新たなる報告
「ただいまー」
「お帰り、アルマ。 様子はどうだった?」
「今の所、大丈夫かな? 剣士とビショップを外に出さなければ襲われることはないからね……」
エリクシアの冒険者に襲撃されてから3日経った。
買い出しから帰ってきたアルマに、ケリンが現在の様子を尋ねたところ、剣士とビショップが外出しなければ襲われる心配はないとの事だった。
「俺は、子供たちの世話をやれる時間ができたと思えばいいが、リキュアだな……」
「あの子、まだショックを受けてるの?」
「ああ……。 今はレナやエクレアが慰めているけど……、時間がかかりそうだ」
「そっか……。 ケリン君と違って理不尽な事をされた事がないからね……」
未だにリキュアがショックから立ち直れていないという事で、アルマも心配しているようだ。
何せ彼女は、ケリンと違って今まで理不尽な目に遭ったことがないのだから、今回の件はかなり精神的にダメージが大きいのだろう。
「レーツェルからの情報もまだ届いてないしな。 俺とて不安でしかないさ」
「そうだね。 今は陛下からの連絡を待つしかないもんね」
子供たちが遊んでいるのを見ながら、アルマとケリンは不安な面持ちで話をしている。
レーツェルからの連絡が来るまでは剣士とビショップは外出できないのだから。
そんな時、不意に水晶玉が光った。
「水晶玉が光った? もしやレーツェルからか?」
「ボクの水晶玉も光ってるよ。 繋いでみるね」
アルマが水晶玉に手を置いて、コンタクトを試みた。
『アルマ、ケリン! 例の件で大変な事が起こった!!』
「例の件で……!?」
「まさかスライムが……?」
ケリンもアルマも、レーツェルから発した例の件という事に嫌な予感がした。
スライムに関する事で、厄介な事態になったのではと考えていたからだ。
そして、その予感は的中する…。
『そのまさかだ。 巨大化したスライムが、エリクシアのギルド『サテライト』の全メンバーを溶かす形で全滅させ、その後はエリクシアを襲撃したそうだ』
「う、嘘ぉ!?」
レーツェルからの報告内容にアルマは、驚きを隠せない。
ケリンは、ツケが返ってきたと言わんばかりの表情をしていたが、切り替えてスライムの方に話題を出した。
あの『サテライト』があっさり全滅したのだから、攻撃方法が変わったのではとレーツェルに聞いてみた。
「まさかのあいつらか……。 しかし、あっさり全滅とか……攻撃方法が変わったのか?」
『ああ、遠距離からの溶解液を飛ばして、相手に反撃をさせる暇がないようにして溶かしたのだそうだ』
「遠距離から仕掛けて来たのか……。 厄介すぎるな」
「うん……。 しかも相手に気付かれないようにだから、なおさら厳しい戦いになるね。 しかも溶解液の威力も折り紙付きでしょ?」
「一度でも触れたら溶かされておしまいだからな。 どうしたもんか……」
スライムが遠距離で溶解液を飛ばすことができるようになった事で、厳しい戦いを強いられることになったと知った二人は、頭を抱えながら考え込む。
今の所、打開策が見当たらないのだ。
「ちなみに、エリクシア王国は?」
『首都機能を持つ王都は、ほぼ壊滅したそうだ。 国王たちの行方も不明だそうだ。 多分、溶かされて死んだものと思われる』
「なるほどね……。 となると国民もほぼ死んでるだろうな」
『おそらくはな。 他国の連盟支部を乗っ取った冒険者も至急エリクシアに戻ったが、『サテライト』と同じ末路を辿ったらしい』
ケリンとレーツェルの話によれば、王都はほぼ壊滅し、国王や宰相もスライムに溶かされて死んだ可能性が強いようだ。
また、戻ってきた冒険者も同じ末路を辿ったとの事。
これを無言のまま聞いていたアルマもより真剣な表情になる。
『とにかく、あの巨大スライムはこの後無差別に攻めてくる可能性が強い。 リーベル公国にも攻めてくるだろうから準備はしておいてくれ。 俺の方も生き残った剣士とビショップを抱えるギルドのメンバーに呼びかけてみる』
「俺は了解したが、リキュアが未だにショック状態で……」
『彼女に関しては無理強いはさせないさ。 国のビショップに代理を務めさせたりすることも考えるさ。 彼女は立ち直ってから活動した方がいいだろう』
「そうですね。 ボクもリキュアには無理をさせたくはないので……。 ひとまず準備はしておきます」
『ああ、頼むぞ』
レーツェルがそう言った後で水晶玉の光が消えた。 通信が終わったのだ。
「総力戦になりそうな予感だね……。 絶対に生きて勝利しようね、ケリン君」
「ああ!」
通信を終えた後で、アルマとケリンはスライム打倒に向けて決意を新たにした。
絶対に生きて勝利を掴むために。
リキュアの不安はあるが、後はなるようになるしかないだろう。
そして、3日後……。
「スライムがアルストの町付近に来たよ!」
アルマから、スライムが攻めて来たという報告が入り、ケリン達は武器を持って外に出た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。