対スライム戦(前編)
「でけぇな、おい……!」
「場所が場所だから、隠れて溶解液は出さないからいいけど……。 それを差し引いてもまずいよね」
アルマとケリンを先頭に出現場所に近い所まで移動した『スカーレット』のメンバー。
しかし、リキュアはその中にはいなかった。
「アルマさん、やっぱりリキュアは……?」
「無理強いはさせたくなかったしね。 もうすぐ陛下から代理のビショップが来てくれるよ」
「いきなりビショップだから死ねって言われたんだ。 ケリンくらいの図太さがなければへこんじまう。 彼女はこの件が片付けるまでは休んだほうがいいかもな」
エリューシアがリキュアの事が心配だったのか、アルマに尋ねていた。
アルマ自身も無理強いさせたくないという事で彼女を休ませる決断をし、アレンもスライムの件が片付くまで休ませようと同意していた。
「お、その代理のビショップが二人来たようだ」
ケリンが二人の女性の人影を捉えた。
彼女達が、今回のリキュアの代理のビショップのようだ。
「お待たせしました。レーツェル陛下より代理で私達が来ました」
「私達でどこまでやれるかは未知数でしょうが、頑張ってみます」
「よろしくお願いします、お二方」
アルマが、ギルドマスターらしく二人のビショップの女性に挨拶を交わしていた。
「こっちに来たぞ!」
「よーし、まずはケリン君とシルス君で錯乱させて、アイシアはヘイト役を頼むよ」
「分かった」
アイシアが、槍を持ってスライムを攻撃する。
ダメージを与えるのではなく、スライムのヘイトをアイシアに向けさせるためだ。
「せぇいっ!!」
「はぁっ!!」
そしてその間に、ケリンのスピードの剣技とシルスの影縫いで、スライムを止める。
二人のスピード技により攻撃がしにくくなっている。
「よし、こっちも仕掛けるよ!」
「おおっ!!」
そこにアルマとアレンも攻撃に加わる。
アルマの攻撃魔法とアレンの斧技によって、スライムにダメージを与えて、この後のビショップ用の魔法『フリーズ』の効果を発揮しやすくするためだ。
「今だよ!」
「はい! 悪しき者を凍てつかせよ! 【フリーズ】!!」
アルマの号令で、二人のビショップは同時に凍結魔法の【フリーズ】を放った。
直後スライムの足元が凍結し始めた。
しかし、スライムが大きすぎるためか全身を凍結できないでいた。
「ほとんど凍ってない!?」
「二人掛りでこれか!?」
「スライムが大きすぎるんだ! もう3、4回は【フリーズ】を掛けないと……!」
思っていた以上にスライムが大きすぎたのか、足元くらいしか凍結できなかったことに、アルマ達は焦りを感じた。
ケリンの見立てでは後3、4回はフリーズを掛ける必要があるらしい。
二人掛りでもあまり効果が無いほどに巨大化したスライムにアレンも驚愕するレベルだ。
「アイシア、危ない!!」
「くっ!!」
その隙を逃さないと、スライムはアイシアに溶解液を飛ばした。 アイシアは咄嗟に巨大な盾を突き出すことで難を逃れた……のだが……。
「ああっ、盾が!!」
「ミスリル製の盾がこうも簡単に溶けるなんて!!」
「思った以上に強烈すぎる!!」
アイシアが目の前で自分の盾があっさり溶かされた事にショックを受け、シルスもケリンも溶解液の予想以上の威力に冷や汗が止まらない。
「二人が再び【フリーズ】の準備に入るから、それまで回避重点でお願い!」
「分かった! やってみるよ」
「ちと骨が折れそうだが、仕方ないな」
スピード系のシルスとケリンが、二人の【フリーズ】の準備のために時間を稼ぐことに。
溶解液を受けると溶かされて死ぬので、一度も当たるわけにはいかない。
ケリンとシルスは、スピードでかく乱しつつスライムの意識を反らす行動に出る。
時折、攻撃を仕掛けてダメージを与えつつ。
そうしているうちに二度目の【フリーズ】の準備が終わったようだ。
「もう一度……、悪しき者を凍てつかせよ! 【フリーズ】!!」
二人のビショップが再度【フリーズ】を放つ。 次は足元より上に目掛けて凍結していくが、それでもすべてを凍らせるには程遠い。
「まずい、このままだと……!」
巨大化の影響で【フリーズ】の効果がなかなか見いだせない状況の中に焦りを感じたアルマ。
その傍らで別の声が聞こえた。
「悪しき者を凍てつかせよ! 【フリーズ】!!」
別の声が聞こえたと同時に放たれた【フリーズ】は、一気にスライムの全身を凍りつかせていく。
「この威力の高い【フリーズ】……、もしかして……!?」
アルマはその声がした方に振り向くと、そこには……。
「みんな……、間に合った……」
「リキュア!」
そう、『スカーレット』所属のビショップのリキュアがアルマの隣に来ていたのだ。
彼女の復帰により、反撃の準備が整った。
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