俺にあの犬を、この包丁で解体しろって言ってる?」
「…………にゃぅんっ♪︎」
まさかと思って名推理を披露すると、フリルは可愛い毛並みをフカフカさせながら胸を張った。まるで「その通り!」とでも言うように。
「ま、マジかよ……、なんちゅうサバイバル体験なんだ……」
なに、食べたいの? あの犬の肉が食べたいの?
そりゃ、死ぬしかなかったのを助けて貰いましたからね? フリルが解体しろって言うなら、解体しますともさ。やり方知らんけど。
あれでしょ、腹裂いてから内臓取り出して、皮を剥げば良いんでしょ? 頭を落とすか否かはお好みか?
けどさ、そもそもこれ、法的に大丈夫か? 返り討ちにして殺したのは正当防衛だろうけど、そのあと勝手に解体しちゃうのは、器物損壊罪じゃない? ペス君ってアパートの隣のお家の所有じゃん?
「……まぁ、いっか。外で動物が人殺してるっぽい感じなのに、法律とか今気にしても仕方ないよな。アレだよあれ、超法規的措置ってやつだ」
「にゃんっ」
「な、フリルもそう思うよな?」
流石にこんな騒ぎが永遠と続いて世界が終わるなんて思えないから、事態が沈静化した後にやっぱり法律が怖いけど、今は知らん。今の俺はフリルが法なのだ。
そう開き直った俺は、玄関を軽く開けて胴体ペシャンコになって死んだペス君を部屋の中に回収し、お風呂場に連れ込む。
こうして、俺、
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