第3話

あり得ない。あり得ない。


そう思っても現実は変わってくれない。

ただ目の前の光景に、出来事に驚く事しかできない。


あり得ない。あり得ない。

何だって僕が級長に立候補しているんだ。

_______________________

遡ること数日前、仲のいい男達と和気あいあいと雑談する昼下がり。

「結局紗理奈ちゃんが一番可愛いよなぁ!」「いやみゆちゃんだろ!」「おまえらまだそんなおこちゃまかよ、理名ちゃんに決まってるだろ」と好きな女の子談義で盛り上がっている。「誠一、お前はだれが好きなんだよ誰が可愛い?」上手く言葉を返していなかった僕に三人の目線が集まって僕に聞いてくる。「おいー早く答えろよー」「どうせ理名ちゃんに決まってるべ」「そんなわけないだろブスだろ」取っ組み合いの喧嘩にもみえるじゃれあいをしながら声を出して「痛い痛い痛いって!美沙ちゃん美沙ちゃん」と答える。「うお、たしかに美沙ちゃんも可愛いよな」「それ!目がくりっくりですげえ可愛い」「わかるわかる、でも俺は早紀ちゃんが一番好きだけどな」「お前さっきといってること違うだろ、みゆちゃんだっただろ」「本命は早紀ちゃんなんだよなあ」「なんで冗談ついたんだよお前」「だって誠一早紀ちゃんと同じ学校だったしもし好きだったら気まずくなってただろ」「いやそれは早紀ちゃん被りでも一緒だろ」と話題が続き、ひとしきり談義が済んできたタイミングで一人の友人が

「全員、好きな奴に遠足で告白しようぜ」

と言い出した。

「うおっそれめっちゃあり!超楽しそう」「お前は希望あるからいいだろ!俺はまだ入学してからほとんど喋ったことないんだぞ」「もう決定事項だから変えられませーん」と中学生のノリで会話している最中に鐘がなり作戦会議は翌日となった。

早紀は吹奏楽部の俺の彼女だ。同じ文化部に入ることにもしている。誰にも話していない事の弊害が生まれた、と思った。ただクラスで一番可愛いと思っていても客観的な可愛さでいうと他の女の子の方が客観的に可愛く、咄嗟に可愛い人を答えてしまったのは自己の保身に他ならなかった。そうして告白することに待ったをかけられなかった自分に驚いた。さらに美沙ちゃんに告白できるチャンスが与えられて喜んで胸が弾んだ自分にも驚いた。

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