町中での襲撃

「ケリン君、そっちにインプ数体が行ったよ!」


「よし来た!」


 翌朝、エルザ王女とレーツェルと別れてケリンとアルマは、二人である依頼を遂行していた。

 アルストの町の北にある農場でインプが出たというので駆逐して欲しいという内容だった。

 他にも『スカーレット』に舞い込んだ依頼があるので、二人組を組んで依頼をこなす事にしたのだ。

 それでケリンは、アルマに頼まれて二人組を組んだのだ。


 アルマの魔法から逃れた数体のインプをケリンは斬りかかる。

 スピードを乗せた剣さばきなので、インプは回避できずに切り刻まれる。


「これであと3体……!」


「いいよ、その調子で……きゃあっ!!」


「んなぁっ!? アルマ……!!」


 ケリンに激励をするアルマの背後から一体のインプが現れ、そのインプがアルマの足元から風が発生させた。

 下から急に発生した風に煽られ、アルマのスカートが捲れ上がったので、慌ててアルマがスカートを押さえた。

 捲れ上がった瞬間、ケリンの視点からはアルマの白い下着が見えたそうだ。


「この……、スケベインプがーーーっ!!」


 怒りを露にしたケリンが、インプを3体纏めて切り裂いた。

 インプが死んだ事で、風が収まり、アルマはへたり込んだ。


「大丈夫か、アルマ……」


 たまらずアルマに手を差し伸べるケリン。

 その手を握って、なんとか立ち上がりながらアルマはぼやいた。


「うぅ、インプにボクの下着を見られちゃったよ……」


「あー、ごめん。 もっと早く倒せば……」


「あ、ケリン君は悪くないよ。 よく頑張ってたし。 詠唱の隙をあんな形で狙われるなんて想像できなかったよ」


 アルマの釈明に、ケリンはそう割り切るしかない。

 とりあえず、インプの羽を緑のインベントリに入れる。


「これでインプの討伐は完了だね。 後は連盟に報告すれば今回の依頼は完了っと」


「よし、早く街へ戻ろう」


「うん」


 元気を取り脅したアルマと共に、アルストの町へと戻っていった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「さて、今回の報酬もケリン君にあげるね」


「いいのか?」


「ボクはお金がたんまりあるしね。 そろそろ装備も買い換えないといけないでしょ。 その剣とか刃がこぼれているし」


「ああ、結構昔から使い込んでたからなぁ」


 アルマの言う通り、ケリンの剣は刃こぼれを起こしていた。

 アルストの町には鍛冶屋がないので、必然的に買い替えることになる。


「せっかくだから、武器屋を案内するよ。 ついてきて」


 アルマに手を繋がれ、引っ張られる形でケリンはアルマに同行する。

 目指すは武器屋。

 ケリンの剣を買い替え、新調することを目的としてである。

 そんな時だった。


「……っ、ケリン君!」


「う、お……!?」


 咄嗟にアルマに抱きかかえられたおかげで、謎の攻撃から回避したケリン。

 先程ケリンが居た場所に、斧を持った大男二人が立っていた。


「ちっ、避けるのだけはいっちょ前じゃねぇか!」


「お、おまえらは……!?」


「誰だか知らないけど、町中で襲撃とは感心しないね」


「へっ、無能の剣士を連れているなんて堕ちたものだな。 あんた『黒魔術師』だろう?」


 二人の大男は、剣士を無能と罵り、それを助けたアルマを非難した。

 しかし、アルマも怒気を全開にして大男を睨む。


「あんたらの目が節穴なんじゃないか? うちの剣士を狙うなんて許せない案件だよ」


「へっ、全世界の剣士とビショップの奴らを殺せとエリクシア国王様が命じたのさ」


「「はぁっ!?」」


 他国の剣士やビショップを殺せとエリクシア王国の国王が命じたことを明かした瞬間、二人は呆れにもにた声をあげた。

 だが、その間に大男は斧を振り上げ…


「と言う訳で剣士は死ねやぁぁぁぁっ!!」


 ケリンに対して思いっきり斧を振り下ろしてきた。


「ケリン君!!」


 アルマが声を掛けるが、ケリンは冷静だった。

 斧を振り下ろした直後に突進し、抜刀してすれ違った。

 すると、大男の身体が上半身がずり落ちるように分断されたのだ。

 大男の一人は、声を上げることもなく分断されて息絶えた。

 それを見てもうひとりの大男が激昂し、襲い掛かろうとしていた。


「て、てめぇぇぇ、剣士のくせにぃぃぃ!!」


「【フレイム】!!」


「ぎゃあぁぁぁぁっ!!」


 それを、アルマが無詠唱の【フレイム】で阻止した。 【フレイム】を受けた男は燃え上がりながらのた打ち回る。

 魔力の高いアルマが放ったのでなかなか火が消えない。

 こうして燃えたまま、もう一人の大男も絶命した。


「ケリンさん、アルマ!!」


「リキュア、アレン……!」


 その直後にリキュアとアレンがこっちに来たようだ。


「お前ら……、特にケリンは無事だったのか!?」


「うん、一人はケリン君が、もう一人はボクが倒したよ」


「もしかして、そっちも?」


「ああ、リキュアがビショップだったからか、襲撃された。 俺が斬り倒したけどな」


 リキュア、アレン組も襲撃されたようだ。

 その理由は彼女がビショップだから。

 心なしかリキュアは恐怖に震えているように見えた。


「みんな、無事なのか!?」


「レーツェル!」


「陛下!!」


 レーツェルも息が上がるくらいに必死で走って駆けつけた。

 そして、周囲を見回し、安堵する。


「レーツェル、これは一体何があったんだ?」


 ケリンがレーツェルに問いかける。

 すると、怒りを交えた表情をしながらレーツェルは答えた。


「エリクシアがリーベルを含めた他国をターゲットにした【剣士狩り】と【ビショップ狩り】を敢行したのさ」

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