スライムの件の話し合い

 エルザ王女とひとしきり会話をして満足させたケリンは、フィーネとも引き合わせた。

 二人はすぐに打ち解け、仲良くなったようだ。

 それを見たレーツェルも安心した表情を浮かべていた。


「子供たちって打ち解けるのも早いなぁ」


「環境と人によるのかもな。 なかなか打ち解けてくれない子もいたからな……」


「ああ、なるほど……苦労していたんだな」


「ケリン君らしいけどね。 それで、スライムの件はどうなってます?」


 現在の広間は、ケリンとレーツェル、そしてギルドマスターのアルマの三人がいる。

 彼らは懸念しているスライムの件で色々話し合う最中であった。


「スライムはかなり大きくなった状態で復活。 現在は討伐者を探してエリクシア地方を彷徨っているはず」


「ふと思ったんだが、スライム再生中に攻撃はできないのか?」


「無理だ。 再生中はバリアが発生して攻撃を阻害する。 攻撃しようものならバリアで焼かれて死ぬ」


「そうですか……。 じゃあ再生しきってからもう一度倒さないとだめってことですね」


「そういう事だ。 大きくなってるから倒すのに苦労はするがな……」


 ケリンが再生中に攻撃できないのかと提案したが、レーツェルはバリアによって阻害されるので無理だという。

 つまり、アルマが言うように再生しきってから再度攻撃しないといけないという事になる。

 大きさ次第で倒すのに苦労しそうだ、


「それで、討伐者を探してというのは……もしかして『サテライト』のメンバーを探してですか?」


「そうだろうな。 スライムを力技という間違った倒し方をしたのだから、報復の矛先は確実に彼らに向かうだろう」


「『サテライト』の連中がどうなろうが知ったこっちゃないが、問題はその後だろう?」


「ああ。 討伐者を倒した後は無差別に攻撃を仕掛け始める。 それがリーベル公国にも被害が及ぶかもしれない」


「それだけは阻止したいですね。 ボクとしては……」


 ケリンからしたら『サテライト』のメンバーがどうなっても構わないが、その後の行動に懸念を持っていた。

 それに肯定したのがレーツェル。

 討伐者を倒した後は、無差別行動を取るため、被害がリーベル公国にも及ぶ可能性が孕んでいる。

 アルマ自身も祖国のリーベル公国に被害が及ぶことだけは阻止したいと思っているようだ。


「とりあえず、スライムの動向については諜報部隊が調べてもらっている。 それを出来るだけ早く伝えるようにするよ」


「連盟経由でか? それとも直接レーツェルが?」


「一応、連盟経由で伝えて貰うつもりだが、スライムの件以外の各種状況次第で俺がこれを使って直接伝えておくさ。 もう二つを二人に渡す」


「これは……、通信用の水晶?」


「ああ。 念を入れて俺から直接伝えるようにするために作っておいた水晶玉さ。 ケリンとアルマで使ってくれ」


「分かりました。 使わせていただきます」


「済まないな、レーツェル」


 レーツェルから通信用の小さな水晶玉を渡されたケリンとアルマ。

 二人はそれぞれレーツェルに礼を述べた。


「気にしないでくれ。 親友のよしみだ。 折角、お前が新たな居場所を得たんだからそれを潰されたくはないのさ」


「まぁ、アルマのおかげで居場所を得たからな」


「ボクもケリン君の居場所を守るために頑張りますよ」


「ああ、ケリンを頼むぞ、アルマ」


「はいっ!!」


 こうして、今回の話し合いはひとまず終わった。

 ひとまず新たな連絡手段を使ってでもスライムの件をはじめ、各種状況で何か起こったら報告をすることでまとまったようだ。

 レーツェルはエルザと共に、今日はこの『スカーレット』のギルドハウスで寝泊まりする事となっていた。


「ケリンお兄様、私とフィーネちゃんと一緒に寝てくれませんか?」


「にーにと……、いっしょにねる……」


 自分の部屋に入ろうとするケリンの前にエルザとフィーネが枕をもって待っていた。

 二人とも一緒に寝たいのだそうだ。


「しょうがないな。 一緒に寝よう。 ほら、おいで」


「ありがとうございます♪」


「にーに、ありがと♪」


 幼女二人にお願いされれば断れないケリンは、二人を部屋へ案内し一緒に寝てあげることにした。

 ケリンを真ん中に、左右にエルザやフィーネが寝るという形だ。

 そのまま二人はケリンの腕をギュっと抱き着きながらすぐに眠った。


「おやすみ、二人とも」


 すぐに眠った二人の可愛い寝顔を見ながら、ケリンも眠りについた。

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